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第33章
小雨に煙る、K小学校の木造校舎のたたずまいが、遠くかすむ山並みを背景に、ぼんやりと朝もやの中に浮かびあがる。
・・・本格的な梅雨の季節の到来だ。
じめじめとした校舎内の空気は、ただでさえ不安な良作の心を、いっこうに落ち着かせる気配を見せなかった。
築100猶予年にもなる、歴史あるこの小学校も、年を追うごとに、その肉体である校舎に、さらなる痛みを増していった。
瓦屋根にもあちこち隙間ができ、小雨でもいたるところに雨漏りがみられている。
あと数年もすれば、歴史あるこの校舎も、取り壊しの憂き目にあう運命になることだろう。
実際、体育館の東の土地がすでに「用地売買」され、新校舎建設のための地盤調査に訪れるヘルメットをかぶった作業服の役所の職員が、学校付近にたびたび姿を見せるようになっていた。
良作は、傘をさしたヘルメット男たちが、忙しそうに体育館周辺を動き回るさまをぼんやりと眺めながら、唯一の自分の居場所である「図書室」に向かう。
・・・そこには、彼が数ヶ月ぶりに目にする、あの大山少年の姿があった。




