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8 食堂にて


入学式から1週間、シャーロットは友達と一緒に食堂に向かっていた。

曲がり角でドンッと誰かとぶつかり、シャーロットは壁にぶつかった。

「いたっ」

「「「シャル!」」」

あわてて友人たちが駆け寄ってきた。

しかし、ぶつかった人物はそのまま立ち去ろうとしていた。

「ちょっと、人にぶつかっておいて謝罪もしないの?」

友人の一人が声をかけると、その人物は戻ってきた。

そこにいた皆が謝罪の言葉があると思っていた。


が、

「義妹を差別している奴に謝る必要があるか?」

そういってぶつかって座り込んでいるシャーロットの制服のスカートを踏み、グリグリと靴をこすりつけた。

「義妹?どういうこと?」

シャーロットは何を言われているのか、全くわからない。

ふんっと言って、その男性生徒は立ち去って行った。

残されたシャーロット達は唖然としたまま、なにもいうことができなかった。


スカートの踏まれた部分は汚れ、壁にぶつかったためにシャーロットの肩や背中はずきずきと痛んだ。

シャーロットの友人たちは保健室まで付き添った。

「皆さま、私のせいでごめんなさい、お昼が終わってしまうわ。

私にかまわず食堂に行ってちょうだい」

「何を言ってるの!こんな時に貴女を一人になんかできないわ」

「そうよ、お昼なんて1回ぐらい抜いたって、少しやせられるだけ得だわ」

「まあ、ふふふ」

優しい友人たちとの会話でシャーロットは少し気分が晴れた。


「でも、義妹を差別ってどういう意味かしら?」

「シャルには義妹なんていないのにね」

保健室で手当てをしてもらいながら、シャーロットと友人たちは首を傾げた。


「さあさ、手当はすんだわよ、お嬢様方。

まだ時間はあるから少しでも何かお腹に入れた方がいい」

保険医から促され、シャーロット達は再び食堂に向かった。


「シャル、なんか見られてない?」

「そうね、視線を感じる、何故かしら?」

シャーロット達は入学してから毎日食堂を利用しているが、こんなにじろじろと見られるのは今日が初めてだった。

こちらを見ながらひそひそとしているのは、おそらく一般科の生徒のようだ。

貴族科とは違い、制服にリボンが付いている、

ちなみに、貴族科はブローチをつけることになっている。


あまり時間がないので、軽く食べられるものを注文して空いている席を探す。

急いで食べようとすると、後ろから声をかけられた。


「シャーロットお姉さま」

振り向くと、ベッティが数人の生徒たちに囲まれながらそこにいた。

「ベッティ、何度も言ってるけど、私はあなたの姉ではないのよ?」

そういうと、ベッティは下を向き、両手で顔を覆ってしくしくと泣き始めた。

「またそうやって・・・あたしを認めてくれないのですね」

「・・・」

「ベッティ嬢から聞いた通りだな」「本当に」「こんなにひどいとは」

「元平民だからって家族と認めないなんて」


ベッティは入学式で騒ぎを起こした後、教室で泣きわめいた。

いわく、自分は公爵家の娘なのに家紋付きの馬車に乗せてもらえない。

本当なら自分も貴族科に入るはずなのに、姉に意地悪をされて一般科にされた。

ちゃんと家族として認めてもらいたいのに、義妹として認めてもらっていない。

お茶会やパーティに行きたくても、ドレスも作ってもらえない。

自分はいじめられている等々。

全く事実とは異なるが、ベッティの中ではそれが真実なのだ。


悪いことに、一般科の生徒には平民が多い。

また、下位貴族の子供たちは、裕福でないものも多い。

当然、シャーロット達の出るお茶会に出られない者も多数いる。

他の貴族から差別されることが多い身分の者が、ベッティの言葉に敏感に反応したのも仕方がないのかもしれない。


ただ、中には公爵家に関わりのある商人の子女や、伯爵以上の貴族の子女で、公爵家の内情を聞いたことがあるものも少しは存在した。

そんな生徒たちは、ベッティの言い分を信じることもなく、家に帰ってから細かく両親に報告した。

そのため、、現在はベッティの妄想話と違い、公爵家の居候が嘘をついて回っていると社交界でひそかにうわさされているのであった。



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