第43章
良作が体育館の玄関前に立つと、「七夕祭り」のために集まった児童たちの、ガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきた。
靴を脱ぎ、靴下のまま館内に入った良作が目にしたものは・・・昨年同様、あちらこちらに立てかけられた、願い事の短冊をたくさんぶら下げた笹の数々と・・・それを思い思いに眺める児童たち・・・見守る教師たちの姿だった。
良作が歩を進めると・・・彼に気づいたクラスメートが、いっせいに駆け寄ってきた。
「高田君じゃないか!・・・もう、体のほうは大丈夫なのか・・・?」
「高田さん、あたしたち、すっごく心配しちゃったのよ!」
「よく来てくれたなぁ・・・みんな待ってたんだぜ!」
(これは・・・!)
良作には信じられなかった。
これまで・・・六年生になった今日の今日まで、一度もこんな優しい、あたたかい言葉をクラスメートたちからもらったことはなかったからだ。
「給食のおにいちゃああああん!」
良作を見つけた、新一年生たちも、いっせいに駆け寄ってきた。
・・・中には、泣きながら良作に抱きついてきた子もいる。
「おにいちゃん・・・おにいちゃん、もうだいじょうぶなのぉ・・・?」
「また、あそんでよぉ。」
「おにいちゃん、だあいすき!」
良作は、こらえきれずに泣いた。
「みんな・・・みんな、ありがとう。あり・・・がとう。」




