第6話「形だけのトモダチ」下
第6話「形だけのトモダチ」下
ふと起きたら知らない天井が目に入った。・・・なぜだ?あぁ、そういえば修学旅行で京都に来ていたんだった。あぶねー。また幸に監禁されたのかと思ったー。僕は瞬きを2,3回して自分の存在を再確認する。そしてなぜかすすり泣くような声が寝ていた布団から聞こえた。
「んぇ?」
と、思わず間抜けな声が出た。何だろうか。僕が寝ていた布団の中に何かがいる。えー、何が居るの?貞子?姦姦蛇羅?八尺様?違いますね。貞子はテレビから、姦姦蛇羅は森から、八尺様には以前にお会いしていないし、何なら全員布団からは出てこない。・・・じゃぁ何なの?だがよく耳を澄ますと声は男よりだ。・・・じゃぁ何なの?すき間女の男バージョンですか。名前なんにしよう・・・。『すき間男』、いや、なんかストーカーっぽい。『泣き男』駄目だ。弱そう。ここは神威にならって、黒闇から泣く漢の声かな。お断りですねはい。
「まぁそんな冗談はさておき、実際に見てみないと分からん。」
僕は布団をひっくり返す。そこには桜星が涙を流しながら、泣いていた。おそらく子供の頃のトラウマでも思い出したのだろう。ッたく、泣きてぇのはこっちだよ。驚かせやがって、新しい妖怪だったらどういう名前つけようか考えた思考力返せよ。だが怖い夢を見てる子を見てると叩き上げお兄ちゃんスキルが発動してしまう。駄目だ制御できん。まぁいいけど。というわけで、茶色がかった髪をゆっくり撫でてやる。ときおり「大丈夫、大丈夫」と声を掛けてやる。すると泣き声は収まり、またもや部屋には静寂が訪れる。
「目が覚めちゃったし、なんならまだ6時だし、やることがないな・・・。」
宿泊施設は結構便利である。部屋別々に放送出来たり、(やらないけど)プレステ4やアイパッド、なんならスイッチも置いてある。勿論のこと星章教の運営するホテルなので星章教徒が入れる部屋だってある(樹調べ)。だがいくら便利であろうと興味がなかったらほとんど意味ないのである。つまりは暇。暇すぎて悟りを開くまである。
「一階に自販機があったな・・・。」
ふと思い出したことだが、一階にはコーヒーやら炭酸やらの自販機が置かれており、軽食用のパンやアイスも売ってある。近くにはテレビがあり、くつろげるスペースとなっている。というわけで、バッグから財布を取り出し、動きやすい私服に着替えてから一階の階段を下りた。
「・・・誰もいねぇな。」
ロビーはだれもおらず暖房が効いているのかホカホカする。だが僕にとっては寒い。
「・・・っ。コーヒー買うか。」
僕はいそいそと自販機に向かい、コーヒーを買う。小銭を入れ、ボタンを押す。ガコンと缶が落ちる音が響いた。
「・・・・・。」
まるでこの世界にいるのは僕だけなんじゃないかって思うくらい静かな空間に、金属の音が聞こえたがすぐに静寂に呑み込まれ、辺りは静まり返った。温かいはずなのにどうしても体温があったまる気配がない。それどころかより冷たく感じるのはなぜだろうか。
とりあえず僕は缶コーヒーを開け、ロビーにある長椅子に腰掛けながらあおった。
「にっが・・・・。」
「お兄ちゃん。」
思わず吐き出しそうになった。なんだ?今すげぇ天使のような声が聞こえたぞ。違いますね。僕はその女子ににこっと笑いかけ、言う。
「それは夢の中だけにしておきな。現実では違うんだよ・・・。」
「・・・・・。」
「昔はそうでも今は違う。現に君と僕は血がつながっていないんだ。それに僕はド平民の成れの果てだよ。」
「分かってるよ。」
そう言いながら、その女子は僕の隣に座ってきた。
「分かってる。上がそう決めたもの。仕方ないとは思えないけど、私の意思ではどうにもできない。」
「確かに、君の意思が反映されるときは無いだろうし、もし認められても僕は・・・・。」
