栗とイケメンのアーン
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
入れてもらったお茶を飲みながら、ソージュさんとお話をする
「クリは初めて見るけど、どうやって食べるんだ?」
おや?こちらでは栗はあまり食べないのかな
「いろいろな食べ方がありますよ。ソージュさんは食べたことないのですか?」
こちらの世界の人は知らないのかな?知らないのはソージュさんだけ?
「いや、ナッツは好きなんだが、見た事が無いんだ。どんな味なんだい?」
「生では食べれなくて、焼いたり茹でたり?」
こちらの調理法が分からないから、下手なこと言えないな。
「料理なのか?芋みたいだな」
「あ、簡単でよければ、火とお鍋が借りれたら出来るので、食べてみませんか?」
茹でと焼きだとどっちがいいかな?
ナッツが好きなら焼きの方が好きかも?
「ここでできるのか?そこにある物なら好きに使っていいが、いいのか?売り物だろう」
そこを気にするのか、じゃあ商売するか?
「火と道具を使わせて頂けるなら、その代金だと思ってください。ちょっと多めに焼くので、もし気に入ったら、栗を少し買い取ってください!焼く前なら1週間は日持ちはするので」
折角沢山拾ったのに、使わなきゃ勿体ない。
「分かった、旨かったら買おう」
コンロの横に小さなナイフがあった。丁度良い
「このナイフ、借りてもいいですか?」
ソージュさんは、栗の籠を持ってきてくれた。
「いいぞー!手を切るなよ」
だから、小さな子供ではないのに……
栗に切れ目を入れて鍋に入れる。焼こうとコンロと鍋を借りたけど
——コンロの使い方が分からない。
固まっていると
「どうした?使い方が分からないか。田舎の方は火起こしだよな」
ん?勝手に誤解してくれた。よかった、無知な振りで色々聞いてしまえ!
「これ、どういう仕組みなんですか?」
目の前のコンロもどきを見る。表面はIHのコンロみたいだ。だいぶ分厚いが。
「ここにスイッチがあるだろう?これをこうして横にずらすと魔力に繋がって火がつくんだ」
まんま、コンロや……火加減の調整もある。
表面に、何が模様が彫り込まれているけど、堅そうだし、ゆすっても大丈夫かな?一応聞くか
「これ、上置いて鍋をゆすっても大丈夫ですか?」
コンロに鍋を当てず振って見せる
「かなり固い素材だから大丈夫だぞ?鍋で叩いても傷一つつかないはずだ」
やらないよ?でもちょっと安心したぞ?
「では作りますね。ちょっとだけお待ちください」
カサカサ鍋を振る音がする。少し時間がかかるからとソージュさんには仕事に戻ってもらった。
とりあえず栗を焼きながら見晴台から遠くを見る。
いい感じで遠くまで見える。10kmほど先に、同じような甲冑を着た集団が、最初に吹き飛ばした山猪の後処理をしているようだ。
こちらは、あまりじっくり見ない方がいい。
今だに一面紫だった。
どこまで見えるのだろう?魔王城とかあるのかな?
と考えながら見渡していたら、目が勝手にズームアップした。
「——あったよ。魔王城」
見えたけど凄く遠い。流石に槍は届かないか。
あーやだなーあれ倒さないと帰れないよね?
戦うとか無理!か弱き乙女に何をさせるつもりよ?
