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殺人事件?が発生

調宮神楽耶(つきのみやかぐや)が登校してきた。


まだ周囲の子供たちも、どう距離を置けばいいのか考えあぐねている。


隣の席の黒繁香(くろしげかおり)は思い切って神楽耶に尋ねた。


「ねぇ、かぐやちゃん、かぐやちゃんて何かペット飼ってる?

私の家はね、猫3匹と犬一匹飼ってるんだ!」


そう無邪気に聞くと、神楽耶も答えないわけにはいかないと思い、


「家は犬が一頭います。ボーダーコリーです」


「わ!おしゃれ~。名前は?なんていうのワンちゃん?」


神楽耶は一瞬考え込んだ。

何しろ、昨日の夜に飼い始めたのだ。

名前はまだ考えていなかった。


咄嗟に思い噛んだのは、


「大ちゃん。大福の大」


なんでそんな名前にしたのかわからなかった。


「大ちゃん?大福もちの大ちゃん?可愛い~!」


その二人会話を聞いていた周りの女の子も次々と自分が飼っているペットや名前を言い出した。


その輪の中に、相変わらず男子は入っていけなかった。


「なんだよ、女子ばかり」


そこに担任が教室に入ってきた。


えっと、授業を始める前に緊急連絡があります。


ざわつく教室。


「静かにしてください!じつはこの近所の山で事件が起きました」


「え~!」


「静かに!」


一層大きな声で教室のざわめきを抑える担任。


「いいですか!よく聞いて、先生の言うとおりに行動してください!」


そわそわする生徒たち。あちこちで何があったんだ?という声が聞こえてくる。


「詳細は今は言えません!緊急事態です!一刻を争います!これからみなさんのご父兄が学校に来ます。みなさんは校庭に出て待機!ランドセルを背負って帰宅準備!さあ!初めてくだださい!5分以内!」


私語を交わしてる暇はなかった。


生徒たちは一斉に帰り支度を始めた。


校庭に子供たちが続々と集まってくる。


その生徒たちを囲うように先生が立った。

先生の手には刺股(さすまた)やバットなどが握られていた。


あまりの物々しさに、子供たちも怯えていた。


「かぐやちゃん、何があったんだろうね?もしかしたら殺人事件とか?」


「わからないわ。ただ東京にいた時も同じことがあったの。落ち着いて!これだけ先生が守ってくれるんだから、大丈夫よ。」


「でも家に帰ってからも、なんか怖い」


「犬を飼っているんでしょう?守ってくれるわよ。香ちゃんを!」


「うん!」


神楽耶は冷静だった。


しばらくすると、父兄たちが子供たちを迎えに来た。


それぞれ子供の名前を呼び、抱き寄せる。


中には誰も来なくて泣き出す子もいた。


校長がマイクを使って呼びかける。


「みなさん!落ち着いて!遅れるお父さんやお母さんがいるかもしれませんが、先生たちがここにいます!安心して待機してください!」


香の母親が校庭にやってきた。


「かおり~!かおり~!あ、いた!」


思い切り子供を抱きしめる香の母親。


「お母さん!何があったの?なんか怖いよ私!」


「大丈夫よ。まだ私もよくわからないけど、熊が人を襲ったようなの。でも車で迎えに来たからもう大丈夫。いま、猟友会の人が熊を探してるから」


「え?熊さんを殺しちゃうの?」


「仕方ないわね。だって一人死んでるから。あ!」


しまったという顔で口を押える母親。


「人が死んだ!」


だれかが叫んだ。


もう遅かった。子供たちがパニックになった。


先生たちは、それぞれ受け持ちの子供たちを慰めた。


やがて子供たちも落ち着いた。


そこに遅れて神楽耶の母親もやってきた。


「何があったの?」

その母親に聞く神楽耶。


「大丈夫です。熊が人を殺したとの情報ですが、大丈夫です。誰も死んでいません。」


「何?だって今、一人死んだって!」


「いえ、フェイクです。フェイクの情報が街に流されました」


周囲に聞かれないように小声で話す母親。


「フェイク?誰が?わかったわ。とりあえず、家に戻りましょう。詳細は後で」


子供たちが次々と父兄に手を引かれ校庭から出てゆく。


「かぐやちゃん、じゃぁ、また明日!気をつけてね!」


手を振る香に、神楽耶も手を振った。



やがて校庭に残る人は先生だけになった。


校庭に咲く桜が、花びらを落とし始めていた。


続く


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