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魔王、村を救う

食事中に慌ててやって来た村人から聞く話によると迷いの森から魔獣が十数体この村に近づいてきてるのを目撃したという。今は様子見で村の周りをウロウロしているだけらしいが襲われるのは時間の問題とのことだった

魔獣が襲ってくるのなら撃退すればいいだけなのではと考えるイヴリスだが、どうやらこの村の人達には魔獣に勝てるだけの力がないらしい

村に入る前、周りに簡単な柵が設置されていたのは確認済みだがそんなもので防げるのは最下級のゴブリンが関の山だろう。魔獣はそんなお粗末な防護壁など簡単に突破してくる

こうしている間にも魔獣がいつ襲ってきてもおかしくない状況に村人は体を震わせていた



「先程この男がまたとか言っていたがこういう事がちょくちょくあるのか村長よ」


「あぁ・・・ここはそういう場所なんだ」



どういう意味なのかと村長に尋ねると、この村は人間の国グレイス王国の最南端に位置していて"終わりの村"と呼ばれている村だということが分かった

この村には国の在り方に異を唱えた者や前に住んでいた場所の領主に楯突いて追放された者達が集まる村で、ルイス達も同様とのこと。この村への物資の流通は止められていて完全に自給自足の生活、隣町でさえ100km以上離れている上に道中は獣も出る為遠出は出来ない。幸い山菜の知識がある人物がいた為皆で協力して山菜を採ったり自家栽培を主に今までどうにか食いつないでいたがやはり食糧難は避けられないと村長は話す

ルカがサンドイッチで使っていたのはたまたま罠にかかって獲れた猪でこの村では非常に貴重な肉、しかもあれに使われていたのが最後の肉だった

それ程貴重な肉だったとは露ほども知らなかったイヴリスは申し訳なく感じた・・・が、それも一瞬の事で代わりとして大量の熊の肉を持ってきたのだから帳消しだろうと考えた

それはともかくイヴリスにとってこの村はようやく安息の地、それを潰そうという輩は魔獣だろうとなんだろうと捨ててはおけない。残った料理を一気に平らげて栄養補給を完了させたところでようやく動き出した



「よし、ここは私に任せておけ。夕食をご馳走になった礼にひと仕事するとしよう」


「やめるんだ!君が本当に熊の魔獣を倒していたとしても今度の相手は数が多い。危険だから娘達と一緒に家の中にいてくれ!」



どうやら両親には熊を倒したのは偶然か何かだと思われているようで村長のルイスはイヴリスを制止してきた。見た目だけでいえばイヴリスは容姿端麗な女性、傍目から見たら熊を倒すことはおろか戦いとは無縁の人物だと勘違いするのは無理もない

ルイスの制止も聞かず魔獣がいるという場所を教えてもらいそこへ向かおうとすると今度はルカから声をかけられた



「お姉ちゃん!頑張って!」


「頑張れ・・・か。ふっ、任せろ!すぐ戻ってくる!」



ルカの声援を受け取り森の方へと歩き出した。イヴリスが出れば圧倒的な勝利は確約されている、故に頑張れなどと言ってくる配下は今まで一人たりともいなかった。まさか自分に声援を送られる日が来るとは夢にも思っておらずつい笑みが溢れる

村を出るとそのまま目的地へとひとっ飛び、ものの数秒で魔獣のいる場所に辿り着くと目の前には目をギラつかせている狼のような魔獣が群れを成して向かって来ていた

数は十数匹、この程度の魔獣イヴリスには物の数にも入らない。イヴリスが考えているのは勝てるかどうかではなくこの狼達をどうしてやろうかという事

殺して肉にすれば村の食糧難も少しは緩和されるだろうが一時的なもので問題の解決にはならない。ならば戦う力がないあの村の番人役として飼い慣らし狩猟等にも役立てる方が有益だろうと考えた

イヴリスが頭を悩ませている間狼達は当然待ってるはずもなく一斉に襲いかかってきた



()()()



止まれ、その一言だけで勢いよく迫って来ていた狼達がその言葉に従うように突然ピタリと立ち止まった。イヴリスが使用したのは"呪言"という言葉に魔力を込めて放つ魔法。今のように相手の動きを止める事も出来るし込める魔力の量によっては死に至らしめる事も可能、攻撃魔法ではうっかり殺してしまうかもしれないので格下相手にはこれが一番使い勝手がいい。だがその呪言を無理やり突破してくる魔獣がいた



「グルルルル・・・・」


「一匹抜けて来る奴か、しかし力の差が分からないようでは大したことはないな」



群れの中から他の魔獣よりも一回り大きい個体が前に出てくる。イヴリスにとっては他の狼と何の違いがあるか分からないが見た目からしてその魔獣がこの群れのボスなのだろうと推測

わざわざ村から離れこちらから出向いた甲斐はあったというもの。村の人間であれば為す術もなくやられていたであろう

イヴリスと対峙すると狼の親玉は殺気を放ってきた。普通の人間であればその場で立ちすくんでしまうだろう。しかし相手は魔王、魔獣ごときの殺気では当然怯むことはない



「なんだそれは、殺気のつもりか?殺気というのはこういうのをいうんだぞ」



対抗してイヴリスも同様に殺気を狼達に放った。しかしそれは狼の親玉とは比べるのもおこがましい程の鋭い殺気、これでもかなり抑えてあった方だが直接殺気を向けられた狼達の中からは失禁するものや失神する者が続出した

親玉も同様で先程勇ましく出てきた姿はどこへやらで完全にイヴリスに屈服していた



「平伏し私に服従するというのなら慈悲をやろう。だがまだやるというのなら・・・分かっているな?」


「「キャイーン!」」



イヴリスの圧で完全に根を上げた狼達は横一列綺麗に並んで仰向けになり完全服従のポーズをして忠誠を誓った。こうして村を襲おうとする脅威は去り新たな労働力を得たイヴリスは狼達を連れて村へと帰還した







読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

GW期間中は毎日投稿しております。よろしくお願いします!

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