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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第31章

 初夏の晴れた日のこと。


 この日良作は、美絵子との「なれそめの日」から、ちょうど一年たったことに気づいた。


 初めて美絵子にアプローチした、あの鉄棒エリアには、つい最近まで良作と休み時間を過ごしていた新一年生のグループが、美絵子と「入れ替わるように」、彼女があの日いた空間を占拠せんきょしていた。


 美絵子の友人だった女の子のグループも、去年自分たちがいたエリアから締めだされる形で、もっと南の鉄棒エリアに追いやられていた。


 ・・・遊び場所にさえ、「世代交代の波」は確実に押し寄せていた。


 良作は、自分から離れていった彼らが「良作なしでも」自然に楽しくたわむれる姿を見て、もはやこのエリアに自分の居場所が無いことを悟った・・・。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 自分の配膳担当の日の給食時になると、良作は再び一年生の教室へ・・・そこにはまた、良作を慕う、新一年生が発する「給食のお兄ちゃん」の呼び名がこだまする。


 休み時間に良作から離れていった彼らも、給食時「だけ」は、以前と変わらぬ様子で良作にじゃれてくる。


 しかし良作は、そんな彼らの、一見すると「現金げんきん」とも取れる態度に幻滅することもなく、これまでどおり優しく明るく接していた。


 ・・・良作も「成長」したのだ。


 かつて、自分への「無上の愛」を見せてくれた美絵子を、容赦なく突き放したという罪悪感が、自分を「見捨てた」彼らにも慈悲深く優しくあろう・・・そうした、以前よりももっと高い次元の心を彼に身に付けさせた・・・そんな解釈もできる。


 それはもちろん、まだ幼い新一年生が、「打算ださん」とか「損得そんとく」といった寒々(さむざむ)しい概念でもって良作と付き合ったわけではないことを、彼自身が十分理解していたからでもあったが・・・。

 

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