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魔王、大金を得る

マーガレットの護衛を受けてから一夜が明け、早朝からホルストンの町への移動が行われた。あの後結局兵士達はイヴリスが展開した防御障壁が信用できなかったようで夜通し交代で見張りを行ったらしい

ブラック・サーペントの時は全く役に立てなかったからせめて見張りの役目くらいは果たそうとしたのだろう

山と森を抜けた後は町まで見晴らしが良く整地がされている草原、途中何度か魔獣が現れたが森の中にいる魔獣に比べて弱い部類だったのでそれは兵士達が対処した為特に大きな問題もなく順調に進んでいった。そうして日が暮れる前にはホルストンの町に到着することができた

門の前までやって来たところでイヴリスは町に入るには税を支払わなければいけない事を思い出した。面倒だが致し方なしとお金を取り出そうとしていると馬車が一時停止、キャロルが出てきて門番に何か見せると税を払うことなく通行が許可された



「これはこれはマーガレット様、おかえりなさいませ。どうぞお通り下さい」


「ありがとうございます」



マーガレットは門番に丁重に扱われながら町の中へと入っていく。お金を払わずに通れるのは兵士達やイヴリス達も同様で、マーガレットの同行者として通行が許可された為無駄金を消費せずに町の中に入ることができた



「今更だがマーガレットは貴族か何かなのか?皆から様付けで呼ばれているようだが」


「そういえばまだ教えていませんでしね。実は私リーブル商会の商会長の娘なんです」


「ほぉ、あのリーブル商会か・・・いやすまんリーブル商会ってなんだ?」



リーブル商会という名を知らず聞き返してくるイヴリスに対し、マーガレットは予想していた答えとは違っていたようで少し驚いていた



「えっ、し、知りませんか?リーブル商会ですよ?自分で言うのもあれですけどこの町で一番大きな商会なのですが・・・あ、もしかしてこの町に来るのは初めてでしたか」


「いや少し前に来たがリーブル商会とやらがどういう事をしているのかも知らん」



どうやらリーブル商会というのはこの町ではその名を知らない者はいないという程大きなお店らしい。聞くところに今回マーガレット達があの森にいたのも隣町へ商品を卸しに行ったのと別件の用事を済ませた帰りだったそうだ



「商会はボタン一つから武器まであらゆる物を取り扱っているんです。私の所に来て頂ければ求めている物全てを揃えることが出来ますよ」


「それはちょうどいい。幾つか欲しいものがあるからそれを取り揃えておいてくれないか」


「勿論いいですよ。イヴさん達は命の恩人ですので無償で差し上げます」


「いいのか?商会長の娘とはいえそんな事したら怒られるんじゃないか?」


「大丈夫です!父には私から説明しておきますから。あっ、でも次回からは支払ってもらわないと困りますけどね」



助けた相手から謝礼を貰えるだけでなく購入する予定だった物まで無償で手に入れる事が出来たイヴリスは、浮いたお金を何に使おうかと考える。パッと思い浮かんだのはルインと自身の服、ずっとルカやカミラから借りたままというわけにもいかないのでマーガレットのところで何着か買っていくことにした



「イヴさん達この後予定などありますか?直接報酬をお渡ししたいので一度屋敷まで来て頂きたいのですが」


「あぁ構わないぞ」


「あっ、そうでしたルインさんにはこれを」


「これなーにー?」



マーガレットが渡してきた布を広げてみると頭と体をスッポリと隠すことができるローブだった。町に入る前にこれを被れということらしい



「その耳と尻尾は目立ってしまうので屋敷に着くまでこれで隠して下さい。この町ではそこまでではないですがやはりよく思わない人達がいますので・・・」


「そういう事か、面倒だな人間という奴は」


「えっ?」


「あぁいやなんでもない」



この町は人当たりが良い人間が多く栄えていていい町だ。だがそういう風に思えるのは人間として扱われるからであって人外の者だとどういう扱いを受けるのか。魔王として長い間君臨していたイヴリスもそれは身をもって知っている

遥か遠い昔の話で朧気となってしまっている記憶を思い返していると馬車が止まった。荷台から顔を出して確認すると目の前には立派な屋敷がイヴリス達を出迎えてきた

屋敷の隣にはマーガレットの言っていた商会が建っている。多くの人間が荷降ろしや卸し先への荷物をせっせと運んだりと忙しそうに働いていた



「中々活気があるようだな」


「えぇ、皆父が従業員に寄り添ってその人に合った働き方を色々考えているお陰で皆父を慕って熱心に働いてくれるんです。父の築いたこの商会をもっと大きくするのが私の夢なんです」


「へぇ、正直よく分からないが目標があるというのはいいことだな。それよりも屋敷の中を案内してくれないか」



早く謝礼金が欲しいイヴリスはマーガレットを急かし屋敷の中へと向かう

護衛を務めていた兵士達とはここでお別れとなった。兵士長は去り際にイヴリスをひと睨みしてきたが敢えて気づいていないフリをして無視しておいた

キャロルが屋敷の扉を開け屋敷の中に入ると目の前で従業員の格好をした男性と身なりが整った小太りな男性で話している姿を捉えた



「おぉマーガレット、帰ってきたか」


「ただいま戻りましたお父様。無事荷物を届け終えました」



小太りの方がマーガレットの父親、商会長というだけあってもっと堅物な人間を想像していたが実際は穏やかな表情をしていてマーガレットと話している姿はとても優しそうに見えた

マーガレットとの会話が終わると父親は今度はイヴリス達に喋りかけてきた



「娘から話は聞きました、この度は娘のマーガレットを助けて頂き感謝の念に堪えません。お約束していた通り謝礼とご希望の品をご用意させて頂きます。おっと申し遅れました、私リーブル商会を営んでおりますノーランドと言います。以後お見知りおきを」


「イヴだ、こっちはルイン。こちらこそよろしく頼む」



娘を助けてもらったとはいえ商会の長とは思えない程頭を下げてくるノーランド。その後はとんとん拍子で謝礼金を頂いた

ブラック・サーペントの素材を買い取ってもらった額と合わせて貰ったのは金貨110枚、これがどれ程の金額になるのかいまいちピンと来なかったが銀貨で換算すると11000枚にもなると聞かされたイヴリスは目玉が飛び出そうになっていた

あとは品物を貰って帰るだけだったが、ノーランドとマーガレットに是非泊まって行ってくれと言われ外も暗くなりかけていたので有難くそうさせてもらうことにした




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は木曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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