忘れちゃダメだよ?聖剣トング
ついに『聖剣トング』が!
魔王の第一補佐官のマハトから伝えられた西門は誰一人おらず、がらんとしていた。門も開いたままだ。ここまで何も無いと、却って罠じゃ無いのか?と警戒してしまう。
マハトが言うには、通信具をアマイゼから受け取り、話を聞いて直ぐに魔王の元へ行き、
「勇者の情報が入って来ました。中々の強敵らしく、戦神ソージュ、大魔神エストラゴン、守護神オリガン、大魔道士ペリルが共に進行しています。勇者は回り道で魔族の国に入り、そちらから城に向かう様です。私が先陣を切り、戦える各地の魔族も進軍させます。魔王軍全軍を、一人残らず魔族の国へ向かい、待機する様に指令をお願いします。一気に終わらせましょう」
と、嘘と本当を織り交ぜて戦いに駆り出される魔族を一人残らず国に戻した様だ。
今いる城は、5国が元々アレクサンドル国だった頃の古城で、5国が共同管理している歴史的建造物だ。アレクサンドル城はフェルゼンと魔族の国の境にある。
魔族の国は、アレクサンドル国の領土で、魔力溜まりが有り、元々は魔の森だった。いつの間にかそこには魔族が集い、気付いた時にはひとつの国に発展していたらしい。
アレクサンドル王は、無駄に人に危害を加えない事を約束として建国を認めた。
しかし、その古き約束を違える者も現れるだろうと、初代魔王とアレクサンドル王は人と魔族の力量差を考えて、ある仕掛けをした。
それが勇者の発現だ。約束を違えた者が魔王に立った場合に、勇者とそのメンバーには女神達の加護が降り、その魔王を打ち滅ぼす
本来の魔王城は、魔族の国の最奥にあり、過去の魔王討伐の旅は、魔族の国を横断しなければならず、かなり苦労した様だが、アレクサンドル城であれば目と鼻の先だ。
しかも、王の命令で魔族は皆魔族の国にいる。こちらは入り放題だ。魔王は本当に馬鹿なのかもしれない。
「本当に周りには誰もいませんね?」
私は周りをくまなく見たが場内には下働きの様な弱々しい魔族がふらふらしながら仕事をして居るだけで、戦う相手では無い。エストラゴンを見ただけで気を失うだろう。
「チャコ、魔王はいるか?」
ソージュに問われ、私は千里眼を使う。コレを発動すると、何故だか壁すら貫通して見る事が出来る。
私は城内最上階の奥部屋に人が2人いる事を確認したのでズームしてみたら
「あっ!ちょっ!」
慌てて目を閉じた。
私が慌てて目を閉じたのをみて
「チャコ?どうしたの?」
「大丈夫か?!何があったか?」
「何か攻撃されたのか?おのれ魔王!」
オリガン以外が驚き慌てる
「いや、あの・・・大丈夫です。ちょっと戦っている魔王を直視しちゃっただけです」
びっくりした。ズームの先では魔王が全裸の戦いの真っ最中だったのだ。
「何、戦だと?誰かわしら以外にも魔王に挑んでいるのか?」
エストラゴンは完全に違う戦いを考えている。勿論本来ならそちらが正しい。
私がどう説明しようかと、唸っていたら
「エッさん、営みの真っ最中みたいだよ?捕縛するなら隙だらけの今かもね?」
ペリルは最も簡単にサラッと言ってのけた。
「お?なんだ?そうか、ならさっさと捕まえに行くぞ!」
エストラゴンが先に進もうとしたから、
「最上階の奥の部屋です!」
エストラゴンとオリガンが先行で走って行く。
「チャコ、我々は制御装置を探そう」
ソージュに言われたので私は千里眼で装置を探す。千里眼は魔力を持つ物は見えるのか、魔道具のコア等は光って見えたりする。
魔物や魔族は身体中に魔力が回るし、表面に魔力が滲み出るからか、姿が見えるのだろう
「あ、なんか強い魔力を放っている場所が地下にあります。周りには人は居ないけど、トラップかなぁ?魔道具が沢山ありますね」
私達は最寄りの階段を降りて行く。階下に着いても下りの階段は無い。魔力を放っている場所はまだ下だ。
「チャコ、どの辺りにあるか分かる?」
ペリルに聞かれたのでその場所に向かう。
「この部屋の下辺りだと思う。部屋には誰も居ないけど、扉と入って直ぐの床、壁際に数個多分トラップがあるわ」
それを聞いたペリルは魔法陣を描き部屋全体から装置の辺りまでスキャンしている。あれで何が分かるんだろう?
「チャコ、もう一度見て?」
私は室内を見たがさっきまであった筈のトラップの魔力反応が無くなった?
「さっきの魔法陣?」
魔力を奪い取る魔法陣だ。吸収なんて可愛い物では無い。
「もう入ってもいい?ってソージュ様!先行しないでください!」
ペリルは私が返事するより先に勝手に入っていったソージュに注意している。
「ペリルのトラップ解除だろう?失敗した事ないし、ほら、問題ないぞ?」
ソージュからの信頼が厚い事が知れて、ペリルは嬉しいやら困るやらで感情が、忙しそうだ。
部屋の中はがらんとして特別何かがあるわけではないが、足元から禍々しい魔力が上がって来るのが気持ち悪い。
「ペリル、床に穴あけちゃダメ?」
私はさっさと終わらせたい。
「どうだろう?ちょっとだけ開けて見る?」
私が自分の考えを2人に伝えると
「ふふ、やってみたら?」
と、ペリルは笑い
「それでいけるのか?」
と、ソージュは困惑する
「とりあえず、ものは試しです」
と、鞄から取り出したのは
『聖剣トング』
長かった!やっとお前を使う日が来た様だ!
トングで足元を30cm、深さ30cm位くり抜いてみる。まだ届かない。
ムッとしてそのままトングでくり抜いた穴の中にトングを入れてぐるぐるかき混ぜながら下に進むと、腕をすっぽり穴に入れた辺りで穴に溜まった石クズがざぁーっと下に落ちた。トング、素晴らしい働きだわ
「繋がったみたいですね?中は暗くて見えないです」
私が中を覗いたけど意味がなかった。がっかりしていたら
「チャコ、ちょっと待って」
ペリルが光の玉を穴に落としてくれた。私はもう一度中を見たら
「は?何あれ?」
そこには複雑な装置に繋がれたガラスの棺の様な物があった。棺から魔力を奪い取り増幅している様だとペリルが言った。
透明な棺の中には、黒髪の美しい女性が眠った様に安置されていた。
やー、やっぱりトングはトングなんですよ。穴掘っただけです。でもご安心下さい。まだトングの活躍の場はあります!
後少しのお付き合いですが、もし、お気に入りのキャラが出来ていたら教えてください!
キャラのこんな話読みたい!もあったら教えてくださいね!




