新たな剣作り
「いいか、ここではお前のことをサラと呼ぶからな」
「サラマンダーだからサラって魔王・・・安直すぎないか?」
無事大精霊サラマンダーと仮の段階だが契約をすることができたアリシア。人の姿になったもののイヴリスに指摘されて結局無難な黒髪の女性の姿になったサラマンダーのサラを連れて4人で村に戻って来た
しかし村に帰ってからというものアリシアは何故か浮かない顔をしている。その理由をイヴリスが聞いてみるとサラに溶かされた剣が原因だった
「ゴルドさんになんて謝りましょうか・・・」
「まぁ仕方ない、ちゃんと説明すれば分かってくれるだろう」
アリシアにそう言うもやはり気が重いようだ。作ってもらった本人からしたら受け取ってから大した月日も経たずにすぐ壊してしまったのだから申し訳ない思いともう新たに打ってもらうことは出来ないかもしれないという気持ちがあるのかもしれない
その状態のアリシアを見兼ねたイヴリスが動いた
「おい、なんとかできないのか」
「何故吾輩に振る」
「お前がアリシアの剣を溶かしたのが原因なんだから当然だろ」
「面倒だな・・・ならばこれを使ったらどうだ」
イヴリスに言われ仕方なしにとサラが取り出したのは謎の石、中まで透き通って見えていて中心では蒼く輝いている
「なんだこれ?ただの透明な石にしか見えないが」
「もしかしてこれ・・・オリハルコン鉱石ですか?」
「そう呼ばれているらしいな」
アリシアはこの石の存在を知っていた。どうやら相当希少な鉱石なのは間違いないようだ
この鉱石は剣の製作に用いる鉱石の中でも最上級のものらしく、岩をもバターのように斬ってしまう切れ味があり刃こぼれも一切しないという。アリシアが使っていた聖剣にもこの鉱石が使われているそうだ
「いいんですか?こんな貴重な鉱石を簡単に手放してしまって」
「別に構わない、吾輩には無用の長物だ。それにあの山のマグマの中を探せばそこら辺にいくらでもあるしな」
「なに?じゃあ今度それを取りに行って売り飛ばせばかなりの金に・・・」
「不純な理由で利用する奴にはやらんぞ」
何はともあれこれで多少はアリシアの気持ちも楽になるだろう。希少な鉱石を持って行けばきっと剣の事も不問にしてくれるだろうという期待を胸にゴルドの鍛冶場へと向かった
「きたぞ~」
「おぉ~・・・なんじゃイヴ殿、また何処かに出かけたと思ったらまた別嬪さんを連れてきたのか」
「後ろの奴の事は置物とでも思ってくれればいい」
「おい」
「まぁそれはそれとして今日は何の用で来たんじゃ?」
「すみませんゴルドさん、用があるのは私なんです。実は・・・」
アリシアは剣を壊してしまった事を説明し謝罪をした後、サラから貰ったオリハルコン鉱石を見せてこれでまた剣を打ってほしいと頼んだ。ゴルドは鉱石を見て一瞬目を見開いたが、すぐに我に返り何故かこちらに頭を下げて謝罪をしてきた
「そうか・・・それはスマンかったの」
「や、やめて下さい。私の力不足のせいで壊してしまったんですからゴルドさんは悪くありません」
「いや・・・儂の腕が未熟じゃからこうなったんじゃ。鉄の剣とはいえ魔工を使えておればそう簡単に壊れることはなかった。やはり儂の腕では無理だったんじゃ・・・ましてやオリハルコンなんて超希少な鉱石、それこそ魔工を使いながら打たなければ剣はおろか形すら変わらんじゃろう」
自分の力量不足にすっかり意気消沈してしまったゴルド、このままでは剣を打ってもらうことができずどうしようかと悩んでいると今まで黙って話を聞いていたサラが前に出てきた
「おいそこのドワーフ、その魔工とやらを吾輩に見せてみろ」
「何故じゃ?儂は魔工をまともに使えんと・・・」
「つべこべ言わず早くやれ」
「い、いや・・・」
断ってくるゴルドに対して無言の圧力をかけていくサラ。その圧に負けて渋々と了承、魔工用に使う道具を取り出して鉄を打ち始めた
だがいつまで経っても鉄は刀身の形にならず、それどころか途中でヒビが入り使い物にならなくなってしまった
「これで分かったじゃろう・・・儂には魔工が使えないんじゃ」
「なるほどな・・・お前のその技術、吾輩であればどうにかしてやれるぞ」
「な、なんじゃと!?それは本当か!」
落ち込んでいたゴルドはその言葉で一気に息を吹き返した。ゴルドからすれば今まで苦しんでいた問題が解決するかもしれないのだから食いついてくるのも無理はない
「吾輩の推測だが魔工というのはその道具に魔力を乗せて打つことで成り立つものなんだろう?だがお前は無意識のうちに必要魔力以下に抑えながら打ってしまっているんだ。本来お前の魔力量であれば問題なく出来るにも関わらずそれを無理矢理抑え込んでいるから失敗しているんだ」
「無意識に魔力を・・・?じゃが以前に何度も試したが完成する前にいつも魔力切れを起こしておったぞ」
「それは無理矢理抑え込んでいたことで体が誤って認識していたんだろう。普段自分で意識しているより多めに魔力を流してみろ、そうすれば上手くいくはずだぞ。どうせこれで失敗しても現状と変わらないんだ、やってみて損はないだろ」
サラに言われゴルドは半信半疑で先程よりも多めに魔力を込め同じ様に打ち始める。すると暫くして明らかに鉄を打つ音が先程までと違うことがイヴリス達にも感じ取ることができた
その違いはゴルドが一番実感したようで、今にも泣きそうな顔でこちらに飛んできた
「できた・・・できたぞ!感謝するぞ嬢ちゃん!」
「嬢ちゃんではなくサラだ。ここから上達するか貴様次第だが吾輩がわざわざ助言をしてやったんだ、半端な物を作ったら容赦しないぞ」
「あぁサラ殿、任せてくれ!必ずアリシア殿に相応しい剣に仕上げてみせる!」
「よろしくお願いしますゴルドさん」
魔工が扱えるようになったゴルドはこれまで以上のやる気を見せてアリシアの剣の製作に取り掛かり始めた
「随分と優しいところがあるじゃないか」
「勘違いするな、剣がないと鍛錬に支障が出ると思っただけだ。剣ができるまでは剣なしの方法で鍛錬するからな」
「はい、頑張ります」
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