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親心子知らず



http://sokkyo-shosetsu.com/

即興小説トレーニング


を使って、制限時間30分、お題:大人の計算 で書いたものです。


http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=591916





 おもちゃを買うために連れて行った百貨店で、息子はあきらかに途方に暮れていた。


 三歳児の背中を見てそう思うのもおかしなことだが、立ちすくみ、絶句している様子は他に表現しようがなかった。

 子どもを育てる経験はこれが初めてだし、百貨店に連れてきたのも初めてなので、どれが正解かもわからない。

 しかし、たくさんおもちゃが並ぶ空間に来たなら、きっとはしゃぎ回るだろうという目算は大きく外れてしまって、どうしたものか、と小人の黒いつむじをじっと見る。


 息子はぐるりと首を回してわたしを見上げた。

 わたしと同じ蒼い瞳が、大きく見開かれてじっとわたしの表情を伺っていた。


「なにか、欲しいものはないか、イェルク?」


 わたしはにっこりと笑って尋ねる。

 初めての場所で緊張しているのだろう。

 なので、わたしは手近なところにあった幼児用知育玩具を手に取り、紐を引っ張ってみた。

 付属の鳥が鳴いた。



「なにか、おもしろいものはないか、探してごらん」



 息子はわたしを凝視したまま驚愕し、震えた。

 と表現してもかまわないくらいの反応をした。


 わたしは笑えばいいのか驚けばいいのかわからなくて、しばし硬直した息子と見つめ合った。


 少しして、深刻な表情で息子は頷き、一歩、また一歩とおもちゃ売り場へと踏み込んだ。

 その背はまるで戦場に赴く傭兵のようであった。




 結局、買ったのはなんの変哲もないボールひとつだった。


 家に帰ったら、そのボールに見向きもせずに、庭で拾った棒を持って不思議な踊りをしている。




「なんでも欲しいものは買ってやりたかったんだがなあ……」



 ぼやいた親心なんて伝わらないだろう。

 なにを考えているのかさっぱりだ。

 大人は大人、子どもは子どもだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] ショタを書かせたら、つこさん。の右に出る者はいないぜ( ˘ω˘ )
[一言] 子供の反応をよくわかっていらっしゃる! 目に浮かぶようでした。
感想一覧
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