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第十八話 再会と飲み会

「先輩!玉さん!お疲れ様で〜す!こっちで〜す!」 


 木村青葉のテンションMAX!どんなに暗い状況も、一気に自分の空気に変える。それを何度も繰り出された玉川たちからすれば、ただただ懐かしい。そこに満面の笑みがあればなおさらだった。


「久しぶりだな。木村。」


「久しぶりね。青葉。」


「お二人とも、夫婦で呼び方統一してくださいよ〜。」


「「夫婦じゃない!」」


 二人の挨拶に対して適切で的確な木村節。それに対して二人のツッコミが揃った。一瞬止まった時間が笑い声とともに流れていく。挨拶もそこそこに木村は二人を家に案内した。田舎の大きな家、中に入れば部屋数も多い。


「ここに一人で住んでいるのか?」


「元々は両親の家だったんですが、早くに亡くなって…。しばらくは親戚が住んでいたんですが、最近は空き家でした。なので私が住むのに使っています。」


「そうだったの…。」


 玉川の質問に木村が静かに答えた。川井の相槌でしんみりとした空気になった…。が、


「なのでお二人とも好きな部屋を使ってくれてかまいませんよ〜。もちろんお二人で一つの部屋でもかまいませんけど〜。」


「別の部屋に決まってるでしょ!」


 木村らしいセリフでもとの空気に戻った。玉川は「さすが。」とつぶやくのが精一杯だ。それぞれの部屋に荷物を置いて、大部屋に集合。木村が事前にオードブルを頼んでくれたらしく、そのまま宴会になった。


「お二人は〜、まだご結婚されないんですか〜?私がいない間に話がまとまってるかと思ったのに〜。」


 ここでも木村節が『ガンガンいこうぜ』状態。そのたびに川井は酒を飲み、あっという間に倒れた。木村はそ~っと毛布をかけて、玉川のそばに座った。


「玉さん。あの事件、その後どこまでわかったんですか〜?一応関係者ですから〜、進捗くらいは知りたいで〜す。」


「ああ。教えるのはかまわないが、覚悟がいるぞ?」


 一応、そう聞いてはみた。木村は吉川君の部下であり、井ノ上とも親しく話していた。知り合いが加害者側だと知るのはきついことだと思うのは、それを味わった側だからこそだ。木村は小さくうなずいた。


「大丈夫ですよ〜。私も何となくは察していますから〜。だからこそ、玉さんにあの女性を会わせたんですから〜。」


 確かに…、木村があの夜の酔っぱらいにからまれた女性を玉川に教えたからこそ、今の結論に至ることができた。それに…、


「じゃあ、その前に教えてくれ。お前はあの時点で気づいていたのか?あの刃物を持った男が吉川君だったことに。」


 木村は少しだけうつむき、顔をあげてから小さくうなずいた。


「はい…。立ち姿や走り方で…。『間違いなく』と言えるほどではありませんでしたが、『八割五分』くらいは…。ただ…、だからこそ、何で?って気持ちでいっぱいでした。」


 遠くを見るような目で木村はつぶやいた。玉川は静かにうなずく。


「だから、警察を辞めたんだな?」


 その問いに木村はまた小さくうなずいた。


「あの事件後、吉川さんは『犯人に刺されて死亡』という話にまとまっていました。私の中にある『刃物を持った吉川さん』の話をできる空気はありませんでした。でも、確かに私の目の前にいたのは『吉川さん』でした。だから、自分で真実を探そうと思ったんです。」


「川井に話すわけにはいかなかったのか?」


 木村は少しだけ目を伏せて、そのまま答えた。


「先輩に話したとしても、たぶん信じられなかったと思います。それに、先輩の表情を見ればどれだけショックだったのかはわかりましたから。それよりも玉さんと捜査しながら徐々に真実にたどりついた方が苦しまずに済みそうだと思ったんです。」


「懸命な判断だ。せめて、俺に言ってくれてもよかったんじゃないか?」


「玉さんは情報処理が早すぎます。私が話したら『吉川さん犯人説』をベースに話を組み上げてしまいます。そうなれば警察と対決構造になるのは必至で、警察から情報がもらえなくなると思いました。」


「懸命な判断ね。」


 そう答えたのは寝ていたはずの川井だった。さすがの木村もおどろいたようで目を丸くしている。


「ただ、だからこそ話してほしかったのよ。私も、玉さんも。」


「はい…。そうですね…。すみません…。」


 しばらく沈黙の時間が流れた。玉川はそれを打ち消すようにゆっくりと事件の話を木村に聞かせた。佐藤以外の全員が自殺だと言う事実、吉川が佐藤を殺害後、自殺したと考えられること。遺書についてはここに来る理由として伝えてあった。話を最後まで真剣に聞いたあと、木村は涙を拭った。


「玉さんの推理が全部正しいなら、悲しい事件ですね。」


「ああ。悲しい事件だ。ただ、だからこそ全部を調べ切って正しく伝えたい。『かもしれない』や『だろう』は限りなくゼロにしたい。それにはこの遺書が吉川君のものかどうかが重要なんだ。」


 何度もうなずいた木村は、静かに玉川を見て笑った。


「玉さんなら大丈夫です。きっと真実にたどりつけますよ。」


 玉川は静かにうなずいた。すると木村の手が酒瓶に伸び、それを玉川に向けた。


「呑みましょう。続きはまた明日ってことで〜。」


「ああ。そうだな。」


 その後、ゆったりとした時間が流れた。気づくと川井はまた眠りについたらしく、木村は毛布をかけていた。玉川は木村に注がれただけ酒を飲み、木村も同じだけ飲んだ。どちらが先かはわからないが、お互いに倒れてそのまま朝まで眠った。三人とも雑魚寝という仲間内の飲み会らしい風景だった。 


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