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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第74章

 新たな決意を胸に、前を向いて歩き始めた良作。


 そしてまた時は流れ・・・彼は、高校一年生になっていた。


 良作を取り巻く「人間模様にんげんもよう」が大きく変化する中、彼の母校であるK小学校も、大きく様変わりしつつあった。


 長らく、地主と市の間でもめていた問題のため、中断していた新校舎の建設工事が前年、ようやく前進し・・この年、つまり、1986年7月にめでたく、完成の日を迎えた。


 良作が完成からしばらくしてから見に行ってみると・・・白亜はくあの洋館のような、近代的で清潔感あふれる、見事な建物が、かつて、荒れ野で一面草ぼうぼうだった敷地に、悠然ゆうぜんとそびえ立ち、その威容いようを誇っていた。


 (こんなきれいで、立派な校舎で学べる後輩たちは、本当に恵まれているなぁ・・・俺たちの校舎は、雨漏りも床のきしみもすごかったもんな・・・。)


 良作は、かつて自分が美絵子や理沙と仲良く過ごした学びにも、目を向けてみた。


 遠くから眺めてみても・・・こうしてじっくりと見てみると、百年以上の風雨にさらされた校舎の傷みが、手に取るように分かる。


 明治の世から、昭和の今の今まで・・・多くの在校生を見守り、雨の日も風の日も守ってくれて、巣立ち行く卒業生たちを優しく送り出してくれた、あたたかく、親しみと思い出がいっぱいの校舎も・・・あとわずかな期間で、良作たちの前から、静かに姿を消してゆくのだ。


 良作は、このなつかしい学び舎が取り壊される当日は、何が何でもここに来よう・・・そして自分が、その最後の「晴れ姿」を見届けよう・・・そう誓って、家路に着いたのであった。

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