縄文からのメッセージ
これまでのあらすじ
2023年3月某日
栃木県足利市の、ある竹藪で一人の男が逮捕された。
男はタケノコを取ろうとして足を滑らせ気絶したのだが、
その時、竹が光って見えたと警察に言ったが
取り合えってもらえず無罪放免。
1週間後、足利小学校に小6の女の子が転校してきた。
名前は、調宮神楽耶
謎の転校生の来た翌日、熊が人を襲った。
しかしけが人は消えていた。
そのけが人があの男なのか?
いまだ不明である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒繁香の班では、調宮神楽耶、黒岩草太、潮田英樹、渡部千晶が足利市の今と昔と今後について話し合っていた。
「みなさん!まとまりましたか?」先生が大声をはりあげて聞いた。
テーマをまとめて発表する時間になり、神楽耶の班も神楽耶の意見がほぼ100%ではあったが、書記の渡辺千晶が奇麗にまとめた。
まずは他の班が発表することになった。
神楽耶の班は3番目になった。
「では、石井さんの班。発表お願いします」
「はい。私たちは、足利市にある足利学校と、現在の大学について考えました。
私の姉は足利大学の看護科にいるのですが、昔の足利学校は儒教を教えていました。
儒教の事はよくわからないのですが、明治に廃校になるまで、
多くの学生がいて、坂東(関東の事)一の学校だと、あのフランシスコザビエルにも称えられました。
でも今の足利市はどちらかというと田舎です。昔のように若者も少ないです。
若者が少なく老人が多いと、病院も大変だと思います。
また昔のように人が集まり、活気のある足利市になればいいと思います」
教室で拍手が起こる。
「すばらしいレポートありがとう。そうね。今は東京に集中しすぎて北関東に人がいなくなったのは事実ね。どうしたら若者が集まる街に出来るのか?お姉さんは偉いわね。病院の問題は今後の課題ね。では佐川さん、お願いします!」
次の班の発表が行われているとき、香が神楽耶に小さな声で聞いてきた。
「ねぇ、大丈夫かな?私たちのレポート。私、上手くしゃれるかどうか自信がなくなってきた」
「大丈夫よ。ゆっくり息を吸って、一語一語、大切にするつもりで話して。千晶ちゃんのレポート、とても上手くできてるから、かおりなら大丈夫!・
神楽耶に励まされ、何度も何度もレポートを読み返す香。
気が付くと2番目の班の発表が終わっていた。
「昔は農業中心だったのが、今は工場になって働く場所は増えたけど、足尾銅山の公害は大きな被害をだしましたね。ありがとうございます。では~、次は渡辺さんの班ね。大丈夫かな、香さん?」
「はい、大丈夫です!」
「ではお願いします」
香が、やや緊張した面持ちで立ち上がる。
「私たちの班は、足利市が縄文時代から人が住んでいたという事。そして今は交通が便利になり電車や車が走っていますが、一方で私たちは自然、たとえば鳥や熊、猪、ウサギ、シカ、カエル、メダカなど、多くの動物たちがいることを忘れてしまったような気がします。縄文人は自然と共生しながら生きていて、電気もガスもない時代から、多くの土器を作って暮らしていました。しかし武士の時代になると、足利尊氏をはじめ、戦国時代は上杉氏に支配されるなど、時の権力に左右される場所でもありました。明治になると足尾銅山から来る公害も起こりました。そのため、田畑は汚染され農業は壊滅的な被害を受けましたが、今は、渡良瀬川は整備され、歌にも歌われるような風光明媚な街になりました。また現在はあしかがフラワーパークのように、世界中が注目するような庭園もあり、もっともっと多くの人に知ってもらいたいと思います。」
教室が大きな拍手で包まれた。
「よく調べましたね。この短時間に。誰か、歴史に詳しい人がいそうね」
先生が尋ねると、渡辺千晶が手を挙げて答えた。
「あ、あの、調宮神楽耶さんです!彼女、すごい詳しんです!」
「そう、調宮さん、ありがとうございます。足利市にきて間もないのに凄いわね」
「あ、私、足利市に引っ越してくるときに調べたんです。」
「それでも凄いわ。みなさんも、もっともっと地元の歴史をしりましょうね。では次の班!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午前中の授業が終わった。
給食の時間は、そのまま班を作ったと時の机のまま、食べることになった。
「かぐやさん、あしかがフラワーパークには行ったことあるの?」
千晶が神楽耶に聞くと、草太とがすかさず、
「おれは3回いったぜ~!いぇぃ!」
「あんたには聞いてないから!だまっててよ!かぐやに聞いてるの、千晶は!」
「ふふ、大丈夫よ、かおり。私、まだ足利市に来て1週間ほどだから、どこにも行ったことがないの。実は渡良瀬川にも行ってないのよ。」
「へぇ!そうなんだ!こんど河川敷でサッカーやってるから見に来てよ!」
潮田英樹が言った。
「そうね。こんど、見に行くわ」
「やったぁ!」
「俺は、俺は・・。」
草太がもじもじしていると、
「あんたは何もしてないでしょう?家でゲームばっかり!」
「うるせいな!お前だって何もしてないだろ!」
「してるわよ!うちは農家だもん。休みの日はハウスで苺作ってるんだから!」
「え?苺?私、苺大好きなんです」
神楽耶が顔をほころばせる。
「じゃぁ、こんどうちに来なよ!苺、まだ沢山あるから!」
「うん」
「いいな、かぐやばっかり」
男子二人が恨めしそうに言う。
「あ、君たちは有料ね。千晶も今度一緒にきなよ!」
「いいの?いく~~~!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
授業が終わり、放課後になった。
校門の前には父兄が集まっていた。
まだ熊騒動が終わっていない。
神楽耶の母がやってくる。
「あの男でした。やはり、けがをしたのは」
「え?あの例の男?」
神楽耶は男の怪我よりも、まだこの周辺にいることを危惧した。
「かぐや~!じゃぁ、こんどの土曜!来てね!千晶も!」
手を大きく振りながら香は母と手を握りながら帰っていった。
「なんですか?土曜って」
「いちご狩り。みんなで行くの。いいでしょ?」
「わかりました。例の男もいますので、対策を考えておきます」
いつしか校門の前には誰もいなくなっていた。
桜の花びらが、渦を巻いて校庭を舞っていた。
続く