言いかけるとその女子は僕のズボンをぎゅっと摑んで俯いた。
「言わないで。」
「・・・・・ごめん。でも・・・・・。」
「分かってる。何度も言われてきたし、何度も諦めた。でも、それでも・・・・。」
「僕は別に構わない。だから大丈夫。君には結構助けられたよ。」
「そんなことない。私が一番助けられてきた。私がそれを一番知っている。だから、私はお兄ちゃ・・・影内君を助けたいと思ってる。」
「・・・・好きだ。」
「ヴぇヴァふぁっ!?」
ふと口にしてしまった言葉にその女子は顔を赤く染め、乙女とかけ離れた声を出した。・・・やっぱ可愛くねぇな。
「ふぁっ!?・・・へ、ほぇぇぇ!?な、なななななな何言ってんの普通そんなこと言わないよ!」
「普通とは。」
「あ~~~~~。うんそうだねごめんね。いやそうじゃなくて!!!」
「どれだけ時間や権力が足りなくて、救いようのない現状なのにそれでも手を差し伸べようとするその姿勢が、・・・・こう、なんというか、すごく嬉しいんだ。何の根拠もないこの気持ちどう表現したものか・・・。恋とか愛で表せない。だからその・・・・『好き』ということにした。」
説明になっていないような説明をするとその女子は両手で顔を隠した。
「そういうの、20歳になってから言ってほしかったよ~。何で今そんなこと言うのかなもう!聞いてるこっちが恥ずかしいよ・・・。」
「今しか言えないからな。・・・・・時間が・・・無いからさ・・・・。」
僕がふっと笑うと少女もまた笑う。本当、昔っから変わんないな。すると、少女も神妙な顔つきになったかと思うと、僕の膝に顔をうずめてきた。・・・・・は(思考停止)?何やってんの?
「何やってんの?」
「私はちゃんと言います!影内君をお兄ちゃんの頃から愛しています!!」
言われた瞬間、僕の顔が熱くなるのを感じた。少女からの愛の告白は何回もあった。でも今のは今までの告白とは全くの別物だった。凛としていて、力強さと愛の深さがまっすぐに澱みがなかった。まさかこんな形で言われるとは思っていなかった。いまの僕はどんな表情をしているのだろう。多分相当間抜けた顔なんだろうなぁ。でも僕はその好意を受け取ることはできないのだ。だからきっぱりとやんわらと断る。
「ありがとう。でももうすぐ君とは本当の意味で別々になる。」
「知っています。でも愛しています。」
「決別とかそういう生温いことじゃない。」
「それでも、愛しています。」
「君の世界では輝いていても、僕の世界じゃ腐りきれない不純物だ。」
「だから、愛しています。」
「僕は1年後に此処を出る。出なきゃならないんだ。だから、君の好意を受け取ることはできない。」
「いいです。愛しています。」
「その好意は別の人にあげてくれ。もっと良い人に。」
「嫌です。愛しています。」
「なんか、ヤンデレっぽくなってないですかね・・・。」
「違います。愛しています。」
「・・・・。」
「愛しています。」
「撤回・・・しないんですねぇ・・・・。」
「ふっふ~ん!愛を抱く女の子は強いのですよ。愛しています。」
ああい言えばこう言う・・・・・。少女は僕に対する愛が強い。大きいのではなく濃ゆい。なんかむず痒い気分だ。思わず僕も「愛してる」と言ってしまうくらい心がグラグラだ。それでも、僕はこの愛を受け取ることはできない。
「・・・・無理さ。僕にはその愛は重すぎる。受け取る前につぶれちゃうよ。僕は、君の愛を貰えない。手伝ってくれるなら、それは最後だけでいい。」
「・・・・・でも、愛し
「僕の心は揺らいでも、その言葉じゃ僕の人生は揺らがない。諦めてくれ。だから、・・・・そんな愛はいらない。」
「」
