第120章
そして良作は、小さな指輪入れも、良子にうながされるまま、開けてみた。
すると、ふたつのプラチナ製の指輪が出てきた。
リングの輪の内側を見てみると・・・それぞれローマ字で、「ISAO」、「TOKIKO」の文字が・・・。
「良子さん、これは・・・!」
「良作さん、よかったら、その手紙も開けて読んでみてくれないかしら・・・?」
良作が、渡された封筒の裏側を見ると・・・そこには、「峯岸功」・・・すなわち、「イサオ氏」の送り名が書いてあった。
(そうか・・・。イサオさんの『イサオ』って、この漢字だったのか。)
「ねえ、良作さん。本当にずうずうしいようだけれど・・・その手紙、開けて私に、良作さんが朗読してくださらない? 私も、功さんの、あなたへの最後のメッセージを知りたいの。私が先に読んでしまっては良作さんに失礼になると思って、ずっと封を切らずに、良作さんが来るのを、私も待ちわびていたのよ。」
「・・・はい。わかりました。」
良作は、その手紙が入った封筒を、良子から借りたハサミで丁寧に上部を切り取り、中におさめられた、良作宛の手紙を、ゆっくりと朗読した。