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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第16章

 学芸会の翌日のこと。


 体調不良の治らないまま、良作は無理を押して登校した。もちろん、愛しの美絵子に会うためだ。


 休み時間は、午前中の「中休なかやすみ」と、昼食後の「昼休み」があるが、その「中休み」に事件は起きた。


 隣の四年生の教室が、なにやらさわがしい。


 良作が何気なく中をのぞくと、あの大山茂晴が皆に囲まれてからかわれている。


 ・・・見ると、小便をもらした大山が、青い顔で突っ立っており、女子数人が大山のれたズボンを指差してゲラゲラ笑っているではないか・・・!


 「しげちゃん、みっともねえよなあ、四年生にもなっておもらししてよお!」


 「大山! 何回教室汚せば気が済むんだい? ちっとは掃除する身にもなってみろよ!!」


 心無こころないクラスメートの男子の言葉が、うなだれる大山の心に突き刺さる。


 良作は、大山にかつて貴重な情報を教えてもらった恩義がある。それ以来、会話こそなかったが、お互い似たような境遇きょうぐうで苦労している同志として、敬意を抱く関係だった。


 本来ならば、


 「おまえら、恥ずかしくないのか・・・? 彼は生まれつきこういう体なんだ。自分でこう、からかわれたら、どんな気持ちする!?」


 と四年生を一喝いっかつするところだが・・・この日の良作は違った。


 体調不良は仕方ないとしても、なぜか大山を弁護するという感情がかなかったのだ。


 彼はその様子を目の当たりにしながら、あとからガヤガヤとヤジ馬のごとく集まってきてヒソヒソささやき、あるいは嘲笑ちょうしょうする連中を尻目に、その場から逃げ出した。


 良作は、大山を「見殺しにした」罪悪感にさいなまれながらも、かわいそうな大山のところには、ついに戻らなかった。


 そして、暗い気持ちで夢遊病者むゆうびょうしゃのように、その足で鉄棒エリアで待つ美絵子のところへ向かったのである。

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