束縛しがちな私でも付き合ってくれますか?
短期連載です!
ギャグよりなラブコメ
楽しんでいただけたら嬉しいです!
「ごめんなさい。結城君。こんなところに呼び出してしまって」
「いや、いいんだけど、俺に言いたいことがあるって、その、何なのでしょう……?」
おれの名前は結城彰人。
馬締高校に通う2年生だ。
そんな俺は、今人生最大のビックイベントを迎えようとしていた。
「その、結城君のことがずっと気になっていました。私と付き合ってくれませんか?」
なんと俺は、目の前に居るこの女の子、秀寺院美琴さんから告白をされてしまったのだった!!
「え……」
あまりに突然の出来事に俺の頭はフリーズしかける。
落ち着け。
まずは、どうしてこのような状況になったのかを振り返っておこう。
全てのことの発端は、登校時間の下駄箱で起こった。
いつもの通り、眠い目をこすりながら昇降口までやって来た俺。
いつもの通り、門の前に居る先生に挨拶をして、昇降口で知っているクラスの子に挨拶をする。
いつもと変わらぬ、いい天気の穏やかな水曜日だった。
そんないつもの日常が、秀寺院さんの登場でどっかへと吹き飛んでしまった。
「結城君。今日の昼休み空いてるかしら?」
「え、秀寺院さん?!」
突然俺に話しかけてきた秀寺院さん。
肩の下まで伸びた黒髪をまっすぐに下ろし、凛とした表情で周りの人の視線を奪っていく美少女。
「学校一の美少女」とも名高い彼女は、同じ学年でありながらも俺とは住んでいる世界が違う人間だ。
こんな風に名前を呼ばれることすら初めての出来事だ。
そもそも、おれの名前知っていたのか……
そんな彼女が突然俺の名を呼び、予定が空いているかと話しかけてきた。
「あ、ああ。空いているけど」
「……そう、よかった。そうしたら屋上まで来てくれる? 話したいことがあるのだけど」
「お、おう」
俺が不器用な返事しかできないうちに、秀寺院さんは「よろしく」と言い残してどこかへ行ってしまった。
クールな彼女はそのまま多くのことを語ることはなかった。
俺は彼女の意図もわからないまま、一日を悶々とすごし、心の準備もできないまま屋上までやってきてしまったという訳だ。
「……嫌、だったかしら?」
「い、いえいえ! 全然そんなことはないんですけど!!」
秀寺院さんの声で俺は現実に引き戻される。
気が付けば、彼女の顔が俺顔を覗き込んでいた。
突然目の前に現れた彼女の可愛さに、今まで考えていたことが全て吹っ飛んでいきそうになる。
彼女からの告白を受けても、いまだにどうして俺が彼女に告白されるのかがわからなかった。
「秀寺院さんから告白されるのはすごい嬉しいんだけど……本当に俺でいいの?」
正直、俺は秀寺院さんと一緒に並んで見合うような、目立つようなタイプではない。
どちらかといえば、学校の中でもおとなしく過ごしている方だ。
秀寺院さんの目から見て目立つようなことをした記憶もない。
なんなら、ちゃんと言葉を交わしたのだって今日が初めてくらいのレベルだ。
彼女との絡みなんて、どれだけ思い出してみても廊下ですれ違ったことがあるくらいが精いっぱいだ。
「はい。彰人君がいいんです」
はっきりと俺の目を見てそう答える秀寺院さん。
その言葉以上に、彼女が俺の下の名前を呼んでくれたことに感動しそうになっていた。
ーーこれは、もしかしてドッキリなのではないか?
あまりに都合の良すぎる展開に、俺はあたりを見渡してしまう。
もしかして、学校一の美少女である彼女に告白されたら、どういう反応をするのかをみんなで楽しもうとしているのではないか?!
考えたくなくても、そんな方向に考えが進んでしまう。
「……ドッキリ、とかではないんだよな?」
「そんなことしません!!」
おれの質問が終わる前に食い気味に反論する秀寺院さん。
屋上に彼女の声が響く。
普段クールな印象の彼女がこんなに大きな声を上げているのを聞くのは、これが初めてのことかもしれない。
声を荒げた秀寺院さんは、すぐに我に返り、今度は彼女が周りに誰もいないことを確かめた。
本当に無意識で声を出してしまったみたいだ。
「ご、ごめん」
「いえ、突然のことで戸惑ってしまうのはわかりますので……それに、むしろ自分なんかと付き合ってくれるのかと聞かなきゃいけないのは私の方ですし」
声を荒げてから、ずっと顔を赤らめてもじもじしている秀寺院さん。
学校で今まで見せたことがない姿ばかりを見せてくれる秀寺院さんから、俺はもう目が離せなくなっていた。
「その……私、束縛してしまいがちなところがあって、それで、いままでもいろんな人に迷惑をかけてきたことがあるので……だから、人付き合いとかが少し苦手で」
恥ずかしそうに秘密を打ち明けた秀寺院さん。
彼女の発言に俺は驚きを隠しきれなかった。
確かに、学校の中では一人でいるイメージも多い彼女。
だが、遠目に見ているだけでは、そのせいで彼女の周りが迷惑しているようにも見えなかった。
それともあれか、付き合ったら見せる姿でもあるのだろうか……
「もしかしたら、彰人君にも迷惑をかけてしまうかもしれないんだけど……彰人君はこんな私でも、付き合ってくれますか?」
上目づかいで不安そうに聞いてくる秀寺院さん。
この瞬間に、ドッキリだとか彼女と釣り合うかどうかとか、そう言うことはどうでもよくなった。
彼女から告白されるような機会なんて、これから先に生きていたとしても絶対にないことだ。
彼女の告白を断れば、俺は確実に後悔することになる。
「俺でよければ、ぜひよろしくお願いします!」
不安そうに見つめる秀寺院さんに、俺は元気よく返答した。
「本当?」
「うん。秀寺院さんから束縛してもらえるなら、俺は大歓迎だよ!」
学校の屋上で何を宣言しているのだと思う。
我ながらきもい発言をした。
でも、秀寺院さんはそんな俺の発言を嬉しそうに笑って受け入れてくれた。
頬を赤らめて嬉しそうに笑う彼女。
いつも涼し気に笑う姿しか見せていない彼女が、初めて見せてくれる違う顔。
今まで見てきたどんな女の子よりもかわいく見えた。
こうして、俺は学園一の美少女の彼氏になった。
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