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24 昼食の出来事


入学式の後、一般科のクラスに行ったベッティはクラスでの自己紹介をしていた。

「あたしは、ベッティ、ベッティ゠ラーウズ、子爵家のものです」

クラスの人々はその自己紹介で、ベッティを子爵令嬢だと認識した。


昼になり、シャーロットは食堂へと友人たちとやってきた。

「すごい人ね」

「慣れるまでは、早い時間に来た方がいいかもしれないわね」

入学式の日でもあり、新入生たちがうろついている。


「シャーロット!」

フリッツが人込みをかきわけるようにこちらへ近寄ってきた。

「お兄様」

「しばらくはこんな状態になってしまうから、心配していたんだ。

場所を確保しているからこちらへおいで。もちろん皆さんもどうぞ」

そう言ってシャーロット達を連れて2階に上がっていった。


「ここは?」

「高位貴族しか利用できない場所なんだ。

まあ、先に予約をしておけば混雑しないでゆっくり昼がとれる」

「お兄様が予約してくださっていたの?」

「うん、しばらくは食堂は混むと知っているからね。

明日からもここは予約してあるから、皆で利用するといい」

「ありがとう、お兄様」

シャーロットの友達たちもフリッツの配慮に口々にお礼を伝えた。


ゆっくりと昼食を済ませ、シャーロット達が1階に降りていくと、目の前にベッティが立っていた。

「シャーロット様、お久しぶりです」

ニコニコと笑いながらシャーロットの手を取ろうとする。

シャーロットは一歩後ろに下がり、ベッティがつかむのを避けた。

そのまま、友人たちと立ち去ろうとすると、

「ひどいわ、久しぶりに会えてうれしかったのに・・・」

そう言ってベッティは両手で顔を覆って泣き始めた。


周囲の人々は何事か?とこちらを窺っている。

「どうしたらいいのかしら?」「いきなり泣き出したわ」

「いきなり声をかけてきて、手を取ろうだなんて、失礼だわ」

シャーロットの友人たちは困惑したり、怒ったりしていた。


一般的に高位貴族から声をかけられない限り、下の者から声をかけるのは無礼なふるまいに当たる。

ましてや、許しも得ないで貴族令嬢に触れることも許される行為ではない。


「行きましょう」

シャーロットがそう言ってベッティを放置したまま移動しようとした時、ベッティがいきなりシャーロットの制服の腕をつかんだ。

「!!」

「待ってよ、どうして無視するの?あたしたち、親戚でしょ?

せっかく同じ学校に入学したのだから、また仲良くしましょう、ね、おねえさま」


シャーロットが返事をしようとした時、フリッツとグリーが現れ、ベッティの手を払い落とした。

「痛いわ、ひどいじゃない」

「わめくな、グリー、連れて行ってくれ」

「な!あたしはただ前みたいに仲良くお話したいだけよ。フリッツ兄さま!」

「ベッティ、何度も言っているが、お前に兄と呼ばれるのは非常に迷惑だ」

「そんな、ひどいわ」

「何もひどくない、お前は子爵家に面倒を見てもらっているだけで、私たちの親戚でも何でもない」


ベッティが大声でひどいひどい、と叫ぶため、フリッツの声も次第に大きくなっている。


「あの子、子爵家のモノって言ってなかった?」

「どういうこと?」

「どうしてマルクス公爵家のお二人に絡んでいるの?」

「高位貴族にいきなり声をかけて触れようとしたみたいだ」

「入学前に学ばなかったのか?」


周囲も混乱し、ざわめきが大きくなっている。


「何事だ」

その声にざわめきが収まった。

第2王子アレクサンドルだ。


挨拶をしようとする貴族科の生徒たちを、

「ここは学園だ、そのような礼は不要だ」 そう言って止めた。


「フリッツ、何事だ?」

「はい、お騒がせして申し訳ありません。

こちらの一般科の生徒が、いきなりシャーロットに声をかけて、腕をつかみましたので、注意しておりました」

「フム、ロティ・・・ごほごほ、シャーロット嬢に?いきなり?」

つい、愛称で呼ぼうとして、フリッツに軽くにらまれた。

「あたしは、シャーロットおねえさまとまた仲良くお話したかっただけなんですぅ」

ベッティがアレクサンドルに話しかける。


「誰がお前に話すことを許可した?」

「へ?」

「ここは学園ではあるが、社交界の縮図でもある。その態度は王族に対して不敬である」

「王族?って王子様??」

ベッティが驚きのまま大声で叫んだ。


一般科の新入生たちも、初めて王族を見た人が多く、驚いている。


「で?この生徒は何者だ?」

「はい、彼女はロバート゠ラーウズ子爵の後妻の連れ子です。養子縁組はしておりません」

「ロバート・・・騎士団副団長か、フリッツ、お前の叔父だったな」

「そうです」

「養子縁組をしていない、ということは、身分は平民だな」

「そうなりますね」

「そんなっ、あたしは「同じことを何度も言わせるな、お前の発言を許してはいない」」

アレクサンドルに鋭く指摘され、ベッティは青くなって口を閉じた。


「まあ良い、今日は入学式、分をわきまえない者も多少は出てしまうかもしれん。

そのまま一般科の教師に引き渡せ。学園長には報告しておくように」

アレクサンドルはそう言って場を収めた。


ベッティはグリーによって一般科の教師に引き渡された。

当然、かなり厳しく叱られ、反省文を書くことになってしまった。


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