言ってしまった。でも、こうするしかないのだ。どれだけあがいても嘆いても泣き叫んでも、この結末は絶対だ。この世の誰にも、それを変えることはできない。
少女の嗚咽が聞こえる。僕は手を伸ばし、その少女の頭をなでようとして、
その手を止めた。
いまの僕はお兄ちゃんでも何でもないのだ。しかも自分のせいで泣かしてしまったのに、無神経過ぎる。ロビーには少女のなく声だけが響く。太もものところが湿っているし、両手が服と一緒にもも肉を握っているのですごく痛い。だが、僕の心臓の方が痛かった。
こうして数分も経つと少女は立ち上がり、足早に自分の部屋へと戻っていった。ロビーには僕だけが残されていた。静寂が再臨し、僕を包み込んだのだった。
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私が起きると、隣にリアがいた。隣というか私の布団の中である。つまりは寝返りが打てない!!いやまぁそんなことはどうでもいいや。リアは泣いたばっかりなのか顔が赤い。なぜかは知らないがとても悲しい顔をしていた。そう、まるで、
「一世一代のプロポーズを無惨に根元からズタズタにされたような顔だ・・・・。」
言った後、「そんなの分かるの!?」って自分を疑ったが、やはり「分かるんですよねぇ・・・」と言わんばかりに分かりやすい顔なのだ。リアは。
これは、チャンスだ!!この月之宮リアと影内来屠の関係は怪しいところがたくさんあった。影内君からは何か得体の知れないのがあって関わるのは極力避けたい!!でもってリアの場合は友達だからそんなこと聞いていいのかが分からない。神の力を使ってリアから情報を聞き出すのは一瞬考えたが、全く知らない赤の他人ならまだしも、知り合いの範囲に入る人間には使いたくはないのでその考えは没になった。だが今は違う。彼女の方から来てくれたのだ。これは使える!!
「どうしたんだいリア?」
私は泣きながら眠っているリアを抱きながら影内君の声でつぶやいた。体臭も影内君のとそっくりである。ちっ・・・・・やだなー。何が悲しくて影内君の代わりをせんとならんのか・・・・。影内君の声と体臭は悪くないんだよ。悪いのは性格!
そうしているとリアが何かを言い始めた。私は神通力を使いリアの夢の中を再現している。夢の中のリアの声を現実にしているのだ。これすっごい集中しないといけないから疲れる。力を抜くと夢の中の声が聞こえなくなるし、声帯の変化や感情の変化を読み取れなくなる。一番の問題は私が『影内君』を確実に演出しなければならないのだ。少しでも演技がばれると本質が読み取れなくなるのだ。
「お兄ちゃんのせいだよ、バカぁ・・・・。」
「僕はさぁ、バカじゃないさ。それは所詮君の意見に過ぎないだろ。(お兄ちゃん・・・?)」
「・・・・。」
「はぁ、論破されて口も出せないとか残念過ぎるでしょ君。人を馬鹿扱いして謝罪の一言もないなんて僕の人権が無視されてるよねぇ・・・。」
「・・・・・・・だ。」
「んぁ?何言ってんの聞こえないんだけど。人に謝るときは目を見て聞こえるように謝罪するんだよねぇ。そんなこともできないなんて君おかしいんじゃないかなぁ。」
「これは、夢じゃないんだ。」
その瞬間、私の声が凍り付いた。世界が止まったかと思う程だった。なぜだ!!なぜバレた!?声だって言い方だって言い草だって全部同じだ。何がどう違うの!?とりあえずナントカ誤魔化さないと!と私が試行錯誤していると、
「そりゃそうだ。現実なんだよこれが。お兄ちゃんはもう存在しないんだ何してるんだろう私。せっかく清水寺にデートしに来たのに・・・。」
んん!?え、・・・・・?目覚めていない。つまり、リアは夢の中で夢を見ていたのだ!何たる神業!やばいなこの娘!とりあえず!いい感じに情報聞き出せるようにフォローしなくちゃ!!
