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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第98章

 こうして、長い一夜が明け・・・理沙は、朝食後、中学校へ登校し、良作とのしばしの別れとなった。


 (理沙ちゃん、あまり美絵子ちゃんのこと、良く思っていないのかもしれないな。『あっちへ行って!』なんて、寝言で言ってたもんなぁ・・・。かつては、親友だったのに。正直、理沙ちゃん、僕のことも、本音では、どう思ってくれているんだろうか・・・? これじゃ、ますます、ここの誰にも美絵子ちゃんとのこと、ひと言だって話すわけにはいかないや・・・。)


 そんなことを考えながら良作は、理沙の両親に朝の挨拶をし、朝食を理沙も含めた彼らと済ませると、理沙を見送った後、すぐに農作業に入るものと考え、作業着に着替えようとしていたのだった。


 すると、部屋のドアをノックし、理沙の父、健一氏が入ってきた。


 「・・・良作君よお、すまんけど、今日の作業は中止なんだわ。まだ大型機械の修理が済んでなくてなぁ。だから、今日は、まだゆっくりしててくれや。」


 「そうなんですか・・・? 僕はもう、やる気まんまんでスタンバッていましたけど・・・。」


 「たぶん、今日中には、修理終わると思うんだわ。で、明日から、その大型機械に俺らと乗って、いっしょにジャガイモの収穫作業を手伝ってもらうことになるべさ。一日中、立ちっぱなしの仕事になっから、最初のうちはキツイかもな。」


 「はい。がんばりますよ、僕。足手まといにならないように。」


 「うん。ありがとさん。でな、良作君。士幌町にある『コミセン』で事前説明されたと思うけど、ここでの作業は、『ゆい』って言ってなぁ・・・近隣の農家どうしが、お金出し合って、収穫のための大型機械を共同で借りてな、それを順繰り順繰り、今日はあそこの家の畑、今日はこっちの家の畑・・・って感じで、毎日、日替わりで収穫して回るんさ。なにしろ、あんな何千万もする機械・・・個人で買えるような家なんて、ねえべさ。」


 「そうなんですね・・・。」


 「そう。だから、俺たちも、その他のチーム組んでる農家の人も、みんな仲良く、お互いの畑を共同管理して、収穫し合ってるって構図なわけさ。でな、良作君・・・その作業ってのはよ、文字通り、『朝は暗いうちから』始まってな、夜は『真っ暗になっても』、照明で畑を照らしながら、遅くまで作業するんさ。慣れるまでけっこうキツイど、これは・・・。」


 「そうなんですね。わかりました。でも、僕、平気です。学校でも、不慣れな農作業、自分なりにがんばってきましたから・・・。」


 「おう、その意気だ! 大丈夫。できなくたって、俺は、良作君を怒鳴ったりしねえから。一生懸命やってくれればな。」


 「はい! がんばります!」


 「ありがとな。・・・ところで、良作君よ。ちいとばかし、話しねえか・・・理沙のことでよ。それが終わったら、ゆっくり休んでいいからさ。」


 「ええ。わかりました。」


 「夕子は、もうすぐ、集落の打ち合わせに出かけっから、そしたら、リビングで話そうや。」


 こうして、良作と理沙の父の健一氏は、理沙に関する重要な話を、これまでの打ち解けた雰囲気とは違った、まじめで神妙な面持ちで語り合うのだった。

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