イヴリスの過去
大浴場へとやってきて汚れた体を綺麗にして一息ついたイヴリス達
アリシアは先程サラと話したことについて気になっていたので、村の人達がいないこのタイミングを狙って話を聞いてみることにした
「イヴリス、貴女の種族を教えてくれませんか」
「なんだ藪から棒に。そんな事を聞いてどうするんだ?」
「サラから話を聞いて気になったので。貴女のその強さは種族が関係しているようですね」
「まぁ確かにそうだが・・・お喋りな奴だな」
「吾輩は聞かれたからそれについて答えただけだ。それに肝心なところは話してないぞ」
イヴリスの睨みにも全く動じないサラ。そこへ頭を洗いながら話を聞いていたマリアが加わってくる
「そういえば以前話していたイヴリスの過去とやらもまだ聞いていなかったわよね。種族に関しては私は知ってるからそっちの方を聞きたいわ」
「まだちょっとしか経ってないと思うんだが・・・」
「どの道話すことなんだから勿体ぶらずに早く話しなさいよ」
「私も聞きたいです」
「ルーもルーも!」
全員一致でイヴリスに期待の眼差しが降りかかる。自分でいずれ話すと言った手前出し渋るのも不誠実だと感じ、観念して自身の過去を打ち明けることにした
「はぁ・・・まぁこの前話すと約束したからな。言っておくが面白い話じゃないからあまり期待はするなよ」
「前置きはいいからさっさと話せ」
「分かった分かった、まずアリシアが気になっていた種族についてだが私の種族は魔人だ。まぁ今の人間で知る者は殆どいないだろうがな」
「魔人・・・?聞いたことがない種族ですね」
アリシアは魔人という種族に聞き覚えはなかった。勇者になる前に確認されているイヴリスの配下の種族は全て頭の中に入れるよう叩き込まれるのだが、その中にも魔人という種族は一人たりとも存在していなかった
「知らなくても無理はない。魔人はある者達の手によって既に滅ぼされた種族だからな。私を除いてだが」
「滅ぼされた・・・それは一体誰に・・・」
アリシアはイヴリスに誰がそんな事をしたのかと尋ねたが、以前の話からある程度察しはついていた
イヴリスはアリシアの目を見ながら質問に答える
「人間だ」
「そんな・・・何かそうせざるを得ない理由があったんですか?」
「さぁな。今じゃどんな理由があったのかも調べようがないな」
予想していた答えが返ってきたとはいえやはりショックは受けた
大昔のことでどういう理由があってそのような行為に及んだのかは分からないが、果たして滅ぼすまでする必要があったのか
お互い話し合えばもしかしたら解決できたのではないか。そこでアリシアはここに来る前の自分の行いを思い出した。上辺だけの情報を鵜呑みにして魔王軍のことをよく知りもせずに攻め込んでいた
自分も似たような事をしていたのではないかと落胆した
「イヴリスが以前話していた大切な人を失って国を滅ぼしたという話・・・あれは大切な仲間を失ったからなんですね」
「いや、それはまた別の人物だ。その時の私にはそんな力はなかったからな」
「え・・・じゃあその人とはいつ出会ったんですか」
「まぁ慌てるな、順を追って話すから。そうだな・・・あれは私がまだ子供だった頃の話だな」
「イヴリスの子供時代!?詳しく聞かせて!」
「だから今から話すって言ってるだろ。大人しく聞いてろ」
興奮するマリアを宥めつつイヴリスは自分の過去を語り始めた
「※※※※こっちこっち!」
「待ってよイヴリス~」
「こらこら2人共、あんまりはしゃぐと転んでしまうぞ」
「イヴリスは本当におてんばさんね」
名前は忘れ顔もぼんやり程度にしか覚えていない家族との記憶
イヴリスは今では魔王と恐れられている存在だが、幼い頃は家族と共に平和に暮らしていた
魔人という種族は数が非常に少なく、魔人が住んでいるのはイヴリス達が暮らしている村だけ
イヴリス達は母親と村はずれの方まで山菜採りを、父親は魔物を狩りに行っていてその帰り
村に戻ってくると他の魔人の中に混じって見慣れない人物数名が族長と話をしていた
その頃人間の言葉を理解することはできなかったが、族長と握手を交わしたりしていることから友好的だということは分かった
「何のお話してるんだろうね」
「んー・・・分かりやすく言うと私達魔人と人間で協力して頑張りましょうって感じかしら」
「人間と協力したらどうなるの?」
「そうねぇ、村がもっと豊かになってもしかしたら数が少ない私達魔人ももっと増えるかもしれないわね」
「へぇ!そうなったらきっと楽しいよね!」
魔人は生まれながらに膨大な魔力が備わっていて様々な事に役立てることができ、一方で人間には魔人程の魔力は宿らないが独創的な発想をする力があった
魔人と人族、今まで大して交流をしてこなかった2つの種族が友好が深めそれぞれの長所を活かしてより良い生活を送ることができるようになる
当時のイヴリスはそうなると信じて疑わなかった
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