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第7話 火山の村(1)

「ここがリルド村か」


 街で買い物をした後、人間なら徒歩で一日かかる道のりを三十分ほどで踏破して。

 俺たち三人は火山の近くにある村の入り口に立っていた。


「随分と寂しい感じね。家にこもって筋トレでもしてるのかしら」

「汗臭そうな村だなッ。普通に妖獣ラウルを恐れて引きこもってるんだろ」


 レナのボケにも慣れてきたお陰か、俺は的確にツッコミを入れると村の中を見渡す。

 火山が近いからか木で作られた家はなく、レンガや石でできた建物が所々に立っていた。

 のどかな農村といった風合いで、田畑のほうが家の数より広く多いような場所だ。


「美味しい料理屋さんあるかな?」

「あんだけ食ってたのにッ!? 何はともあれ食い気なのね……」


 走りながら携帯食料を貪っていたはずのパルフィの一言に、俺は苦笑いを浮かべる。

 森や丘が高速で後ろに流れていくようなスピードを出しながら食事をするという、ある意味芸の一環のような謎の特技を見せつけながら走る女神の姿は、滑稽を通り越して感動すらしてしまいそうになった。


「飯より先に村人に聞き込みするぞ」

「エッチなゼノは、ご飯食べさせてくれないの?」

「何時間前のネタを引っ張り出してんだよ。聞き込み終わって飯屋があったら入って食べるから、それまで我慢してくれよ」

「うん、わかった。ゼノが料理を全種類注文してくれるんだね」

「そんな約束してませんけどぉ? 本当に天然か? わざとやってるんじゃねぇだろうな?」


 パルフィの都合のいい解釈に、疑いの視線でレナに問うが。


「正真正銘、本気で言ってるわよ。長年付き合ってる私が保証するわ。聞き間違い思い込み勘違い。天然守笑神(ボケ)パルフィの鉄壁は堅固よ」

「マジか……」


 〝間違いなく本物だ〟と告げられ、俺は大きく肩を落した。


「とりあえず聞き込み行こうぜ……」


 天然守笑神(ボケ)に会ったことはあるが、ここまで程度の激しい神は見たことがない。

 そのあまりにも予測のつかない言動に、叩笑神ツッコミとしての本能が抗えず、激しい運動をするよりも強い疲労感が襲っていた。


「あそこで聞くのがいいんじゃない?」


 村の中を歩いていると、パルフィが一つの建物を指差した。


「いやあそこ宿屋だし」

「ご飯、ご飯! 美味しいご飯!」

「さっき飯は後でって言っただろーがよ。お願いだから俺の話聞いてぇ……」


 レナに天然保証されたものの、ここまで極端だと涙が出てきそうになる。

 村レベルの大きさの場所では、飯屋は無く宿屋と食堂を兼ねている所が多いと養成所で教わった。

 いつかは営業に出る爆笑神おわらいに向けての座学で一般常識を教わったが、未だになぜ卒業後のことを最初に教えられたのか謎だ。


「どうせずっとうるさいからご飯にしたほうがいいわよ。ついでに店主にでも火山の話聞けばいいし」

「はぁ……そうするか。落ち着いてやりたいしな」


 レナの勧めで村にある宿屋に立ち寄ることにし、俺は二人を連れて看板の掲げられている建物の中へ入ると。


「いらっしゃい。こんな時に外から人が来るなんて珍しいね……って、この感じは神様かい?」


 丸い木の椅子と四人掛けのテーブルが三つ置かれた室内から、店主だろう威勢のいいおばちゃんが三人を出迎えた。


「こんな時期って?」

「お山さんが怒っているときだよ」


 木の床を踏み鳴らしながら俺たちが近づいていくと、気さくそうな見た目の店主は困り顔で答えた。


「ここ最近、お山さんがお怒りになっていてね。規模は大きくないんだけど、何度か噴火してるんだよ」

「前からたまに小規模な噴火はしてたって聞いてるんだけど。その回数が増えたとかなんとか」


 レナが街で聞いたことを口にする。

 噴火自体は日常の一コマらしいが、その回数が増えたという異変。

 火山の麓にあるこの村の住人なら、原因を知っている可能性はあった。


「年に数回はそういうこともあったね。それが見られたら幸運を呼び込むと言われてて、村に観光客もそれなりに来てたんだよ。でも、今は一週間に数度は煙だけでなく火も噴いてるから、観光客も来なくなったし私たちもいつ村にマグマが降り注ぐかと気になって、中には村を出ていこうと考える人もいるくらいなんだよ」

「今までと違うことが起き始めたら、そりゃ避難するよなぁ」


 おばちゃんの話を聞いて俺はアゴに手を当てる。

 もしかしたら大噴火するかもしれない。

 それを思うと、いかに慣れ親しんだ土地だとしても、何かかが起きる前に安全を確保しておこうとするのは致し方ないことではある。


「確実にどうにかできるって保障はないけど、私たちは火山調査をして可能なら噴火の原因を取り除くって依頼を受けて来てるから」

「おお……神様たちが対処してくれるなら安心だね」


 レナの言葉に店主は光明を得たように表情を輝かせた。


「まだ何をどうすればいいかもわかんねぇけどな」


 初めての冒険えいぎょうで、俺は調査の基礎すら知らない。

 それでも期待を寄せる人間の態度に、居たたまれなくなって頭を掻いた。


「ダイジョウブ、ワタシタチガ、ガンバル」

「なんでカタコトなんだよ。ってか話ちゃんと聞いてるんだな」


 人の話をまったく聞いてない女神だと思っていたが、聞き間違い思い込み勘違いが酷いだけで話自体はちゃんと聞いているようだ。


「頑張ればお腹いっぱいご飯食べさせてくれる?」

「もちろんだよ。この宿屋は料理の味自慢でもあるんだ。座って待ってな。火山に行く前にも景気づけにたっぷり食べさせてあげるから」

「わーい!」


 そう言って店主は店の奥に引っ込むと、威勢のいい掛け声と調理の音が響かせ始めた。

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