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怒る狼

「さて、任せろと言ったはいいが私は人にものを教えるというのが苦手だからなぁ・・・そもそも剣で戦うアリシアと私とではスタイルが違うし」


「そういえば武器を持ってるところ見たことありませんね」


「武器の方が私の力に耐えられないんだ。生半可な武器じゃ持ってても邪魔になるだけだしな。さて、どうしたものか」



アリシアの頼みを了承したはいいものの、どういうやり方で強くしていくか頭を悩ませるイヴリス。あまり悠長にしていることもできないので短期間かつ急成長できるような方法を模索する

だが鍛錬という経験がないイヴリスにはその方法が思いつくことはなかった



「やっぱり時間はかかっても地道に鍛えていくしかないか。けどさっきも言った通り教えるのが上手くない、だから実戦形式でひたすら戦っていくぞ。だが生温い実戦では意味がない、多少の命の危険は覚悟してもらうがそれでもいいか?」


「勿論です、それ位しないと強くなれません」


「よしっ、じゃあ早速始めるぞ」



戦闘面において全ての能力を上回るイヴリスと戦うだけでも十分な稽古になる。人間は死の淵を体感することで自分の限界を引き上げることがあるという話があるらしいのでその効果にも期待して実戦を開始

アリシアが自ら選んだこの高さがまちまちしている切り株が連なる場所は自身が使っている"地形探査"の精度を高める目的があるらしい



「ほらっ!足元に意識を向けすぎていたらこっちの対応が疎かになるぞ!」


「くっ・・・!」



先程宣言した通りイヴリスは防戦一方のアリシアに容赦なく攻撃を叩き込んでいく。それによってアリシアの体には生傷がどんどん増えていくが、防御している間にもイヴリスの動きを捉えようと必死に抗い続ける

そんな攻防を繰り広げているところに痺れを切らし待ったをかける者が現れた



「もー!つまんなーい!」



イヴリスとアリシアが2人で特訓を続けていると突然ルインが爆発した。その叫び声に反応して両者は動きは止まる



「どうしたルイン、いきなり大声を出して」


「だって勇者ばっかりがあるじを独り占めしててずるい!ルーだってあるじと遊びたいのに!」



ルインは口を膨らませながら大好きなイヴリスがアリシアの相手ばかりしていることに不満を感じているようだった



「ルイン、これは別に遊んでるわけじゃないんだぞ」


「私も別に独占しているつもりは・・・」


「むー!うるさい!勇者!ルーと戦え!」



我慢の限界を迎えたルインはなんとアリシアに戦いに挑み始めた。突然の挑戦者登場にアワアワとし出すアリシア、イヴリスの時とは違い見た目のこともあってかルインには少し弱いところがある



「幾ら伝説の魔獣とはいえ子供を相手するというのは・・・イヴリス、貴女も止めて下さい」


「ルインがやりたいというのなら別にいいんじゃないか?色んな相手と戦った方が練習になるだろ」



イヴリスの言うことなら聞くだろうと振ってみたがルインの暴走を止めてくれることはなかった。まだ幼く手加減を知らなそうなルインの相手をするのはある意味イヴリスより大変だが、こうなってはもう抑えることは不可能



「分かりました、受けて立ちま・・・ちょっ!」



アリシアが申し入れを受けた瞬間、開始の合図も待たずにルインが攻撃を仕掛けてくる。意表を突かれた一撃だったがそれを間一髪のところでなんとか躱した

見るとルインの姿は人の姿から魔獣フェンリルの姿へと変わっていた。わざわざその姿になるということは本気で向かって来るということ。集中力を高めアリシアもルインに向かっていく



「陽炎!」



アリシアはルインを取り囲む様な形で複数の分身体を作り出した。しかしイヴリスが以前見せた様な自分の意思で動く様な分身体ではなく相手の足を止めさせ撹乱させる程度のもののよう

ルインはそれを風魔法"かまいたち"で消し飛ばす。そして一瞬でアリシア本体の背後に回り込み鋭い爪を振りかざした

それを剣で受け流すと2人の間に火花が散る。凄まじく鋭利で頑丈なフェンリルの爪による攻撃は鉄の剣程度ではそう何度も防ぐことはできない



「集中しないと殺されるぞー。まぁもし死んでも死にたてなら私が生き返らせてやるから安心しろ」


「全然安心できないんですが・・・!」



そうは言いながらもアリシアは徐々にだが戦っていくうちにルインの速さに対応出来るようになっていった。イヴリスに比べて動きが単調な分予測して攻撃を躱せていた

段々と攻撃が当たらなくなっている事に苛立ちを見せ始めたルインはアリシアを倒す為にもうなりふり構わなかった



「むー!もう怒った!暴嵐雨(テンペスター)!」



ルインが魔法を発動するとたちまち空は黒い雲で覆われ始め雷がゴロゴロと鳴り始めた。これはアリシアを救出する際にイヴリスが使った魔法と同じもの、あの時は登場の演出程度に使った生易しいものだったが本当の暴嵐雨は街一つを消してしまう位の嵐や水害が発生する

それに今のルインは怒りに身を任せていて見境がなく加減も知らない。そんなものを使われたらひとたまりもない



「おいバカッ!流石にそんな大規模なの使ったら村の人間達まで被害が及ぶだろ!」


「あっ!そうだった!ど、どうしよう!」



イヴリスに言われ我に返ったルイン、しかしその時にはもう暴嵐雨は発動寸前。イヴリスは仕方なく簒奪の魔眼でルインから支配権を奪い、力技で魔法の軌道を逸らし上空で霧散させた

だが発動直前ということもあって被害なしというわけにはいかず、森の一角が嵐で吹き飛ばされた。その吹き飛ばされた場所というのがネイチェルが野菜等を育てている場所

故意ではないとはいえやらかしてしまったイヴリス達は重い足取りでネイチェルの元へと向かった





読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は水曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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