「はぁ、まぁいいけど。ここじゃ僕ら以外に同じ高校の人いないしお兄ちゃんしてあげてもいいよ。」
「ううん。お兄ちゃんも影内君も好きだからいいよ。・・・・ごめんね。無理させちゃって。」
「別にさぁ、僕は構わないんだけど。っていうか最近神俱斗君とはどんなんだ?」
「大嫌い。あのさらっとしたような悟ったような顔が嫌いだし、影内君の悪口言うし、何気に肩とか手とか叩いたり繋いだりして気色悪い。体育の時だって恋ちゃんと友達を悪者扱いするし、雰囲気が気に食わない。何で存在しているの?って思うくらい!!」
「そ、そうか・・・(神俱斗君、可哀そうに)。」
「で、では恋、・・・上野恋華とはどうだ?ちゃんとうまく関わってるかい?」
「はぁ、来屠君じゃないんだから、ちゃんと関わっていますよ!!」
「むぅっ・・・・じゃぁ上野さんはどんな人だと思う?」
「全てにおいて完璧で完全で誰から見てもいい人だと思う。でも、・・・。」
「でも?」
「なんかおかしい。」
「何が?」
「何が?って来屠君が教えてくれたんじゃん!!」
「あー、・・・・・・何だっけ?覚えてねぇ・・・。」
「恋華おばあちゃんには一人っ子の孫娘が二十歳になって社会人だって言ってたのに、いつの間にか恋華が存在していること!!おばあちゃんは孤独死だったけど認知症じゃなかったんだよ!それにあそこはずっと空き家で誰もいなかったはずなのに急に恋華がいること!事前に学校から配られた出席プリントには『上野恋華』っていう名前はなかったって!なのに来屠君以外の人は『元々あった』っていう記憶がつくられているんだ!!来屠君がそんなどうでもいい嘘はつかない!でも、・・・・決定的だったの!!」
分かったことがある。影内来屠はもともと月之宮リアの兄だったこと。だが何かが原因で兄と妹は決別した・・・。影内君には私の現実変化の力が通用しない。主に記憶や身体、精神を対象とする力の一切を無効化する。そして、決定的なことがある。私の存在が怪しいことに関して。何だろうか・・・。
「何が決定的だったんだっけ?」
「失敗したんだよ・・・・。本当なら誰も見ていなかったはずなのに、・・・・止める人なんていなかったのに、・・・おかしいよ。・・・・・・・影内君はぁっ・・・・全身全霊の自殺が失敗に終わったんだよぉっ!」
「・・・・っ!?」
リアの絞り出すような声からあふれ出したのは驚愕の事実。私は想像のはるか斜め上からきた真実に息が詰まった。自殺っ!?影内君が!?しそうかどうかと言われると頷いてしまいそうだが、彼はそんなことをする性質ではないだろう。桜星なら話は別だが・・・・。何故彼は自殺しようとしたのだろうか?それは聞いてみたかったが、私が当の本人のふりをしているので私はそれを聞くと矛盾が起こってしまう。・・・これは保留かな。
一区切りつくと、リアの目が開き始めた。あー、起きちゃったか。じゃぁ恋華の方に戻るか。
私は力の行使を止めて上野恋華に再びなった。
「んん・・・・。あ、恋ちゃん。」
「おはようリアさん。急にリアさんが私の布団の中に入って、呪文のようなことをぶつぶつと呟いていましたから、恐怖で起きてしまいました。」
「んえ・・・・・。・・・・・・。・・・・っ!!!うぁぁ!ごめん!寝ぼけていたみたいです・・・・。」
みるみる顔が赤くなっていくリア。どうやら私の布団だというのに気づかなかったみたいだ。
リアは、はっと顔を上げて私のことを凝視する。
「ど、どうしました?」
「私、・・・・変なこと言ってないですよね・・・・?」
