地球の未来
神楽耶は家に戻った。
一応、母と言える女性と一緒に。
「やはり、話題になりましたか?」
母が神楽耶に聞いた。
「大丈夫だった。私がボールを止めたことは誰も話題にしなかった。あの男が捕まったことで、みんなそっちの話の方で盛り上がっていたわ。」
神楽耶はペットの大福に餌をあげた。
「よしよし、お前も私を守ってくれたのね」
犬が神楽耶の頬を舐めあげる。
「母」
神楽耶が振り返る。
「なんでしょう、神楽耶さま」
「明日、計画実行の日です。あの男も熊も、ちょうどいい時にでてくれました。用意はできました。」
「神楽耶さま、了解しました。明朝10時に決行します。学校も警察も迅速に動くでしょう。今の緊張感があれば大丈夫です」
「大ちゃん、お前も明日、がんばるんだよ!」
再び犬は神楽耶の頬を舐める。神楽耶も犬に抱き着いた。
「大丈夫。誰も死なせない・・。」
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朝、神楽耶と母はいつものように小学生の登校する集合場所にやってきた。
「おはよう!かぐや!」
香がいつものように声をかけてくれる。
「おはよう!かおり、ちあき!」
千晶もやってきた。
何もかもいつもの通り。
この後2時間後に大きな出来事が起きることを誰も知らない。
しかし、神楽耶と母は知っていた。
その後に起こる地球的大惨事の予行演習なのだ。
しかし、それを事前に教えることもできないし言っても誰も信じてくれないだろう。
授業が始まった。
「え~、さっきホームルームで言ったように、今日は批難訓練があります。授業が始まったとしても、いつアナウンスが入るかわかりません。いざという時の為に、防災頭巾を机の上に出しておいてください」
担任がそう言うと、みんな一斉に防災頭巾を机の上においた。
「では、授業を始めます。教科書の28ページを開いてください!」
神楽耶が国語の教科書の28ページを開いた。
そこには「竹取物語」の話が載っていた。
「誰かに読んでもらおうかしら。黒岩草太君、最初の1ページ読んでください。はい、立って」
まさか俺?という感じで周りをきょときょとしながら立ち上がる草太。
「え~~~~っと、昔、昔、ある所に竹を切って物を作り、それを売って生活しているおじいさんとおばあさんがいました。二人には子供がいなかったのですが、幸せに暮らしていました。
ある日、おじいさんが竹の森に入ってゆくと、奥の竹が光っていることに気が付きました。近づいてみると、小さな女の子が竹の節の中にしるではありませんか。おじいさんは、これは私たち夫婦の為に神様が授けてくださった子供に違いない。そう言って、家へ連れて帰りました」
その時、じりじりじりじり~という音が廊下で鳴り響く。
クラスが騒然とした。
「みなさん!落ち着いて!防災頭巾をかぶって廊下に出なさい!」
先生が大きな声で叫ぶ。
子供たちも慌てずに防災頭巾をかぶって廊下に出た。
「訓練だから、今一つ緊張感ないよね」
香りが言った。
しかし、これは訓練ではなかった。
街の防災用のサイレンが鳴る。
まるで空襲警報のようで、泣き出す子供たちも。
「落ち着きなさい!まずは校庭に出ましょう!」
先生に促され全員、校庭に出た。
サイレンはずっと鳴っている。
「なんでしょう?校長?これはなんのサイレンでしょうか?火事ですかね?」
先生たちが校長の元に集まり話し合いをしている。
「校長!警察から連絡が来ました!火山が噴火する可能性があるので、体育館に避難するよう指示がきました。それと町の人も批難してくるので、こちらに消防と警察をよこすそうです!」
「それは本当か?火山が噴火?どこの?それはいつ噴火するんだ・・・。」
とにかく子供たちは体育館に集まった。
想定外の出来事に先生も戸惑う。
やがて消防車がサイレンを鳴らしながら学校に到着した。
「大丈夫ですか?子供たちは全員いますか?」
消防士が校長に聞いた。
「はい、大丈夫です。全員避難しています」
「よかった。これから火山が噴火するかもしれません。念のため、水をバケツに入れて、できるだけ沢山体育館の中にいれてください。火砕流が発生したら、また山火事が起きるかもしれないので」
「わかりました。」
校長は返事はしたが納得はしてなかった。
なぜなら足利市には火山はないからだ。
「あるとすれば日光の火山か赤城山?榛名山か。だが、ここから火砕流が飛んでくることはあるのか?」
校長は何か釈然としないながらも、町中でなっているサイレンに緊張せざるを得なかった。
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神楽耶は一連の騒ぎが、単なる火山活動ではないことを知っていた。
「ついに動いた。」
「え?何が?かぐや、何が動いたの?」
「わからないけど、山が噴火するって、マグマが動いたってことでしょう?」
「確かに」
「大丈夫かな?足利市まで溶岩こないよね?石とか飛んでこないよね?」
千晶が心配そうに言った。
「大丈夫よ。いざとなれば大人たちが私たちを守ってくれるから!」
力強く言い放つ神楽耶に香も千晶も安堵するのであった。
『ここからが始り。みんなを守る』
小さな声で神楽耶はつぶやいた。
続く




