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2 夢が現実に起こる


「フリッツ!!」

屋敷に入るなり、大声で自分を呼び止める声にフリッツは観念して振り返った。

「あの、今朝は、その今朝の出来事は、あの・・・」

もごもごと話すフリッツに近付いてきたのは叔父のロバートだ。


殴られる!と肩を竦め目をつぶったフリッツの両肩をがしっと掴んだロバートの口から出たのは

罵倒の言葉ではなかった。


「フリッツ、ありがとうフリッツ。お前の助言が無かったら俺は死んでたよ。

本当にありがとう。騎士団の他の奴らもお前に感謝していたよ」

「へ?」

殴られる主を支えようと待機していたグリーの間抜けな声が聞こえた。


「あの、叔父上?」

「いや~騎士団の極秘任務の情報が漏れていたなんて、恥ずかしいよ。

実はさ、今回の任務は盗賊団のアジトが判明したので、そこを急襲して一網打尽を狙っていたんだがな。まさか、情報が洩れていて、騎士団の後ろから襲い掛かる計画をされていたなんてな」

いや~まいったまいったと笑いながらフリッツの両肩をバンバン叩いてくる。


「あの、叔父上、情報を流した者は?」

「あぁ、今調査中なんだが」

「では騎士団にいる下女のレタと、食品を配達してくる男をお調べください」

「何?」

「ああ、でもレタは単におしゃべりなだけで男に気に入ってもらいたかっただけでしょうが」

「なんでそんな事・・・いや、フリッツお前を信じるよ。また後でゆっくり礼をさせてくれ」

ロバートはそう言って走っていった。



「フリッツ様・・・」

「あぁ、怒られなくてよかった」

「いやそうではなくてですね、何故情報を流した者がわかったんですか?、あ、夢で見たというのはもうわかっておりますから」

「えっと、叔父上が亡くなった時、あ、夢の中でな、その後の調査で判明したんだ」

「これがまた当たれば、いよいよ夢だと言えなくなりますね」

「あぁ」


その後、ロバートから伝令が届き、一言 感謝 と書かれていた手紙を見て、フリッツとグリーは顔を見合わせることになるのであった


「フリッツ、話がある」

帰宅した父から呼ばれ、フリッツは執務室へ向かった。


「今朝の事だが」

「はい」

「ロバートを始め騎士団から感謝された」

「叔父上から聞きました、間に合ってよかったです」

「どうしてわかった?騎士団の情報が洩れていて、あやうく急襲されるところだったことを」

「え~っと・・・その、驚かずに聞いてください。夢を見たのです」

何言ってんだ?という戸惑いが執務室に漂っている。

家令であるセバスティアンも同様である。


「すみません、あまりにもリアルな夢だったので、自分でも未来を変えなければと、今朝は他に何も考えられなくなってしまって・・・」

「いや、だが、騎士団の事は実際に起こったな」

「はい、自分でも驚いています」

「情報漏洩者も既に拘束されたと聞いた。それもお前か?」

「はい、叔父上にお知らせしました」

「いよいよ単なる夢とは言えない」


う~んと両腕を組んだままゼルマンは唸っている。

「失礼ですが、旦那様。バロウズ医師の事、お嬢様への今朝の行動をうかがってみては?」

セバスティアンに言われてゼルマンが話すように促してきた。


「バロウズ医師は、医師としての勉強をしていません」

「何?どういうことだ?

あいつは専属医師として日々精進しているといっているが・・」

「昔は治らなかった病気も新薬の登場や新しい医療技術によって治るようになってきていますよね。

でも彼は、代々我が家の専属医師として安泰だったからか、新しい技術を学ぶ事もしていません。

医学書も更新していないでしょう。

ですから、最新の薬も、新たな病も全く知らないのです」

「・・・」

「母上は今お元気なように見えていますが、実は病にかかり始めているのです。

バロウズ医師に診てもらっているために手遅れになり、やがて…お亡くなりになってしまわれて・・・。

手遅れになるはずのない、特効薬も開発されている病気だったのに・・・」

最後の方は少し涙声が混じってしまったようだ。

夢での出来事とはいえ、母親を亡くした気分を味わったのだから仕方がないのだろう。


「フリッツ、夢の、と言っていいかわからないが、お前の知っていることを、いや、お前が見てきたことを話してくれ。ロバートの件のように変えられる可能性があるなら変えてしまおう」

長くなりますよ、といってフリッツは話し始めた。



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