変なこと・・・・。これは正直に話すべきだろうか。いや、話してしまったらこれ以上の影内君の秘密に迫ることができない。逆に「言ってない」と答えると怪しまれるかもしれない。ならば、中途半端に曲げて伝えるか・・・。それが最善の策だろうな。
「えっと、リアさんが私に抱き着きながら、基山君の悪口をさんざん吐き散らしていました。」
「それだけ?」
「後はその、・・・リアさんにお兄様がいたことが驚きですね。」
「・・・・・・。」
言った瞬間、リアの顔面が蒼白になっていった。
「でもって、影内君と清水寺でデートですか・・・。リアさんの好きな御方って影内君だったんですね。」
「~~~~~~~~~~!!!??」
今度は顔が紅潮し、目が回り始めた。分かりやすいなーこの娘。
「お兄ちさんと影内君って仲いいんですね。兄弟いないのでお兄さんには憧れがありますね。」
「・・・っは!!うんうんそうでしょ自慢のお兄さんですよ!!」
自慢げに胸を張るリア。分かりやすすぎないかこの娘。
「いつか、会ってみたいですね。いつなら会えますか?」
言った瞬間リアの顔が凍り付いた。あ、何か地雷踏んだみたいだ。
リアはどこか寂し気な表情をしたかと思うと、口を開いた。
「まぁ、いつか会えると思うよ。・・・・いつか、恋華には本当のことを言わないとね・・・。」
私は無言でうなずいた。
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二日目はほとんどが自由時間であり星章学園の生徒たちはホテルでぐーたらしたり、近くのお土産屋で品定めをしたりしている中、恋華のグループは八つ橋を買っていた。
「あんこか生クリームか、悩むな~。」
統合失調症の紗耶香が二つの八つ橋のパックを見比べながら悩む。その横では元テログループの優慶があんこが入った八つ橋を掲げてサイコパス樹と討論していた。
「やはりあんこと言えばつぶあんだろう!!」
「何寝ぼけたこと言ってんだゴリラ。あんこと言えばこしあんだろうが。」
「こしあんは甘い!!砂糖を大量に入れたこしあんはあんこの邪道だ!!」
「顔洗って出直せ脳筋馬鹿。つぶあんは食べた後の口に残るあんこのカスが違和感をもたらすんだ。」
「つぶあんはあんこ本来の味を楽しめるんだ。砂糖は確かに入ってるがあくまでもあんこを主軸とした味だ。」
「こしあんは確かにつぶあんと比べるとあまりあんこの味は劣っているかもしれない。だが、後味が良く、口内の温度で溶けるように設定されているんだ。それが包まれているということは、八つ橋全体にあんこが染み渡るということだ。」
気が付けば周囲の観光客も優慶と樹の言い合いに耳を傾けている。
樹は討論が平行線のままなので恋華と鏡花に声を掛けた。
「恋華さんと鏡花さんはどっちがいいと思う?」
「私はこしあんかな。鏡花さんは?」
「私は小豆アレルギーだから八つ橋食べれないから分からないの。」
「「なッ!?」」
一瞬にしてその場が凍り付いた。第三者の意見によってその場には重苦しい空気が流れ込んできた。だが樹はすぐさま別の考えを口にする。
「じゃぁ、抹茶クリームはどうかな?あんこは入ってないしクリームは北海道産のものを使用しているから品質も良い。抹茶も本場の物ほど苦くなく違和感を感じさせないちょうどいい風味に仕上がっているんだよ。」
「ふぇぇ~。・・・いいいじゃぁねぇか!アタシは抹茶クリーム派だね!!」
鏡花の意思より先に鏡花の別人格が率先して賛成した。この第三勢力も介入には見物に来ていた店主も驚きだ。土産屋が混沌と化した瞬間だった。
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そのころ来屠らは路地裏で絡まってきた不良を叩きのめしていたところだった。不良も運が悪い。自分よりだいぶ問題児な人らに絡んだのだから。叩きのめされた不良Aは一瞬にして壊滅したグループを見て愕然と目を開く。
