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9 騒ぎ


このところ、シャーロットは一人で過ごしている。

食堂は利用していない、というか、怖くて行くことができないでいる。


ベッティの妄想を信じた一般科の生徒達から、悪口を言われる、それだけではない。

わざとぶつかられたり、水をかけられたり、足を引っかけられたりするのだ。

その度に、シャーロットの友人たちも被害を受ける。

友人たちは気にしない、と言ってくれたが、そうもいっていられない事件が起きた。

少しでも被害にあわないように、急いで食堂に行くと、人も多くなく、安心して食事を始めた。


ところが、

「シャーロットお姉さま!今日こそ一緒にお昼を食べましょう」

ベッティが絡んできたのだ。

ベッティは度々遭遇しては、一緒にご飯を食べたがる。

しかし、シャーロットをはじめ、友人たちも貴族令嬢達だ。

学園内は差別をしないことを決まりとされているが、平民がいきなり高位貴族になれなれしく近づき、一緒の席に座ることはタブー視されていた。


「ベッティ、私も私の友人たちも貴族令嬢なのよ。

いきなり一緒の席に座るなんてさせられないわ」

シャーロットが当たり前の事を言ったのだが、ベッティはまたしても騒ぎ出した。

「いつもいつもお姉さまばっかりずるいわ。

あたしだって、貴族の方とお友達になりたいのに!

紹介してくれてもいいじゃない!

どうしてあたしを差別するの?

あたしが平民出身だから?

だから貴族科にも入れてくれないし、馬車にも乗せてくれないの?」

シャーロット達はベッティの言い分に頭が痛くなってしまった。


「ねえ、あなたはシャーロットの義妹ではないのでしょう?」

「違うわ、あたしは義妹よ!」

「だって、公爵様はまだ再婚されてないでしょ?」

「あたしのお母さんが一緒に住んでるのよ!家族でしょ?だったら私は公爵令嬢じゃない!」

「再婚もしてないうえに、養子にもなってないなら赤の他人じゃないの」

シャーロットの友人たちがベッティと言い合いになってしまった。


すると、

「高慢なお貴族様の友人はやはり高慢だな!」

「かわいそうね、義理の母も認めないつもりかしら」

他の一般科の生徒たちがベッティを擁護する。


騒ぎが大きくなってしまい、シャーロット達は食堂から移動しようと動き始めた時、

ばしゃっと音がした。

「きゃ、あ、熱いっ!!」

シャーロットの横にいた友人の一人に熱いスープがかかってしまったのだ。

犯人は一般科の生徒だ、シャーロットにかけるつもりだったのだろう、誤って隣にいた友人の肩から手にかけてかかっている。

手は赤くなっている。

「早く保健室へ」

貴族科の先輩だろうか、友人を誘導してくれた。

別の貴族科の生徒が、スープをかけた一般科の生徒の手を後ろにひねり上げ、

「何をしているんだ、貴族にこんなことをしてただで済むと思っているのか!」

そう怒ってくれている。

騒ぎに職員が走ってきた。


犯人の生徒の所業に、スープをかけられた友人の両親が激怒し、学園に抗議したことで犯人の生徒は退学して多額の賠償金を払うために家族ごと鉱山へ送られたらしい。

シャーロットは全く知らない事だったのに、ベッティが

「お姉さまのせいで罪を重くされた」

などと騒いだため、それも追加され、ますますひどい噂になってしまった。


もう友人たちに迷惑をかけたくなかったシャーロットは、一人でお弁当を食べることにした。


「明日からお弁当を持っていきたいのだけど・・・」

「は?何でですか?コックに頼まないといけないじゃないですか、面倒くさいわ」


サラの後には専属メイドがつけられず、シャーロットの身の回りは手の空いているメイドが来ることになっていた。

昔からいるメイドはシャーロットの境遇を嘆いてくれたが、新しく雇われたメイドはシャーロットの事を馬鹿にしてくるのだ。

彼女たちはメルダを後妻だと勘違いしており、メルダが冷遇する態度に忖度しているのだ。


弁当を頼みたかったが、面倒だと言われてしまい、仕方なくシャーロットは厨房に向かった。

「あれ?お嬢様?どうしたんですか?」

「サラ!元気にしてる?貴女が側にいなくて寂しいわ」

「お嬢様・・・、サラはいつでもお嬢様の側に居りますから・・・、それで、どうされたのですか?」

シャーロットは久しぶりに会えたサラに状況を話した。

「何ですって!!あの女!!」

「サラ・・・」

「お嬢様、お坊ちゃまから連絡がきましたか?」

「いいえ・・・アレクサンドル様からも・・・」

「やはり・・・、お嬢様・・・サラが何とか致します」

「サラ・・・」

「さ、まずはお弁当をお願いしにまいりましょう」


「お嬢様!」

「フィル、いつもおいしい食事をありがとう」

「お嬢様が喜んでくださるなら、うれしいですよ」

「あのね、明日から学園にお弁当を持っていきたいのだけど、用意してもらえる?」

「もちろんです、楽しいお弁当にしますね」

「楽しみだわ」


「フィル、お弁当は直接、御者のジャンに渡してよ」

「あん?直接?あぁ、そういうことか、わかった」

「お嬢様、お弁当はジャンから受け取ってくださいね、それ以外の者から受け取ったものは残念ですが処分してください。難しいようならフィルに渡してください」

サラとフィルの様子に、何かを感じたシャーロットはしっかりとうなずいた。

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