記憶の改竄に伴う苦しみ
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ティトとの通信を終えて風呂に入り寝支度を整えたが、まだ眠くはないので食品リストに目を通す事にした。
リストには食品名とどんな物かの説明が記されていた。これは誰が書いたんだろうか?と見ていると知らない名前の食品の説明にあちらにある物の名前で書いてある。
「瑠璃か、透子さんが書いたのね?凄いな、もう覚えたんだ」
先日聞いた話では、私と彼女達とでは召喚に数ヶ月のラグがあったみたいだ。どうやら召喚者が魔法陣にミスが有るのにそのまま発動した様で、宮廷魔導師が慌てて夜通し修正を図ったおかげで無事召喚出来たらしく、宮廷魔導師が居なければ、今頃私達は肉体がバラバラになっていたと聞いた。
怖い話だ。完全に修正する事が間に合わなかった部分が時間と場所だったらしい。だから私は栗の木に呼ばれて守護された。もし裏庭の栗の木じゃなければ遥か遠くに飛ばされていたのかも知れない。
透子さん曰く、王宮に召喚されなくてよかったとの話だった。彼女達が王宮にいた時はかなり厄介だったらしい。詳しくは今はまだ話せないと言われた。国の中枢にまつわる事だから事が済む迄は口外できない様だ。
私はかなり運が良かったんだと思う。もし、フェルゼンに飛ばされたらナンパされてつまみ食いされる未来しか見えないし、ナトゥーアなんかに行ったらハーレムの一員だろう。
勇者パーティーはそれぞれ別の国に存在する事になったのを考えると、もしもゴルドファブレンに飛ばされたらティト以外が賢者になったのだろうか?
時間と場所にミスがあったなら本来ならフェルゼンの両隣から勇者と聖女以外は産まれたのかも知れない。そんな事をつらつら考えていたらだんだん眠くなりうとうとしていつの間にか眠っていた。
私は夢を見ていた。ペリルがいない事が寂しかったのだろう。脳内ペリルが大活躍している。脳内ペリルが夢にまで出てくるなんて私も大概だな?なんて思いながら脳内ペリルを堪能していたが、嫌にリアルだ。
「あ、チャコ起きた?」
脳内ペリルでは無くて、リアルペリルだった。え?どっからが夢?考えたくてもリアルペリルの激しい攻撃が続き余計な事は何も考えられ無かった。
すっかり夜は明けて、戦いが終わり、隣を見ると何だかいつもと空気感が違うペリルだった。何かあったのだろうか?そもそも勝手に戦を始めた事など今までは無かった。
「どうかしたの?」
明らかにどうかしているけど、他の言葉は出なかった。
「・・・人の記憶の改竄をしたんだ」
記憶の改竄?確か辻褄を合わせる為にかなり精密にやるって言っていたわね?
「それでこんなにも時間がかかったのね?お疲れ様。改竄は大変だったみたいね?」
まあ、記憶書き換えなんて普通しないだろう。余程の事だったに違いない。ペリルは私を胸に抱きしめてポツポツ話してくれた。
「改竄する相手の記憶を見なければうまくいかないんだ。記憶を抽出して項目を書き換える。それの繰り返し」
記憶を見るって
「あのクリスタル?」
アレは精神的にキツいわ?ペリルは見たくもない事を見たんだろうな
「うん、相手は犯罪者だからキツかったよ」
ペリルは弱々しく擦り寄って来た
「だから雰囲気が違ったのね?もう大丈夫?」
犯罪者の思考のトレースなんて負担が大きすぎるわ
「終わって直ぐに帰りたくなったから帰って来た。眠っているのは分かっていたけどチャコに触ったら我慢できなかった。ごめん」
ペリル、気にしていたのね?
「私、ペリルが居なかったから脳内ペリルが頑張ってくれたんだと思っていたわよ?夢の中で堪能していた筈だったけど、現実でびっくりしたわ?どちらにしたってペリルの事を拒否する事は無いわよ?」
どちらも喜んで受け入れますよ?
「チャコの脳内の俺・・・負けたく無いな」
あれ?そこ、競う所じゃ無いわよね?
「私の脳内ペリルはペリルから学んでるから現実のペリルの方がハイスペックで、いつだってリアルペリルは新たな扉を開いてくれるわよ?」
だから不安にならなくても、軍配はいつもペリルの勝利だ。勝手に始めた戦いも罪悪感持たなくても大丈夫です。ペリルの空気感が緩んだのが分かった。いつものペリルだ。
「・・・チャコ、1人で何していたの?」
あら?気になった?
「ソージュが瑠璃の所に言ってからは部屋で貰ったお土産食べて、ペリルに借りた本読んで、ティトから連絡来たから話をしたわ?」
意外と充実していたわね?
「ティト?妹の?彼女に何かあったのか?」
ペリルはティトの心配もしてくれた。優しい人だ。私はティトから聞いた話をペリルに伝えた。
「書類?届いた?」
そういえばいつ届くのかしら?
「書類ってどうやって送られて来るの?」
ペリルに尋ねたら、ペリルは私のバングルを外し、サッと服を着て
「室内だと無理だからちょっと待ってて」
そう言って外に出て行った。私はこのまま待つのも何だか恥ずかしいからサッと服を着て隣の部屋のソファに座る
「あれ?服着ちゃったの?」
ペリルは明らかに残念そうだったが
「や、私だけ剥き出しはちょっと・・・」
恥じらいくらいはちゃんと有るんです。
「まあ、後から脱がせばいいか、この室内だと俺の結界があるから無理なんだ。拠点外ならバングルの陣が対なら書籍程度なら送れる様になってる」
知らなかった。メール便みたいな感じなのね?感心していたらペリルがバングルを手首に戻してくれた。
・・・前半の言葉は聞かなかった事にする
ペリルは王宮で引き止められたけどイライラしたので振り切って帰宅しました。
ペリルはチャコが居ないと無感情な人です。
でも、犯罪の内容がチャコのトラウマに被って見えたのでかなり心が荒れていました。
記憶改竄のペリル視点、「オカン」で読みたいですか?ぼかしながらのシリアス描けるかなぁ




