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束縛が好きって言ったでしょう?

ここは夏の浜辺。

なんでこんな所にいるのだろう……


そうだ、俺は美琴と一緒にデートに来たんだ。

どういう成り行きで?

あんまり覚えてないや。



「細かいことはいいじゃない!」



そう言って夏の陽射しを浴びながら俺の目の前に現れた美琴。

夏の海にお似合いな水色のビキニを着ている。



「せっかく海に来たんだから思いき遊びましょうよ!!」



……そうだな。

せっかく美琴のこんな姿を独り占め出来ているんだ。

細かいことはどうでもいいや!


なんて言っている俺も気がつけば海パン一丁で砂浜の上に立っていた。



「ふふっ」


「どうしたんだ? 俺の体になんか付いてるか?」


「いいえ♪」



美琴は俺の方を眺めて楽しそうにニヤついている。

俺も自分の体を見つめるが特に普段と変わっている様子はない。


まあ、美琴も海が楽しいってことなんだな。



「せっかく海に来たんだから、遊ばなくちゃ!」


「そうだな。何しようか!」


「追いかけっこでもしましょう」



追いかけっこか。

ここはベタに浜辺で水を掛け合ったりしたかったんだけど。


でも、砂浜で恋人同士追いかけっこっていうのもなかなかベタか。



ほらほら、私を捕まえてごらんなさい!

待ってくれよ〜!

そんなものでは、私は捕まえられないわよ〜


なんて、イチャイチャするのも心が踊るな。

ここは俺たち以外に誰もいない砂浜らしい。

美琴と一緒ならどんなことをしたって楽しいに決まっている。



「それじゃあ、私が追いかけるから彰人が逃げてね!」


「え……おれ?」


「さあ、彰人、逃げなさーい!!」



そのまま始まる追いかけっこ。

こういう追いかけっこって普通、男が追いかけるんじゃないの?


でも、美琴が逃げろと言って始まってしまったのだからしょうがない。



「さあ、美琴。俺を捕まえてみろ!!」


「あはは! 待って、あきと」


「そんなゆっくり走っていたら、いつまで経っても捕まえられないぞ!!」


「それもそうね。じゃあ私は得意技をつかうわー!」



笑顔で駆ける2人だけの時間。

砂浜に残る2人の足跡。


逃げる俺と後ろで追いかける美琴。

イチャイチャした2人だけの時間。


そんな幸せな時間の違和感を全て代表するかのように、美琴は突然1本のロープを手にしていた。



「それじゃあ捕まえちゃうわよ♪ そーれ!」



美琴の掛け声と共に、ロープが俺の体に括り付けられる。

最初は胴にしっかり一巻。

それでもまだ走れないことはない。



「まだまだ縛り足りないわね。それ!」



第2巻。

今度は器用に俺の肩から背中へ縄が絡みつき、確かな締めつけを感じさせる。


それからも美琴はなぜか縄を俺に絡みつける。

美琴が投げる縄は器用に俺の体の周りで結びつく。

気がつけば海パン一丁だった俺の体は、美琴の縄でがんじがらめになっていた。



「待って美琴……これ以上は、しんどい」


「あらあら、まだまだこんなものじゃないわよ? まだまだ試したい技はたくさんあるんだから♪」





「待って美琴!!! それ以上やったら、戻らなくなっちゃうから〜〜〜!!!!」





……目が覚めたら、俺はいつものベッドの上にいた。

砂浜もなければ、暑い日差しもない。


美琴と付き合い始めてまだ1日。

そもそも、一緒に海に行くということ自体早すぎる展開だった。



「なんだよ……夢か」



やけに変な夢だった。

美琴と一緒に海に行けるのは嬉しいのだけど、それにしてもひどい遊び方だった。


せっかく2人で水着になったのだから、遊ぶなら海の中にまでは入りたい。

追いかけっこはその後だ。



「あれじゃ、ただの縛られ損じゃないか……って、ん??」



夢うつつから抜け出してきた頃、なぜか俺の服が脱がされていることに気づく。

確かに、眠る時にはパジャマを着ていたはずなのに。


それだけじゃない。


裸であるはずの体に残る妙な圧迫感。

何かで縛られているような、妙な違和感。


この感覚は夢の中で覚えているぞ……



「な、なんじゃこりゃーー!!」



縄でグルグルに結び付けられた自分の体。

ただ適当に結び付けられた訳じゃない。


首を中心に、いくつもの結び目が作られ上半身を張っている赤い縄。

たった1本の縄で結びつけたのだとすれば、相当手間がかかっていることは想像出来る。


ーーっていやいや、何を感心しているんだ。



もちろん、俺は自分でこんな縄を結んだ記憶なんてない。

とても寝相で自然に出来ましたなんて縛り方でもない。


誰かが寝ている間にやったんだ。

美琴と浜辺で追いかけっこをしている夢を見ている間に誰かが……



「あら、彰人。おはよう」



犯人はすぐに見つかった。

彼女は、ベッドの上で体中が縄だらけになっている俺を、ベッドの外から楽しそうに見つめていた。



「美琴、さん? これはいったい?」


「言ったでしょう? 束縛するのが好きだって」



楽しそうに語る彼女の顔は、夢の中でみた笑顔とよく似ていた。

夢が書きたかった。それだけ。


お読みいただきありがとうございます!



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