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第七話 予告時間…、そして

 夜十一時をまわった。駅前は前年比でも前回と比べても人は少ないが、それでもそれなりにいる。今も警察官と市の職員が必死にアナウンスなどを続けているが、帰らない人は帰らないらしい。野次馬根性か酔っ払いなのか。ここぞとばかりに『権利』を主張するやつまでいる。



「これ以上は無理ですね。人を減らすの。」


 木村も注意換気に疲れたらしい。グッタリしている。


「無理なものは無理だ。逃げないやつは逃げないんだから。あとは被害者を出さない方に体力を使うべきだ。」


「でも、先輩はまだ叫んでますよ~?」


 視線の先には川井、酔っ払い相手に大声で叫び続けている。


「あれを全員が真似したら、全員がもれなく倒れて明日働く警察官がいなくなる。ばか正直と正義感には頭が下がるが…。」


「素直に尊敬します。私にもあんな力があれば…。」


 木村の目が確かにキラキラして見える。本心で尊敬して憧れているのだろう。


「あの力の半分を自分が酔ったときに使ってくれれば、あいつの家のベッドに寝かせて、アラームをセットして、家の鍵をかける手間が省けるんだが…。」


「そこまでしてるんですか?ラブラブを通り越して完全な夫婦じゃないですか~。」


 木村が笑う。玉川も笑った。すると、


「そろそろだぞ!木村!玉さん係だとしても気を引き閉めろよ!」


「は、はい!大丈夫です!」


 木村が玉川に見せたことのない緊張感を示した。相手は吉川秀人ヨシカワヒデト刑事、川井の同期だ。『何にでも秀でていて、誰とでもうまくやる。すごい人です。』と川井が絶賛していた。一時は川井と噂になったとかならなかったとか。吉川は玉川を見て笑う。 


「木村をよろしく頼みます。」


「ああ。安心して任せてくれ。吉川くん。そっちはそっちで集中してくれればいい。」


「了解です。」


 吉川は玉川には一礼し歩いていった。


「どうした?らしくないな。吉川くんは苦手なのか?」


「吉川先輩、なぜか私には厳しいし冷たいんです。唯一近づけない先輩なんです。」


「そうか。彼にしては珍しいな。」


 すると川井たち警察官の動きが変わった。今までは注意換気、ここからはある意味で強制排除だ。市長の許可でメイン通りを通行止めにできる。警察官が一般人を駅の方へ歩かせていく。そのとき、



 ドカーン!



 どこかで爆発音が響いた。誘導していた警察官も周囲を警戒。


「メイン通りの東側の駐車場で車が爆発音、炎上。東側裏通りの警察官は現場へ向かってくれ!川井、俺も現場に向かうから、ここは頼む。」


「わかった。何かわかったら連絡お願い!」


 無線を聞いた吉川刑事が指示を出し、走っていく。


「川井、手薄になる裏通りへ行ってみる。」


「了解!こちらはお任せください!何かわかったら連絡をください!木村!玉さんを頼んだ!」


「はい!」


 玉川は木村と共に裏通りへ走った。メイン通りは華やかでも一本入れば暗い。玉川は近くの電柱に小型のビデオカメラをセットした。今いる十字路を通る人と駅まで続く裏通りを撮影できるように。


「このカメラの意味は何ですか?」


 木村が質問をしたとき、



 ドカーン!



 どこかで再び爆発音が響いた。木村は急いで無線に耳を傾けた。


「駅の裏で車が爆発、近くに人が倒れていて胸に凶器が刺さっている。駅周辺の警察官は犯人を探せ!メイン通りの警察官は誘導を中断し、民間人の警護にまわれ。」


 警察の無線が流れた。川井たちは指示に従い周囲を警戒する。メイン通りは緊張感に包まれた。


「木村、次の通りで見張るぞ!」


「は、はい!」


 玉川は走って隣の通りに移動、同時に川井に電話をかけた。


「こちら玉川!裏一本目の通りには駅方面にカメラを仕掛けた。二本目を見張る。」


 川井からの返事はない。もともと川井には「イヤホンで声だけ聞いておいてくれ!」と伝えておいた。玉川と木村は建物の影から駅方面を警戒。メイン通りの叫び声が遠くに感じる。静まり返った道で犯人を待った。


