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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第65章

 いつしか年月は流れ・・・良作は、中学三年生になっていた。


 K小学校を卒業したのちも、良作と田中理沙の関係は続いていた。


 良作は、中学に入ってからも、宿題を教えに理沙の家を訪れたり、逆に理沙が良作の家に遊びに来たりして・・・それはまるで、本当の恋人のような蜜月みつげつの日々であった。


 しかし理沙は、あくまでも、美絵子と良作が再会できるまでの「補佐役ほさやく」「代役だいやく」に徹し、決して、本物の恋人以上の関係は求めなかった。


 それでも理沙は幸せであった。


 良作といっしょにいるだけで心が癒され・・・悩みも悲しみも、何もかもが吹き飛んでしまうような不思議な気分になるのだ。


 理沙にとって良作と見る風景は、まるで別世界にいるような、夢のようにおだやかで心地よい世界だった。


 (きっと・・・美絵子ちゃんが見ていた風景って、これだったのね。いま・・・あたしとっても幸せ・・・良ちゃんとこうしているだけで楽しい・・・うれしい・・・)


 そんな理沙も、父の都合で北海道の父の実家に引っ越すことになった。


 彼女は小学五年・・・しくも、良作が校庭で美絵子となれそめたあの日・・・そのすぐそばで、美絵子と良作の二人の様子を見ていたとき・・・あの日の良作と同い年になっていた。


 別れの朝、良作は理沙が出発する直前に二人だけで会い、そして・・・二人は、生まれて初めてキスをした。


 (美絵子ちゃん、ごめんね。でもあたし・・・今日までがんばって、あなたの愛する良ちゃんを支え続けたわ。だからキスぐらい・・・キスぐらいしたっていいでしょ・・・? 許して・・・ね。いいでしょ・・・?)


 理沙の引越し先は、北海道の上士幌町かみしほろちょうという、ジャガイモやテンサイなどの農作物の生産が盛んな農業地帯だった。


 良作は・・・いつか会いに行くと約束して・・・いつまでも名残惜しそうにしている理沙をもう一度抱きしめ・・・後ろ髪ひかれるような、淋しげな理沙を見送った。

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