第48章
この年のお彼岸・・・つまり、1982年9月23日は「秋分の日」で休日だった。
この日、鈴木先生と一番ゆかりのあった、現2年生の間で、ひとつの「バス旅行」が計画された。
世話になった先生のために、先生にあてた「手紙」を、この日のために2年生全員が、それぞれ、思い思いに一生懸命したため、先生のご自宅に直接児童自身の手で届けるためだった。
そして、先生の眠る「D寺」の墓地におまいりし、あの優しかった先生に「再会」するためでもあった。
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秋分の日の前日、良作は、放課後に校長室に呼び出された。
ノックして入室すると、新校長の中野先生は、自ら良作のために、紅茶を淹れ、用意していたお茶菓子まで出してくれた。
くつろいだ様子の先生は・・・お茶菓子を良作に勧めると、自分もせんべいをかじりながら、良作に話しかけた。
「・・・良作君。鈴木先生から、君の事はいろいろ聞いていたよ。彼女はね、私の教え子だったんだ。とても素直で明るくて、友達にも優しい子でね・・・誰からも好かれていた。最後に勤務したA小学校は、彼女自身の母校でもあったんだよ。」
良作は、そう言って、遠くを見つめるような、なつかしい想い出にひたる校長のまなざしに・・・自分に向けてくれた、あの鈴木先生の深い愛情を込めた、優しい「面影」を見たような気がした。
「よし子君はね・・・私の自慢の教え子だった。どこへ出しても、恥ずかしくない立派な子だったよ。彼女が私と同じ『教師』になると聞いたときは・・・まさに「天職」と感じたものだ。きっと、これからよし子君が出会う子供たち全員を、幸せな人生に導いていってくれるに違いない、と思ってね。」
良作は、校長先生の話で、ふたたび鈴木先生の人格の素晴らしさを知るとともに、そんな素敵な教師とめぐり会わせてくれたことを、あらためて神に感謝した。
・・・自分は、なんて幸運だったんだ、と。




