魔王、従魔を紹介する
主人の元にいたいと魔王国からやってきたイヴリスのペットルインと共に一夜を過ごし朝がやって来た
今日は村人達を集めてルインの事を紹介しなくてはならない
朝御飯を食べる為にイヴリスは体を起こそうとするが思うように体が動かない。いつもより体が重たいことに気がつき顔だけを動かして見てみるとルインが抱きつく感じで体に乗っかりながら気持ちよさそうに眠っていた。モゾモゾと体を動かしているとルインが目を覚ます
「あ、あるじおはよぉ~」
「あぁおはよう。それよりも早くどいてくれ重いだろ・・・って涎で服が大変なことに!離れろ!」
「やだぁもう少しこうしてる~」
寝ぼけているルインの涎のせいで服がねっとりとしていて気持ちが悪く、しかしルインがしがみついていて着替えることができないという時間が暫く続いた。ようやく気が済んだルインを引き剝がし汚れた寝間着を脱いで着替えていく
「そういえばルインお前その姿になってから素っ裸のままだったな。それで外を出歩くのは流石にまずいからなんか適当に着せておくか」
イヴリスは着の身着のままこの村にやって来たので自分の服は持ってない。その代わりカミラから何着か借りている服があったのでそれを着せることに
下は足の長さが合わなそうだったので大きめのシャツ一枚でワンピースの様な感じにして誤魔化す
「ん~服イヤ~、ゴワゴワする~」
「我儘言うな、ほら行くぞ」
着慣れない服に不服そうな顔をするルインを放置し、汚れた服を"浄化"の魔法で綺麗にしていく。その後は朝食の時間、しかしイヴリスは勿論のこと魔獣であるルインも当然料理なんて器用なことはできない。一応調理場はあるが何をどうすればいいかも分からないので、朝食は今までと変わらずルカの自宅に行きカミラにお世話してもらうことにした
家を出てルカ宅に向けて歩き出す。普段この時間帯ならば村人達は洗濯や朝食準備をしているところだが、今朝は静かなもので外に人が出ている気配もなければ煙突から煙が出ている様子もない
きっと昨日呑んだお酒がまだ抜けていないのだろうと察した。ルカ宅へと歩いている道中、隣を歩いているルインが何か思い出した様にイヴリスに語りかけてきた
「何っ?私の服の切れ端をわざと目のつく場所に置いてきたって?」
「うんっ、こことは真逆の方に置いてきたんだ。そうすればあるじから少しでも引き離すことができるかなぁって思って」
「マリアがそんな手に引っかかるとは思えないが・・・」
単純な手ではあるが時間稼ぎ位にはなるかと考えているといつの間にかルカの自宅の前までやって来ていた。家からは唯一煙が上がっていて香ばしい匂いがイヴリス達の元まで漂ってくる
扉をノックし中からの返事を聞いて開けると調理場にはカミラが朝食の準備を行っていてルカもそれを手伝っていた
「おはようママさん、朝食を食べに来たぞ」
「おはようイヴさん、食べに来ると思って準備しておいたわ。もうすぐ出来るから待っててもらえるかしら」
カミラはイヴリスが家にやって来ると想定して既に用意してくれていた。村に来てからお世話になっているだけあっておおよその行動パターンを把握されいるようだ
テーブルを拭き食器を並べていたルカがこちらに向かって挨拶をしてくると背後にいたルインの存在に気がついた
「イヴお姉ちゃんおはよう・・・ん?後ろの子は?」
「あぁ、ほらルイン挨拶しろ」
「う、うみゅ~・・・」
背中にいたルインを前へと押し自己紹介を促す。するとイヴリスと話す時とはまるで別人の様なおどおどした様子で名を名乗った
その光景を見てイヴリスはハッとする。思えば幼い頃から箱入り娘みたいな扱いで育ててきた為、ルインは城の中にいた一部の者以外の相手と話したことがなければ外の世界を見せたこともない
それなのにこうして自分に会いたいが為にやって来た。きっと城を出るだけでもかなり勇気がいったことだろうし今も初対面の相手に緊張しているに違いない
ここは自分がとイヴリスが助け舟を出そうとする
「こいつはルインと言ってな。私の妹みたいな奴で少々人見知りだが・・・」
「可愛い~!お人形さんみたい!」
「わひゃあ!?」
説明し終えるよりも前にルカが目の前に現れたルインを見た途端飛びついた。幼い見た目だがルインの顔立ちは非常に整っていて文字通り人形の様、自分の容姿に絶対的な自身を持つイヴリスもそこは認めざるを得なかった
ルインは突然飛びかかってきたルカに驚きこそすれど満更でもない様子、ルカが暫く抱きついているとルインの着ている服に違和感があったのか離れて全体を観察しだした
「これお母さんのだよね。ルカのお洋服貸してあげる!」
「そうね、サイズも問題なさそうだし貸してあげなさい」
「えっ?えっ?あるじー!」
「良かったな。ちょっと貸してもらえ」
ルカに引っ張られ部屋へと連れていかれるルイン。仕方なくあのシャツを着させたが下着をつけていない状態であのダボダボなシャツは無防備すぎる、子供の姿とはいえ色々と目のやり場に困りそうだったからちょうどよかった
二階で楽しそうにしているルカの声を聞きながらイヴリスはカミラが出してきた茶を啜りながら待つ。皿に料理が盛られていき朝食の準備が完了したタイミングでルカとルインが階段から下りてきた
「どう?すっごく可愛いでしょ!」
「あらあら~本当可愛いわねぇ」
「いいんじゃないか、似合ってるぞ」
「ふみゅう・・・」
フリルのスカートに控えめな花柄のリボンがついたシャツ、ルイン自身はまだ服の違和感の方が勝っているようだったが素材の良さも相まってよく似合っていた
その他にも何着かルカが選んだ服を貸してもらえることに。服の問題がこれで解決したので冷めないうちに皆で朝食を頂くことにした
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