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魔王、新築を手に入れる

お酒が完成するまでの間イヴリスは村に新しい家が出来上がっていくのをただただ眺めていた。ゴーレムを出して手伝わせれば大幅に時間を短縮できるだろうが、あまり目立つ事はしないようにしているので手を出さないでいた

ゴルド達はというと特に怪我や事故も起こすことなく着々と建築作業に勤しんでいる。ゴルドが持参していた釘の数には限りがあった為、木材に突起や窪みを付けて上手い具合に填めてできるだけ釘を使わなくてもいいように工夫していた



「ふぁ~・・・今日もいい天気だなぁ」



最近よく働いただろうと自負しているイヴリスは特にやることも思いつかず日がな一日惰眠を貪ったり、カミラにクリムシューを作ってもらってはそれをまた貪ったりと暫く怠惰な生活を送っていた。その間村人達は毎日作業を行っていたが、今まで村に貢献してきたイヴリスに対して特に何か言ってくる事は無かった



「イヴお姉ちゃん遊ぼ~」


「お~、今日は何するんだ」


「またあのふわぁって空飛ぶやつやってー!あれ好きー!」



特になにもすることがないイヴリスはルカや他の子供達の遊び相手にもなりながら日々を過ごしていた

それから数週間が経過した。いつものようにゴロゴロと家で過ごしているとゴルドから呼び出しを受ける



「イヴ殿、ようやく終わったぞい」


「本当か、どれ見に行くとするか」



遂に新しい家が完成したとの報告がされたのでゴルド達が作業していた場所へと足を運んだ。空地となっていた場所にゴルドと共に赴くとそこには現在住んでいる家とは比較にならない程立派な家々が建ち並んでいた

素朴な造りではあるがこの村で暮らすには十分すぎる佇まい。なにより今までルイスの家で居候のような形で暮らしていたイヴリスには魔王国以外で初となるちゃんとした自分の住処、これで気兼ねなく生活を送ることができる



「よくやったなゴルド、お前を村に呼んで正解だったみたいだな」


「そう言ってくれると頑張った甲斐があったもんじゃ。こうして無事家を建てられたのも村の者達の助けがあってこそじゃがな」


「俺達が使う家なんだから当然の事をしただけさ。これからもよろしく頼むぜ」



そう言いながら拳を付き合わせるゴルドと村人達、どうやら共に家を造っていく過程を経てゴルドはすっかり村の一員として打ち解けたようだった

どこにいても必要とされなかった自分にようやくできた居場所、心做しかゴルドの目にうっすらと涙が浮かんでいる様に見えた



「さっ!家も完成したことだし待ちに待ったアレの出番だな!」


「おぉ!いよいよか、どうなっているか楽しみじゃな」



家が完成した時に開けると決めていたお酒、ようやく呑む時がやってきたと思うと自然と胸が躍ってくる

保管しておいた場所から酒樽を持ってきて栓を開けコップへと注いでいく。注がれたお酒の色や香りは町で出された物と遜色なし、肝心要の味を確かめる為口の中に一口含みゆっくりと味わう

甘みと酸味のバランスがしっかりととれていてお酒の香りが鼻から抜けていく。初挑戦の割には文句なしの完成度で問題なく呑むことができた。イヴリスの合格の合図と共に他の者達も酒樽に集まって来る



「よしっ、順番に注いでいくぞー」


「ジュースはこっちよー」



子供達には代わりに搾っておいたジュースを注ぎ、全員がコップを持ったことを確認すると村長であるルイスが乾杯の音頭をとった



「新たな家の完成を祝って乾杯!」


「「カンパーイ!!」」



辺りからコップを打ち合わせる音が鳴り響くのを皮切りに宴が始まった。この日に備えて考えられていた料理の数々をお酒と共に胃の中に入れていく

お酒は村の人間達にも好評だったようで一樽空くのにそう時間はかからなかった

宴は夜遅くまで続いた。今まで村でこのような催しをする余裕さえもなかった村人達はタガが外れたように盛大に羽目を外していた

そのお陰で六樽分作っておいたお酒は半分まで消費された。今日は特別な日だということで量を気にすることはなかったが、この分だと想定以上に無くなるのが早そうなので早々に追加のお酒を作ることを今日の好評ぶりを見て心に決めた

子供達が眠り大人達も酔い潰れて村に静寂が訪れた頃、イヴリスは宴をした場所から少し離れた家屋へとやって来た



「ふぃ~・・・やっぱり風呂はこうでなくちゃなぁ」



家の他にゴルドには浴場を作ってもらっていた。家にひとつずつ風呂場をつけるとなると手間や管理が増えて面倒なので一箇所に纏め誰でも入れる大衆浴場にしてもらった

村の人間達は酔い潰れている為今はイヴリスの貸し切り状態、広い浴槽で一人足を伸ばしながらお風呂に浸かる。今までルカの自宅では体の汚れを洗い流す簡単な行水だけだったが、肩まで浸かることのできる浴槽があるだけでお風呂の質は一気に上がった

欲をいえば香油などの道具も欲しいところだったが現状はこれで言うことなし。それよりも今後村に何が必要となってくるかを考えようとしたが、せっかくのお風呂場で余計な考え事をするのは質を損なうと思いそれは後日にして今は湯に浸かることに集中

ふやけた顔をしながら浴槽で寛いでいるそんなイヴリスの姿を上空から盗み見ている者がいた



読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は火曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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