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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第83章

 「良作君・・・良作君なのね?」


 「美絵子・・・ちゃん・・・」


 「・・・いま、靴を履くから、待ってて。」


 美絵子はそう言うと、靴を履き、玄関先に立っている良作のところへ・・・。


 美絵子の身長は、もう、良作と変わらないくらい伸びていた。


 そして、はじめて会った、あの日・・・校庭での記念撮影で見せてくれた、天使のような笑顔も、当時そのままだった。


 美絵子の声は、昔の可愛いトーンの面影を残しつつ・・・大人の女性の雰囲気を持つ、魅力的な美声に変わっていた。


 「良作君・・・本当に久しぶりね。最後に会ってから、何年になるの・・・?」


 「・・・7年。7年だよ。」


 そして二人は、しばし無言で見つめあう。


 良作の胸に・・・そして、成長した美絵子の胸に去来きょらいしたものは、出会ってから別れるまでの、大切な想い出の数々・・・そして、最後に会った、あの日からの、長くつらい、試練の日々だった。


 「良作君・・・会いたかった!」


 美絵子はそう言うと、飛び込むように良作に思い切り抱きついた。


 「・・・美絵子ちゃん。」


 良作も、そんな愛しい美絵子を、両腕でしっかりと抱きとめた。


 「美絵子ちゃん・・・大きくなったね。そして、僕らが会ってたときより、もっともっときれいになったね。」


 「良作君だって・・・とってもたくましくなったわ。すごく、男らしく、力強く・・・。」


 良作は、そんな美絵子の長い髪を、いとおしそうに、優しくなでた。


 美絵子も、良作に甘えるように、彼の胸に顔をうずめ、そして、愛する良作の顔に、何度も何度もほおずりした。


 「美絵子ちゃん・・・とっても、いい匂いがする。あの頃とおんなじ、サクランボの甘い香りだ・・・。」


 「良作君だって、新緑のような、とってもいい匂いよ。昔とちっとも変わらない。お父さんと・・・そして、理沙ちゃんと同じ香りよ・・・。」


 良作は、驚いた。


 自分と理沙・・・そして、美絵子の父が、同じ香りだったとは・・・!

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