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人間に拾われた魔人

「ここは・・・」



イヴリスが意識を取り戻すとベッドで横になっていた。部屋の周りを確認したところ村にある家ではないことは分かった

あれからどれ位の時間が経過したのか、何故自分がこんな場所にいるのか考えていると弟がいないことに気がついた



「※※※※!うっ・・・!」



ベッドから起き上がろうとした瞬間、またあの頭痛が襲ってきた

頭が割れるような激しい頭痛、あまりの痛さにイヴリスは起き上がることができなかった

痛みが収まるまで一先ずベッドに寝るしかない。色々と考えが纏まらない中、扉が開く音が聞こえててきた

扉の方に目を向けるとそこにいたのはなんと村の仲間達を皆殺しにしたあの憎き人間だった



「あっ、目が覚めたみたいね。良かった良かった」



目を覚ましたイヴリスに笑顔を向けてくる女性。対してイヴリスはここが人間の住む家だと言うことが判明し絶望する

殺さずにこんな場所に連れて来たのには何か理由がある。きっと今から酷い事をされるに違いないとイヴリスは考えた

女性が近寄ろうとしてきたのでそれを激しく拒絶した



「く、くるな!」


「あっとごめんなさい、警戒するのも無理ないわよね。この距離からでもいいから少しお話できないかな?」


「人間と話すことなんてなにもない!」


「んー困ったわねぇ」



イヴリスの言葉に応え女性はそれ以上距離を詰めてくることはなかった。何やら頭を悩ませて考えている様子、それを見てイヴリスは自分も弟のことについて考えていたのを思い出した



「お、弟をどこにやった!」


「弟?私が貴女を見つけた時生きているのは貴女しかいなかったけど・・・」



そんなはずはない。弟が自分を置いて一人でどこかに行くかなんて考えられない

きっとこの女が嘘を言っているに違いない。人間の言葉を信じた結果ああなったのをイヴリスは忘れない

一刻も早くここから逃げる方法を見つけなくてはと考えていると、イヴリスのお腹から空腹を告げる音が部屋中に響いた

それを聞いた女性にイヴリスは笑われてしまった



「あっはははは!随分お腹を空かせているみたいね。待ってて、今ご飯買ってくるから」



お腹の音を聞いた女性は食べ物を買いに行くと言って部屋をあとにした

恥ずかしい思いをしたがこれは好都合、逃げ出すのなら今しかない。幸いにも手足には枷などはつけられていないので、見つからなければ脱出することができるはず

あの女性以外にも人間がいるかもしれないので音を立てないようベッドから起き上がり部屋を出ようとしたその時、治まったと思っていたあの頭痛が再度襲ってくる



「もう!なんなのこれ・・・!」



こんな頻繁に頭が割れる程の頭痛がくるなんて今までなかった。イヴリスは痛みに耐えられずそのまま床に倒れてしまう

それでもチャンスは今しかないとベッドから転げ落ち、這いずってでもここから出ようともがき続けた

しかし逃げ出すことは叶わずあの女性が戻ってきてしまった



「おっ待たせー!・・・って何やってるの!まだ大人しく寝てなきゃ」


「うるさい・・・私は弟を探しにいかなくちゃいけないんだ・・・」


「探しに行くにしてもそんな状態じゃ辿り着くこともできないでしょ。まずは体力を戻さなきゃ」



そう言うと女性はイヴリスを持ち上げてベッドへと戻した。抵抗することもできなかったイヴリスは女性にされるがままだった



「さっ、一杯食べて元気をつけな!」



女性が持ってきた料理は出来たてのシチューとパン、いい香りがイヴリスの元まで漂ってきてそれが更に空腹を加速される

もう随分と何も口にしていないイヴリスは今すぐにでも奪い取って食べたかったが、あれは人間が用意した食事。毒でも入っているかもしれない物を口にできるわけがない

女性はベッドのすぐ横にあった台に置きイヴリスが食べるのを待っている



「あれ?食べないの?」


「人間が作った物なんか食べられるか。それにお腹なんて減ってな・・・」



言い切る前にまたお腹の音が鳴る。また笑われるかと思って女性を見ると、先程とは違う心配そうな表情をしていた



「痩せ我慢なんてしても体に良くないわよ?何も怪しいものは入ってないから食べて?」



それでもやはりイヴリスは口に入れようとしなかった。すると女性は置いてあったシチューの皿を自分の元に持ってきて食べ始めた



「んー!美味しい!やっぱりあそこのお店の料理は絶品ね!こんなに美味しいのに食べないなんて勿体ないなぁ」



子供のイヴリスでも分かる、美味しそうに食べる姿を見せて自分に食べさせようと仕向けていることが

そんな作戦に乗ってやるかとイヴリスは目を逸らす。だが美味しそうに食べている女性の姿がどうしても目に入ってしまう

気づいたらもう皿の中にあったシチューは半分近く無くなっていた

それを見たイヴリスは駄目と分かっていながらも空腹に抗うことが出来ずとうとう料理に手を出してしまった



「よ、よこせ!」


「あらら、取られちゃった」



目の前にいる人間が先に食べて何も異変がないんだから大丈夫。そう自分に言い聞かせてシチューを口に運んだ

限界近くまできてからの食事、味わう余裕すらなくひたすら口の中に流し込んでいった

そうすると半分程しか残っていなかったシチューはすぐ無くなってしまった。まだ物足りないと思っていると、見透かしたように女性が追加のシチューを運んできた



「はい、おかわりするかと思って買ってきたよかったわ」



イヴリスはそれを無言で受け取り再び口にする

胃の中に食べ物を入れた事で少し落ち着いた。よく見るとシチューの中にはキノコがたくさん入っていた

そのシチューはまるで母親がよく作ってくれていた大好きなシチューに似ていた。ふと家族との思い出が蘇ってきたイヴリスの目からは大量の涙が溢れ出てきた



「うぅ・・・ふぐっ・・・」


「あーあー、そんなに泣いたら涙やら鼻水やらでせっかくのシチューが台無しになっちゃうわよ」


「うるざいばがぁ」



泣きじゃくるイヴリスを前に女性は抱き締めるでも慰めるでもなく、ただ傍に居続けた




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は火曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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