表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『たからもの』  作者: サファイアの涙
104/126

第103章

 「・・・良作君、ひさしぶり。」


 里香は、よそゆきの、シックなスーツ姿で、たたずんでいた。


 「里香ちゃん! ・・・ひさしぶりだなぁ・・・。元気だったかい?」


 「うん。ご覧の通り、元気元気。良作君だって、元気そのものじゃないの。お祭り用のハッピも、すごく似合っているわよ。その頭に巻いた鉢巻はちまきだって・・・。」


 「やだな、里香ちゃんったらさぁ・・・これじゃ、ほめられてんのか、からかわれてんのか、よくわかんないじゃんか。で・・・なんで、僕がこの学校にいるのがわかったのさ・・・?」


 「良作君ちに電話したの。そしたら、お母さんが出てくれてね・・・こっちの学校でお祭りやってるから、行ってごらん、って、教えてくれたの。」


 「そうだったんだ。ま・・・それはそれとして、と。ほら、里香ちゃん、この子豚の丸焼き、見てごらんよ。すんごく、うまそうな色してるじゃんか、こんがり、キツネ色に焼けてさぁ・・・ほらぁ。」


 「丸焼きもいいけど・・・良作君、あたしのスーツ姿には、興味ないの・・・?」


 「えっ・・・?」


 「昔の良作君だったら、まっさきに、あたしの服装の変化に気づいて、いつも、ほめてくれてたじゃない・・・? 良作君・・・ずいぶん、変わったわよね。」


 里香は、少し不機嫌な顔で、良作にチクリと刺した。


 (里香ちゃん、ひさしぶりに会ったっていうのに、ずいぶん、ご機嫌ナナメだよなぁ・・・。僕らが会わなくなった最後の頃も、たびたび、こんな感じで機嫌悪くなったことも、そういえば、何回かあった気がするなぁ・・・。)


 「・・・良作君、あたしの話、ちゃんと聞いてくれてる・・・?」


 「あ、ごめんごめん。ちょっと、ぼーっと考え事してたんだ。で・・・何の話してたっけ・・・?」


 「ううん。もう、いい。なんでもないの。ねえ、良作君。向こうの棟の、静かなところで話しない・・・? あたしたち二人だけでさ。・・・いいでしょう?」


 「あ、うん。いいよ。ちょっと抜け出すくらいなら、誰も文句は言わないから・・・。」


 そうして、良作と里香は、ふたりだけで、イベント会場の南側にある、誰もいない、静かな「実習棟じっしゅうとう」に足を運んだのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