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好きなのは本当です①

昼休み。

俺と美琴は再び屋上に集まった。

昨日美琴から告白されたのと同じ場所。


そこを待ち合わせ場所にして、一緒にお昼ご飯を食べる。


互いの弁当を持ち寄って食べる、穏やかな至福の時間……のはずだ。



「ねえ、あれ本当に美琴先輩だ!!」


「付き合い始めたって噂本当だったんだ!」


「今朝も昇降口まで手をつないで投稿してきたって話だよ!」


「くそー!! 美琴ちゃんと付き合えるなんてどんな幸運の持ち主なんだ!!」


「美琴さんと一緒に居る男って誰なんだよ……おい、お前、ちょっと二人の顔覗いて来いよ!」


「むー!! 邪魔をしたいが、美琴様を悲しませるようなことはしたくない……」



屋上の扉の奥から聞こえてくる、野次馬たちの嘆きの声。

屋上の上には俺と美琴の二人しかいないが、穏やかな空のせいで彼らの声はしっかりと俺たちのもとまで届いてきてしまっていた。


背後からの圧で、俺はもうお腹いっぱいになってしまいそうだ。



「なんだか、注目されちゃってるわね」



美琴はそんな様子を固めで伺いながら、嬉しそうに笑っている。

これだけのギャラリーがいると分かっていても、態度を変えないなんて。

彼女はやはり学校のアイドルなんだということを実感する。


たった一人の色恋沙汰のために、学校中がパニックになろうとしているのだからな。


だがしかし、野次馬たちよ。

彼女に近づくなら、それ相応の覚悟が必要だぞ。

特に、体のな……



「時間ももったいないし、食べちゃいましょう」


「お、おう。どうだな」



美琴は野次馬たちに気にせず、お弁当を食べ始める。


小さな木目の弁当箱から出てたのは、ご飯に卵焼き、その他和風の具材の入った素朴なお弁当。

あんまり派手にキラキラとしているようなイメージはない彼女なだけに、シンプルなお弁当もかなり似合っていた。


お弁当を口に運ぶ所作ひとつにおいても、彼女がするだけで様になっていた。

思わずその姿に見とれてしまいそうになる。



「どうしたの? 私のことじっと見つめて?」


「い、いや。おいしそうな弁当だなって思って」



彼女を見ていたとは恥ずかしくて言えず、ついお弁当の方に話をそらしてしまう。

ここは、美琴が可愛いと言った方がよかったのか?



「……明日、彰人の分も作ってきてあげようか?」


「え? いいのか?」


「うん。料理は結構好きな方だし」



美琴は嬉しそうにメモをして、明日の弁当の約束をしてくれた。

これだけ見ると、本当に文句のない理想の彼女だ。


まるで、朝のことが全て夢だったんじゃないかと思ってしまう


それから、二人で午前中のたわいのない話をする。

何と言うことない、カップルの日常。

この学校に通う者なら、誰もが一度は憧れる理想の昼休みの過ごし方だ。


ある一点を除いては。



「今日の授業はちゃんと集中できた?」


「……できたと思うか?」



美琴は、服の下で綺麗に亀甲縛りをされている俺の体を楽しそうに見つめていた。


縄で縛られている俺の体を見るとき、彼女はいつもうっとりとした目つきになる。

なんの変哲もない俺の体を何かの宝石のように見るのだ。



午前の授業は、この縄のせいで全く集中することはできなかった。

登校中はドタバタのせいで、自分が縛られているかどうかなんてそれどころじゃなかった。


しかし、美琴と離れて授業が始まった瞬間、急に俺の体を締め付けるほのかな緊縛感が俺の頭を悶々とさせた。

どこに居ても、体に残る違和感のせいで美琴のことを思い出してしまう。

それこそ、本当に美琴がずっとそばに居るんじゃないかと意識してしまっていた。


クラスの子からも、美琴と付き合ったってどういうことかと散々聞かれたが、正直そんなの胴でもいいくらいに俺の頭は他のことでいっぱいだった。



「まあ、最初のうちはやっぱり慣れないよね」


「いつまでたっても慣れる気はしないんだが」


「大丈夫よ。そのうち好きになる」


「……」



俺は、この束縛を好きになる自分を想像した。

学校のみんなに見られながら、美琴に縛られている自分。


どこかでニュースで見たようなやばい奴がそこには居た。



「……やっぱり、怒っている?」


「え?」



俺の顔を不安そうに除いていた美琴。

多分、変態な自分の想像をしている時に、しかめ面をしたのかもしれない。


さっきまで得意げだった彼女の表情が、うっすらと陰る。



「私、だますような形で彰人に告白しちゃったから」


「ああ……」



美琴もやはり気にしているようだ。

束縛ってことをうやむやにしたまま、俺の合意を得たことを。


正直、怒っているかと聞かれたらそういう訳ではない。


突然の出来事に驚いてしまったが、不思議と怒りはわいてこなかった。

ただ、何が起こっているのかよくわからないんだ。


どうして、自分は美琴に縛られることになったのか。

どうして、俺のことなんかを縛ろうと思ったのか。

彼女が純粋にそういう行為が好きなのだとしたら、その対象は俺じゃなくてもよかったはずだ。


俺にとっては、そのことの方が気になってしまう。



「別に怒ってはいないよ。ただ、美琴が何を考えているのかはちょっと知りたいかな」


「そう、だよね」



美琴は口に手を当てて、何やら言葉を考えているようだった。

彼女の秘密に当たることを話していいのか、自身がないのかもしれない。


しかし、美琴はやがて意を決したようでその手を膝の上に置いた。



彼女の告白が始まる。



こんなのおちつけるか!!


お読みいただきありがとうございます!

②へ続く。

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