最終章
「・・・良作君、おぼえてる? 私たちが初めて会った日のこと。校庭で記念撮影したときのことを・・・私、あのときの良作君の、キラキラと輝く瞳と、やさしいまなざしが忘れられないわ。」
「ああ。もちろん、おぼえているさ。あのときの、美絵子ちゃんの天使のような笑顔は・・・とっても素敵だったよ。本当に、かわいかった・・・。」
「雨の日の図書室で、良作君と並んで座って、絵本を読んだことを思い出すわ・・・良作君、私たち、いっしょに声を出して、物語を朗読したわよね・・・。気持ちを込めて、読んでくれた、良作君・・・主人公になりきって読んでくれたから、私も良作君に負けずに、ヒロインになりきって、夢中で声を出していたっけ・・・。」
・・・それはまさしく、良作と美絵子の「最後の対話」であった。
ふたりが共有した、あの想い出・・・そして、あの想い出・・・。
これは、ふたりにとって・・・かけがえのない、大切な大切な、「時を結ぶメモリー」。
やがて、美絵子の文字は、だんだんと間隔が空いてゆき・・・ところどころ、文字がにじんで読めなくなっていった。
・・・涙だ!
そして、手紙の最後のほうの文字は、だんだんと漢字からひらがなに変わってゆき・・・インクに涙がにじみ・・・やがて、大きな青い泉のような形で手紙は終わっていた。
「美絵子ちゃん、ありがとう・・・。君がくれた最後のメッセージ・・・僕は、たしかに受け取ったよ! 僕は・・・僕は、ずっと君を忘れない。君との想い出は・・・僕たちの・・・僕たちふたりだけの、大切な大切な『たからもの』だもんね・・・。」
そして良作は、封筒に入った、あの日の美絵子の写真・・・最後に会った、美しく成長した美絵子の愛しい愛しい姿をじっと見つめ・・・ベランダに出た。
・・・きれいな秋の夜空だった。
満天の星ぼしの中に、ひときわ輝く星がひとつ。
あれはきっと、功さんの星。
そして、その力強い星に見守られながら、そのそばで、仲良く輝くふたつの星・・・。
寄り添うように・・・ぴったりと寄り添うように、輝く、ふたつの星・・・。
良作は、そのふたつの星を見つめながら、また、美絵子との想い出の数々・・・そして、愛しい愛しい、あの天使のような笑顔の数々を思い出す。
そして彼は、そのかけがえのない大切な想い出たちを胸に、明日から、新しい人生の第一歩を、愛する美絵子と共に、力強く前へ踏み出してゆくことだろう。
良作は、幸福である。
いま、限りない幸福感に包まれている。
誰が何と言おうと・・・。
~ 完 ~