「一本目に来る可能性はないんですか?」


「ああ。駅と交差点は警察官が見張っている。怪しいやつは捕まえるはずだ。だとしたら犯人は次の交差点を渡ってこっちに来る可能性が高い。その直線上がこの道だ。隣の通りに出るには警察官の前を通らないといけないし、あの道の方がこっちよりも明るい。あくまで確率論だけどな。」


「なるほど。」


 木村は納得したようだ。しばらく待ったが人は誰も来ない。スマホのカメラで隣の通りのカメラ映像を見てみても、特に大きな変化はない。ただ、犯人発見の連絡もない。玉川は予備のビデオカメラを電柱にセットしようとした。そのとき、


「キャー!」


 悲鳴が上がった。玉川たちの後方だ。


「行くぞ!」


 玉川と木村は走り出す。通りを走ってメイン通り側に曲がると、三人くらいの人影が見えた。


「ま、待ってくれ!頼む!」


 そう叫ぶ男の前に、光る何かを持つ黒いマント姿の人が立っていた。マスクをしていて顔は見えないから性別はわからない。そのそばに女性が座り込んでいる。マスクをした人物は光る何かを相手の首に向けて近づけた。


「やめろ!」


 玉川は叫んだ。ただ、別の誰かも叫んだらしい。マスク姿の人物は玉川ではない方を見た。玉川もその人を見た。


「井ノ上先生!」


 確かに井ノ上だと玉川には認識できた。井ノ上が驚いた顔で玉川を見た。そのとき、マスク姿の人物は井ノ上の方へ走り、すれ違うようにして奥へ走った。同時に井ノ上はその場に倒れた。体には刃物が刺さっている。


「先生!」


 玉川が井ノ上のところへ駆け寄った。


「追え!玉川!」


 井ノ上が叫ぶ。同時に木村が井ノ上の応急措置に入っていた。無線で本部に連絡をいれている。


「木村!先生を頼んだ!」


 玉川は犯人を追った。犯人が裏通りの一本目の道を左に曲がったのは確認できた。玉川も曲がるが人影はない。すると、


「こちら吉川!犯人らしき人物がクライムビルに入ったのを確認!応援を頼む!」


 玉川は辺りを見回すと、数メートル先にそのビルはあった。玉川はクライムビルの入り口から中を見るが犯人と吉川刑事の姿はない。


「玉さん!」


 川井が走ってきた。玉川はビルを指差す。


「向こうの通りで知り合いが刺された。木村に頼んであるが応援を頼む。この通りを見た時点で吉川君も犯人も見てない。おそらく中だ。」


「了解。誰か、木村の応援に行って。残りは中へ。玉さんはここに待機で。」


「映像は提出する。後を追わせてくれ。」


「ダメです!玉さんは民間人です!これ以上は立ち入らせるわけにはいきません!映像はこちらで!」


 現場での冷静な判断で川井の右に出る者はいない。玉川も素直に従おうと思えた。そのとき、


 パーン!パーン!ガシャーン!


 銃声らしき音が響き、ビルの窓ガラスが割れた。吉川刑事が銃を使ったという事実が緊急事態だということを伝えた。


「川井!四階だ!急げ!」


 玉川が叫ぶ。川井はうなずいた。


「私が四階へ向かいます!そこの三人は私と上へ!あとの人はこの入り口と非常口を!本部にも連絡して!玉さんは私から離れないように!」


 川井の指示で全員が動く。川井は先頭で中へ進む。玉川は最後尾からスマホで撮影する。緊張が走るなか、四階にたどり着いた。ドアはひとつだけ。


「犯人がこっちに向かってきたら迷わず撃ちなさい!」


 川井が周囲にそう告げて、拳銃を構えた。ドアノブを回し、勢いよく開け、室内に銃を向けた。


「吉川さん!」


 川井が叫ぶ。玉川が中を見ると吉川刑事が倒れていた。胸には刃物が刺さっている。窓のそばにもう一人。川井が銃を向けたまま近付く。顔にはマスク。それを川井が取る。


「間違いありません。佐藤です。」


 川井の声が静かなビルに響いた。


 その後、吉川刑事と容疑者の佐藤は救急車で運ばれたが、病院で死亡が確認された。



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