勇者救出
アリシアが処刑される寸前で命を救ったイヴリス、人間達の視線が集まる中アリシアの奪還を高らかに宣言した。そこに国王が口を挟んでくる
「ふざけた事を抜かすな!こんな所に魔王が来るわけなかろう!おい!誰か今すぐ奴をひっ捕らえよ!」
「人の上に立つ者なら上から命令するばかりでなく自分で何とかしてみろこの偽りの王が」
仮面の奥からひと睨みしながらそう言うと国王は怯んでしまったのでそれ以上は相手にする価値もないと判断しイヴリスは再び喋り始めた
「まぁさっきので顔も割れてしまったようだしもう隠す必要はないか」
イヴリスが仮面を取り素顔を晒すと周囲は更にどよめく。先程アリシアと魔王が密会していた場面を見せられていた民衆はようやく目の前にいる人物が正真正銘の魔王だと理解した
「ほ、本物の魔王だ・・・!に、逃げろ!殺されるぞ!」
魔王だと分かった周囲の民衆は当然大混乱、皆その場から離れようと我先に逃げ去って行く
「おーおー蜘蛛の子を散らすとは正にこの事だな。無抵抗の相手に石を投げることは出来ても反撃されそうな相手には尻尾を巻いて逃げる、昔と大差ないな貴様等は」
「は、早く誰かあの化物を殺せ!殺した者には望みの物を与えてよう!」
国王が周囲にいた兵士達に命令すると兵士達はイヴリスの命を狙いに決死の覚悟で向かって来る。だがその行動はイヴリスの一声で無に帰す
「動くな」
「うぐっ・・・!」
イヴリスの呪言によって兵士達の動きはピタリと止まり身動きが出来なくなった。動きを止められたのは向かってきた兵士達だけでなく広場にいた人間全員、その光景はまるで時が止まっているようだった
「さて、さっさと勇者を連れて帰るとするか・・・おっと」
イヴリスがアリシアの元に近づこうとするとそれを阻み立ちはだかる人物が現れた
「おぉフェリックス!奴を殺してくれ!」
「なんだ、動ける奴もいたか。だがサシで私に勝てると思っているのか?」
「やってみないと分からないだろう?」
「相手をしてやってもいいが私は他にやることがあるんでな。ルイン、適当に相手してやれ」
「はーい」
男の相手はルインに任せイヴリスはそのまま拘束されているアリシアの元へと向かった。すると一番最初に雷で気を失っていた執行官が意識を取り戻したようで、アリシアに近づくイヴリスに向けて這いつくばりながら声を上げた
「無駄だぞ!魔王!その者の首に着けてある枷は隷従の首輪、その首輪を着けている以上私の命令に逆らうことはできないしこの国から出ることも出来ない!」
それで抵抗もせずに妙に大人しかったのかと合点がいった。だがイヴリスにはそんなものは関係ない
「そんなもので私が諦めると思ったか?」
イヴリスが持つ魔眼の一つ、簒奪の魔眼を使用することによって男の目の前で隷従の首輪の支配権をあっさりと奪ってやった
「なっ・・・!?」
「これで勇者は私のものになったというわけだな。ルイン、もういいぞ」
「もういいのー?」
フェリックスの相手をさせていたルインを呼び戻しアリシアを担ぎ上げる。気がかりだったのがルインを相手していた男が本気で止めようとしている感じがしなかったこと、しかし今はここを離れることを最優先にしてこの場から去ろうとする
しかし今度は救出しようとしているはずのアリシアが暴れ始めた
「離しなさい!貴女に命を拾われるのなら死んだ方がマシです」
「おいあまり暴れるな!拘束されている状態で何をしようと・・・おい!人の腕を噛むんじゃない!」
魔王と繋がっていると思われたくないのか、はたまた魔王国にでも連れてかれるとでも思っているのか必死に抵抗してくる。支配権を奪った隷従の首輪で大人しくさせることもできるが、それではより不信感を与えてしまいそうだったのでそれはしなかった
アリシアを無事救出することができたイヴリス達は王国から離れた場所まで行くと転移門を使って村へと帰還した
いきなり森の中に飛ばされたアリシアは担がれている状態からどうにか脱出、イヴリスから距離を置き辺りを見渡しながら睨みつけた
「ここは一体何処なんですか・・・私をどうするつもりですか」
「安心しろ、ここは魔王国領じゃなくてまだ人族の領域だ。今からお前を人間の村に案内するからついてこい。おっとそうだった、いつまでもそんなもの着けていたら苦しいよな」
そう言うとイヴリスはアリシアに着けられていた隷従の首輪を破壊した。首輪があればいいように従えられるというのに。アリシアは目の前の魔王の意図が読み取れず、最大限の警戒をしつつあとをついてくことにした
村に到着するとアリシアは呆気にとられた。まさか魔王に連れられてやって来た場所が人の住む村だとは思ってもいなかった
「人の皮を被って私を騙そうとしている・・・というわけじゃないようですね。寧ろ貴女があの人達を騙しているのですか?」
「正体は隠しているが騙してはいないぞ。私が魔王国から逃げた先でこの村の人間に助けてもらったからその恩を返してるだけだ。ついでに拠点として利用してる」
アリシアは目が見えなくなった後、相手の声色である程度の感情を読み取れるようになった。今のイヴリスの言葉にアリシアを騙そうという意志は感じられない
「それで私をここに連れてきてどうしろと?今の私が行っても罪人として報告されるだけですよ」
「ここにいる奴らはお前が罪人だということは知らん。ここは国に捨てられた奴の集まりみたいなものだからな」
イヴリスの言葉でアリシアは以前聞いた話を思い出す。王国の中には異種族と良好な関係を築こうと活動している者が少数ながら存在する。しかし人間至上主義な王国側がそれを許すはずもなく、表沙汰にならないようそういった人間を密かに追放していると噂程度で聞いたことがあった
この短期間で色々な事がありすぎたので頭の中を整理する時間は必要、ここはその場として利用するには丁度いいかもしれない。そう考えたアリシアはイヴリスの一挙手一投足に注意を払いながら村の中へと入ることを決めた
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