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第109章
手紙を読み終えた良作は、放心状態で、大きなためいきとともに、目を閉じ、両手で顔を覆って、椅子に腰掛けたまま動けなくなった。
やがて夜になり、彼の自室も、しだいに暗闇に包まれていった。
(美絵子ちゃんが・・・美絵子ちゃんが・・・死んだ!?)
あのつらい別れから、7年もの長き暗闇の期間を経て、ようやく前方に見えてきた「美絵子」というまばゆい光は、またにぶい輝きになり・・・この部屋に満ちる漆黒の闇のごとく、ついに良作の前から、その姿を消してしまった。
とつぜん目の前に突きつけられた厳しい現実に、またも容赦なく叩きのめされた彼は、朝までその姿勢で固まってしまった。
良作は、いま、自室の机の前だ。
一年間の、つらい寮生活から解放され、自宅から車で大学校に通う毎日であった。
彼が、机を前にして寝入り、自分の母に肩をゆすられて起こされたとき・・・すでに日は高く昇り、部屋はまばゆい光に満ちていた。
そう。かつての美絵子のように・・・。




