第37章
・・・どのくらいの時間がたったのだろう?
良作は、自分が倒れこんだ校門近くの地面に、顔半分と左腕をつく形で目覚めた。
顔と左手の甲にくい込んだ校庭の砂粒が痛い・・・。
彼は、それらを払い落とすと、まだ痛む頭をゆっくりと回し、あたりを見回してみた。
・・・しかし、校庭には、良作のほか、誰もいなかった。
そればかりか、校舎の中にも、人の気配が感じられない。
(・・・これは・・・いったい、どういうことなんだ?)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
良作は、倒れこんでから、遠のく意識のそとで、駆け寄るクラスメートや新しい担任の、彼を心配する声をたしかに聞いていた。
・・・遠く聞こえる、救急車のサイレンの音さえも。
しかし・・・彼の周りはまったくの「空虚」であった。
誰の気配も感じられないのだ。
言い知れぬ不安に襲われながらも良作は、ともかく、自分を取り巻く、この不気味な状況から一刻も早く抜け出したかった。
そして、ふらつきながら、校門を出て、いつも使う通学路にさまよい出たのである。
そこで良作が眼にしたものは・・・あのなつかしい少女の「後ろ姿」であった。




