魔眼を持つ女アルゼ
2人だけで荷馬車に乗り込んだ。警戒するに越したことはないと、目の前の彼女は魔力のロープで手を縛られている。
ここまでする必要はないと思うけど……
止まっていても仕方がないと、彼女の荷馬車はオリガンが運び、こちらの荷馬車には、御者としてソージュとペリルが乗る。
今、荷馬車の中はアルゼと二人だけだ。
彼女と内緒話がしたいとソージュとペリルに伝えたら、ペリルが防音の魔法陣を荷馬車に書こうとした。
アルゼが専用の魔道具を持っているから、使ってむいいか?とペリルに確認すると、魔道具に細工が無いかを確認して、使う事を許可されていた。
——身内なのに、かなり警戒されているわね
魔道具は四角い箱の上に、オンオフスイッチが付いているだけの地味な作りだった。
もっと魔道具って、それっぽい作りかと思ったからがっかりしていたら
「見た目が地味でがっかりしたでしょう?」
と、アルゼが言って来たので、私の心を読んだのか?と思ってじっと見たら
「違う違う、私もそう思ったから、同じかなって思って聞いただけだよ」
——何だ、違うのか。
不思議な力なのかと思ったのに、残念だ。
「何でさっき、ペリルに逆らったの?」
私は世間話をしたいわけじゃない。スパッと聞く。
「何の躊躇も無く聞くのね?さすが勇者だわ。逆らった理由は、あなたが勇者で有る事を、周りに隠しているのと一緒だと思う」
え、何で隠しているのもバレてるの?
「貴方、感情が、顔に出過ぎよね?その見た目からして転移してきた勇者よね?こちらに来て、まだ日が浅いのでしょ?」
笑顔でスラスラと、私の秘密をあげ連ねて行くのでポカンとしてしまった。
「え、貴方、何で……どこから?……」
本当に、何者なんでしょうか?
「私は勇者召喚で魂だけが転生した元日本人。前世の記憶はあるけど、自分が誰だったかとか、人間関係はすっぽり無いの」
なんと、転生者でしたか。同じ日本人なのね?
「元々こちらで、前世の記憶有りで生活していて……勇者召喚の時だと思うけど、いきなり天啓で、
[お前は勇者パーティーの魔法使いだ!]
なんて言われて。戦いたく無いしそんなの知るか!って思って……嫌だったから隠して生活していたの」
記憶が抜けてるのはちょっとだけ悲しいよね。
召喚に対しては……私と同じ考えだわ
「私が、日本人だから勇者だとわかったのね?私も最初知るかって思って隠していたわ」
実際、あの時バレなきゃ言わなかったよね
「あなたが勇者だと気付いたのは、私の能力なのよ。能力『真実の瞳』要は魔眼ね?咄嗟に口から勇者だと出ちゃったから失敗したわ」
そう言って、彼女はフニャっと笑った。
「貴方、ペリルさんの義理の妹なんでしょ?話してなかったの?」
何だか、凄く距離があるし
「ペリル様は、まあ、家庭の事情が複雑だし、今はヴァルドにもいないし、実際あまり関わりがないのよ」
そうなのか、まあ、義兄妹なら難しいのかな?
「ある意味他人よ。私に陣が刻まれていたのは、養女に迎えられても貴族に馴染めなかったから、外で生活していたの」
貴族か……ちゃんと階級制度があったんだ。
「情報収集がてら、自由にはさせて頂いたわ。たまに情報を渡す時にアウスヴェーク家に不都合な事を隠さない様にと刻まれたの。隠したりしないのにね?」
アルゼは、寂しそうに笑う
「ごめん、私の話ばかり。久しぶりに普通に話せる気がしたから。いっぱい喋っちゃった。私、貴方に伝えたい事があったんだ!」
アルゼは楽しそうに話してくれる。
彼女には自由に生きてほしいな。ペリルさんが仲間になってくれないかな?
「伝えたい事って?」
何だろう?
「あのね?勇者召喚はフェルゼン王国がやったのよ。今、目の色変えて勇者を探してるから気をつけて」
そうなんだ、話が聞けて良かった。
「勇者のおおよその容姿と性別とスキルが知らされてるけど、多分、パッと見では気づかないはずよ?私は日本人だったし、魔眼が有るから気付いただけ」
アルゼが、私に忠告をしてくれた。
「もしかして、アルゼはその為に認識阻害の眼鏡してるの?」
アルゼは大丈夫と言うけど、私も必要かしら?
「私は、魔眼の持ち主だから……」
スルッと眼鏡を外した彼女の瞳は
深いアメジストとサファイアのグラデーションにイエローダイヤが散りばめられた様な、キラキラと特徴的な瞳だった。
「綺麗ね?隠すのが勿体無いわ?」
まるで宝石みたい!素敵だわ
「元々はアメジストブルーだったのに、天啓が来た時にこの見た目になったのよね。魔眼は元々あったんだけど、能力も強化されたみたい」
確かに勿体無いけど、この瞳じゃ目立つわね
勇者パーティーの魔法使いかぁ……
「待って?パーティーメンバー他にも居るのよね?」
他に……誰がいるのかな?
「……今のところ私の知っているのは聖女。彼女はフェルゼンにいるわよ?一応癒し担当ね、フェルゼンに行けば会えるわよ?」
紹介状を書こうか?とアルゼが言ってきたので、せっかくだしお願いする。
「私は魔王なんてどうでもいいから、いなくなるまで隠れるけどあなたは勇者としてどうするの?」
アルゼが今後の事を尋ねてきた。勇者じゃ無くても魔王は倒せる事を知っている様だ。
「私もぶっちゃけどうでも良かったんだけど、私かなり強いんだよね。多分、遠距離からでも、魔王を倒せそうなんだよね」
余程の事がない限り、問題無く倒せるだろう。
「でも勝手に召喚した国のためにはやりたく無くて、荒野で途方に暮れていた、私を助けてくれた。兵士の彼らとなら頑張れるかなと思って。今から勇者資料館に歴代の勇者を知りに行くのよ」
彼達がいなかったら、私も絶対逃げたよな。
アルゼ、転生者でした。彼女にはまだ秘密が有ります。
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