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魔王、商人に恩を売る

浴場から上がった後のマーガレットは素早かった。父ノーランドにイヴリスと話した内容を伝えるようキャロルに伝言を頼み、自身も急いで着替えを済ませ母の元へと向かった

その途中でキャロルの伝言を聞き駆けつけて来たノーランドと合流、普段から体を動かしていないのか荒々しい息遣いをしていた



「ゼェゼェ・・・イヴさん、妻の病気を治してくれるというのは本当ですか!」


「あぁ、治してやるから早く部屋に案内してくれ」


「勿論!こちらです!」



一刻も早く妻の元へと向かおうと肥えたお腹を揺らしながら懸命に走るノーランドについていきイヴリスは寝室へとやってきた

扉を開けベッドへと近づいていくと(うな)されている女性がそこにいた。すると女性は人の気配に気づいたのかゆっくりと目を開けてこちらに視線を向けてきた



「マーガレット・・・アンタ・・・」


「お母様・・・」


「カトーレア・・・」



マーガレットとノーランドが声をかけるとカトーレアは反応し体を起こそうとする。だが体に力が入らないのか起き上がることが出来ずにいた。マーガレットが言っていた通りかなりやつれていて危険な状態だということが分かった

そんなカトーレアの病名をまだ聞いていなかったイヴリスだったが、彼女を見てすぐにそれは判明した



「イヴさん、お母様の病名なんですが・・・」


「魔力欠乏症だろ?」


「えっ・・・一目見ただけで分かったんですか?」



通常魔力は魔法を使用する際に消費される。しかし魔力欠乏症は自分の意志とは関係なく徐々に失われていく病気

魔力が無くなった場合一時的な体調不良は起こるだけで少しすれば回復する。しかし魔力欠乏症になると魔力が空の状態が続く為体調がどんどん悪化していき食事まで受けつけられなくなっていく。その状態が続くと最終的に死に至る

カトーレアが魔力欠乏症だとすぐ分かったのは、イヴリスの魔力視という能力のお陰。相手の魔力の流れを見ることができる力でカトーレアの体から魔力が抜けていってるのが見えたのが原因発見の鍵となった



「マーガレットが隣町から買っていた薬も魔力を回復させる物だったんだな。だがもういつ限界を迎えてもおかしくない状態だ。急いで取り掛かるから約束した通り一時部屋から出て行ってもらうぞ」


「分かりました。イヴさん、お母様をよろしくお願いします」



事前に言っていた通り他の者には部屋から退出してもらい治療を開始する

必要とあらば完全(パーフェクト)治癒(キュア)を使うつもりだったが今回はそれを使うまでもない。魔力欠乏症を治す手段自体は単純で魔力を発病者に与えることでこの病は治る

方法だけ聞けば至って簡単に直せるように感じるが、欠乏症が治まるまでには膨大な魔力が必要となる。人一人の欠乏症を治すには人間何十人分にも及ぶ魔力を与え続けないといけない、それでいて一瞬でも魔力供給を止めてしまうとまた一からとなってしまう

しかしイヴリスであればその程度の魔力を消費したところですぐ回復できるので痛くも痒くもない



「最初の方は苦しいかもしれないが我慢しろ。いくぞ」


「うっ・・・!」



魔力を与えるには人間の核、心臓部分に手を当ててやるのが一番効率がいい。けれど一度に大量の魔力を与えてしまうと常人の場合耐えきれず内部から破裂してしまうので注意を払いながら少しずつ流し込んでいく。繊細な作業が苦手なイヴリスには神経を使う作業だったがなんとか維持し続けることができた

魔力を与え始めると始めは苦しんでいたカトーレアだったが、魔力を与えていくと徐々に顔色が良くなっていくのが分かった

魔力を流し続けることおよそ数時間、魔力視でカトーレアの体から魔力が減っていく現象が見られなくなったのを確認したイヴリスは魔力欠乏症は治まったと判断した



「終わったぞ、体の調子はどうだ?」


「嘘・・・?さっきまで辛かった体が楽になったわ・・・」



治療・・・という程の事ではないが無事にカトーレアを治す事ができた。部屋の外で待機していた2人を呼び出し中へ入らせると親子3人で抱き合い涙しながら喜び合っていたので邪魔することなくそっとその場を去り用意された自室へと戻ってその日はルインと共に眠りについた

それから一夜が明け、一応治した張本人として容態を確認しておこうと思い昨夜の部屋に行くとそこにはマーガレット、ノーランドの他に見知らぬ筋骨隆々な女性が立っていた



「あっ!イヴさんおはようございます!昨日は本当にありがとうございました!」


「イヴさんのお陰で妻はこの通りすっかり元気になったようです。本当にどうお礼をすればよいか」


「え、いやカトーレアはどこにいるんだ?」


「えっ?目の前にいますよ?」



マーガレットが指差している先にいるのは男顔負けの体格をした女性しかいない。聞き間違えでなければこの人物がカトーレアだということになる

カトーレアと思われる筋肉質な女性はイヴリスの元にやって来るの手を取り謝辞を述べてきた



「イヴさん!昨日はお礼も言えずすみませんでした!お陰様でこの通り!すっかり元通り、いや前以上に元気になりました!本当に感謝致します!」


「お、おう。それは何よりだな」



昨日まで棒切れのような状態でやつれていたのに一体どうやってこうなったのか。魔力を与えただけではこうはならないはずとイヴリスは目の前の人間を不思議な生物でも見るように眺めていた

最後は予想外の結果になったものの、無事マーガレットに続き母カトーレアの命を救ったイヴリスはリーブル商会に更なる恩を売ることに成功した




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は月曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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