円卓会議
魔王イヴリスが魔王国を離れてから暫く経ったある日、イヴリスが暮らしていた城のとある一室で円卓会議が行われていた
会議に参加しているのは5人、その5人は魔王を除いた魔王国の最高戦力である魔王の右腕であるマリアと四天王の4人だった
鬼人族のドゥルージ、森人のアイリーン、半人半鳥のグレイス、竜人族のドラグ。他にも様々な種族が存在しているがこの四種族が四天王の座に就いている
繰り返しになるが魔王国は実力主義の世界、四天王は入れ替わり制となっていて現四天王に勝負を挑み勝つ事によってその席を奪うことができる
けれどこの4人が四天王となってから100年近くは入れ替わりが行われていない。それまでに幾人もの挑戦者が現れたがその悉くが敗れ去っている
彼らは周りからも名実共に認められている四天王、そんな者達とマリアがいる部屋の空気は穏やかと呼べるものではなかった。重々しい雰囲気が漂う中最初に口を開いたのはマリアだった
「四天王諸君、まずは忙しい中にも関わらず集まってくれた事に感謝するわ。今日皆に集まってもらったのは他でもない、魔王イヴリスが消息を断った件についてよ」
「魔王様はまだ見つからないの?」
イヴリスが魔王国領を抜け出してからも暫く国境付近は厳戒態勢を強いられていた。しかしいくら待ち構えていても姿を現さない事に違和感を持ち始め、こうして各箇所の指揮官を務めていた四天王が招集された
イヴリスの性格であれば一日二日もすれば痺れを切らして正面突破を仕掛けてくると思っていたマリアの予想は大きく外れたことになる
「グレイス、空からの様子は?」
「現在進行形で私の直属の部隊が目を光らせているけどそれらしき姿も気配も全く感じないわね」
「ドラグ」
「周辺の地上、地中からの反応もありませぬな」
ドゥルージやアイリーンも2人と同様、魔王国の領土はそこまで広いわけではないので身を潜められる場所は限られてくるが、何処を探してもイヴリスの痕跡すら見つけることが出来ないでいる
イヴリスを見つけ出すことが出来ない事に対してマリアは苛立ちを募らせていて、それがあからさまに態度に出ていた
「四天王であるお前達まで配置しているのにどうして見つからないの!もう!」
「あっ、とうとう爆発しちゃった」
普段は常に冷静沈着で取り乱すことがないようなマリアだが、イヴリスが絡んでくるとなると途端にその余裕が無くなる。一通り暴れ尽くして落ち着きを取り戻した後にドゥルージが無念の表情を浮かべて頭を下げた
「面目ない。我等では魔王殿を見つけることすら出来ないとは・・・」
「・・・いや、すまない取り乱したわ。今はどうやって魔王を見つけるかね」
感情をぶつけても何も進展しない。見つけることが出来ないのは自分の落ち度でもあるのだからもう一度冷静になり必ずイヴリスを見つけ出し連れ戻すと心に刻むマリア、しかしその思いとは裏腹に森人のアイリーンが意見を述べた
「ねぇ、魔王様を探すのも大事かもしれないけどこのまま魔王様が見つからない様だったら一先ず誰かが魔王の座に就いた方がいいんじゃない?トップが存在しない国って変だし人間達も調子づくわよ」
「アイリーン、この魔王国は実力至上主義の国だ。イヴリス様以上の人物が魔王の座に就いた後に他の者が就任しても周囲が納得するかどうか分からないぞ」
アイリーンの提案に異を唱えたのは鬼人族のドゥルージ、どちらの意見も間違いではない。アイリーンが言うようにイヴリスのような絶対的存在がいなくなったと知ると不安になる者も現れるし治安の問題にも関係してくる
だからといって誰でもいいわけではない。イヴリスと同等かそれに次ぐ実力の持ち主でないと実力重視のこの国では認められない。そうなると自ずと次の魔王に推されるのは1人に絞られていく
「マリア殿は魔王の座の興味はないのか?」
誰もが思っていた事を代表して発したドラグの一言により四天王4人からの視線が一気にマリアに集中する。マリアであれば実力は勿論のこと魔王国の発展に貢献してきた事もあり賛同する者は多いことは間違いない
本人もそれだけ国の為に尽力してきたのなら魔王の座に就くこともやぶさかではないはず、そう思っての発言だったがマリアは悩む素振りもなくドラグの質問に答えた
「私は魔王なんて器じゃないわ。魔王はイヴリス、それ以外の者が魔王になるなんて認められないわね。そういうわけだかこれからは魔王の捜索範囲を大幅に拡大、既に領土から出ている可能性も考慮して人間界にも足を踏み入れるわよ」
それだけ言い残すとマリアは四天王をおいて部屋を出ていった。残された4人はそれぞれ思うところはあるもののマリアの指示に従い捜索網を拡げイヴリスの捜索にあたった
一方会議を済ませたマリアはというと部屋から一直線で自室へと戻っていた。城にはメイドが常駐していて家事等を担当しており清掃もその一環、しかしマリアはかなり釘を刺して自分の部屋には誰も入らぬようにさせていた
その理由は部屋を見ると明らかとなる。部屋に入りベッドにダイブするとマリアは置いてあった抱き枕に抱きついた。抱き枕には精巧なイヴリスの絵が描かれていてそれに体を密着させ腰をくねらせていた
「はぁ・・・はぁ・・・イヴリス・・・好き」
抱き枕の他にも壁や天井、棚といった至る所にイヴリスの絵や人形が飾られていた。表向きはイヴリスに対して厳しく接しているイヴリスだが、面と向かっていると照れてしまいそういった態度になってしまうだけで裏ではこうして毎日のように愛を囁いていたのである
彼女が魔王国を築き上げイヴリスを魔王として祀りあげたのは全て愛によるもの。この国を守っているのも多少の愛国心と残りはイヴリスがいつ戻ってきてもいいように
マリアは抱き枕に描かれているイヴリスに向かって気持ちを吐露した
「本当に何処に行ったのよイヴリス・・・貴女がいないと私は生きていけないわ」
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