むかむかしながら鍋をゆする。周りには、焼き栗の香ばしい香りが漂ってきている。
「なんかいい香りするけど?何してるの?」
背後から気配無く、覆いかぶさるように、ペリルさんがが現れた。この人距離感近いな……
「持っていた栗を焼いています。美味しかったらソージュさんが買ってくれるらしいです」
「こんな所で数を減らしても大丈夫なの?」
ペリルさんは距離感はバグっているけど、いい人そうではある。
ただ、何気に肩に手をまわしている甲冑が重い。
「だーかーらー、お前達は女の子に対して見境なく距離を縮めるな!」
急に、肩の重みがふっと軽くなった。保護者枠のソージュさんが追っ払ってくれたようだ。
「ごめんな、えっと、そういえば、君の名前は聞いてなかったな?」
確かにね、聞くだけ聞いて言ってなかった。
「名乗りもせず申し訳ございませんでした。茶子といいます。」
フルネームはこちらの言葉では、ありえないだろうから辞めておこう。
「チャコちゃんだね!よろしくね~」
ひらひら手を振っているのはオリガンさん。
「よろしくおねがいします」
私は会話しながら栗をゆする。栗の表面のナイフの切れ込みがぱっくり割れてきた。あと一息だ
いい感じに仕上がったので、ソージュさんを呼ぶ
「ソージュさん焼き栗できましたよ」
声をかけると、彼は作業の手を止めてこちらに来てくれた。
「これか?さっきから随分いい香りだったんだ」
良かった。第一段階突破だわ。
「ちょっと食べ方が難しいので、見ていてください」
焼き栗の切れ目に対して横から力を加える。間違って捻り潰してはいけない
パキっと音がしてまだちょっと熱い栗の実を外す。いつもの栗より薄皮が剝がれやすい。
地味にうれしい。
「はい、どうぞお召し上がりください」
ポロリと取れた栗の実を、ソージュさんに渡そうと思ったが、頭装備を付けたままでは食べれないのか、向こうを向いて装備を外している。
私の中では既に甲冑=ソージュさんが出来上がっているので、どんな顔が来ても違和感でしかない。
と思っておりました……
現れたそのご尊顔は、ブルーブラックの髪にシルバーブルーですっきりした目元の……神によって完璧に顔のパーツを配置をされた。超絶イケメンが現れた
砂埃と汗で汚れているのに、肌が綺麗とか何で?
甲冑で崩れた前髪を掻き上げるその姿に、余りにも美しくて美術品かと思った。
——びっくりした。
美しいってすごい。もう甲冑ソージュさんに見えない。甲冑着てるのに目のやり場に困るとか何?
目の前の椅子に座るその人に、剥いた栗を渡そうかと思ったが、手甲をしているので小さな栗は掴みにくそうだ。
混乱していた私は、咄嗟に子供にするように
「よかったらどうぞ」
と口元へもっていってしまった。
——やっちゃった
4歳の親戚の子によく剥いていたんだよ。ミカンも、ブドウも。自分が食べる以外は、剥く→食べさせるのが常だから。だからつい、ね?
ソージュさんは「え?」って顔をしていたけど、混乱しながらそのまま食べたよ。
イケメンは食べる瞬間までイケメンだった。
ソージュさんがもぐもぐしてる。
「美味しいですか?」
と聞くとコクコク頭を振っている。
美味しいらしい。お口の中にある時は、お話しはしない、お上品なお育ちなのかもしれない。
ちょっといたずら心が沸く。
モグモグソージュさんを見ながら、2個目の栗を剥く。
栗が無くなりかけた頃に、すっと口元に栗を運ぶ。さてどうする?
——食べたよ。
食べるんだよ「え?」って顔して。
うちの甥っ子と同じ反応だよ!イケメンがかわいいとか!剥いた栗を与えられるイケメンて!
ちょっと我慢できなくて、ニヨニヨしていたら、素早くもぐもぐして水分で流し込んじゃった。
ちょっと栗を剥くスピードが遅かった。残念
「チャコ?」
あーもー!!イケメンが問い詰める感じで呼び捨てにして見つめてくるとか、ずるい。
なんだろう?なんか内側から湧き出る物があるわ
イケメン過ぎるのは、美の暴力よ。見ているこっちの目がつぶれるわ。
「すみませんでした」
……私、素直に謝りました。
「まあいい、これ素朴で優しい甘さで、旨いな」
イケメンはどうやら栗が気に入ったらしい。
「ちょっと兵士の皆さんには食べにくいですよね」
3個目の栗が剥けた。今回はさすがにと胸元あたりで渡そうとしたら、
フッと微笑んで、手首を掴まれると、私の手ごとそのままお召し上がりに……!!
しかも、栗を口に含んだ後……
「仕返し」
指先にチュッて!!!
食べた後のイケメンが、目元だけでニヤリとちょっと悪い表情で笑うとか……
——拷問だわ!
さすがのこれは、恥ずかしい!顔がブワッと赤くなったのが分かった
イケメンの破壊力舐めてました。全然、保護者枠ソージュさんじゃない!!
やばい、早く顔隠してほしい。
何なら私が鉄仮面かぶりたい!!
誰かー!存在するだけで罪な色気と美の暴力の男がいたいけな乙女を攻撃しましたよー!!
助けてくださーい!
その時は知らなかった。
後ろで兵士2.3が見て居た事を……
「「ソージュ隊長にアーンとか、勇者現る!」」
イケメンがあらわれた!
チャコ、どうする?
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