「何が起こった?殴り掛かったところまでは覚えてんのに・・・・。」
そのボヤキには業平が応じる。
「いやまぁ、独学で全国大会優勝した柔道の選手倒すくらいだから。まぁ、当然の理だよね。」
そこに神威が突っ込みを入れる。
「否、あの時は奴があくまでも講習だというのに再臨の次元の狂乱と究極にして超越の拳を撃ってきたのでな。周りに被害が出ぬように衝撃を相殺し、圧縮しただけのことだ。」
「訳としてですね。『体育の柔道の時間に本気を出して初心者潰しをやっているのに耐えかねて、見事掌で躍らせて片付けた』というところですね。喧嘩を吹っ掛ける相手、間違ったんじゃないですかね。いくら男とは言え、男を狙うのはまだしも!女子を狙うのは僕の美学に反する!!」
「何の話だオイ!?」
「追っかけるなら男子の背中!女子なんて論外!男が男を追っかけずに始まる恋なんてねぇッ!!」
「こいつもコイツでヤベェ奴じゃねえか!!」
当たり前だ。星章学園で名のあるBL好きの変態だ。腐女子でも思わず童心に戻って顔を赤らめるという前科、いや名誉ある功績を残した業平に(ある意味)勝てる奴はいないのだから。
「くそっ!!どこで間違ったんだ俺たちは。」
顔が赤く腫れた不良Bがぼやく。その返答は来屠がした。
「いやそもそも不良になってる時点で間違ってるけど、敢えて言わせてもらうならね。
1究極のブラコン兼恐怖のヤンデレ天菜に絡んでいったこと。
2「男は女置いて帰れ」の一言で、ホモの変態若頭がキレたこと。
3【速報】実は案外妹のこと好きな中二病の完全体がキレたこと。
4【定期】不良という概念がトラウマと逆鱗に触れた桜星がキレたこと。
5【炎上】常に鰹節もサクサク切れる包丁を天菜が抜いたこと(死刑確定だよ☆)。
以上かな。」
「行動一通りじゃねぇか・・・。」
不良Aがぼやく。そこに桜星が荒らした不良のスマホをいじりながら言ってきた。
「オイ三下3人。テメェらァ、行動するにはイイかもしれねェがいるンだろォが親玉がよォ。」
業平が食いついた。
「あぁ、確かにね。僕らに食いついてきたときに、あんまり親分っぽい奴がいないなって。」
神威が話を広げる。
「ほう、芋づる方式か。これははびこってるチンピラを殲滅するよりは本部を直接制圧した方が早そうだな。」
来屠は桜星にスマホのメッセージや、写真を共有するように言い、不良ABCを路地裏に連れ込んでしっかり絞ったところ、やはりチンピラだ。親玉がいたのだ。
「そォか、こりゃァアレだなァオイ。閲覧注意ッてやつじゃァねェか。」
桜星が見せた不良のスマホから出てきたものはいろいろな危険物だった。
「下着姿の女子・・・なんだこりゃァ。店の名前が羅列してッぞ。その下には全裸の写真が何枚もある・・・男女関係ねェなコレ。制服的になンだ?高校生か?中学生か?はァ、オイオイ気持ちわりィな動画版まであるたァ。どォ言うことだ?」
「あぁ、このグループの親玉のバックには議員がいるみたいで、そういう系の事件全部もみ消してるみたいだよ・・・はぁ、男子と女子の動画しかないじゃないか・・・。男子と男子のお熱いモノは何処だ?んん?」
「はぁ、あのさぁ、僕ら以外の誰が犠牲になろうが僕らには関係ないことだからさまだ許容範囲さ。でもさぁ、そういうのどうなのかなぁ。はぁ、僕に関わる人間が増えたじゃないかクソが。君たちのせいでこうなったんだ。僕の修学旅行が台無しだよどうしてくれるのかなぁ?さんざん無意識にも僕の権利を侵害しておいて、最終的には『もみ消す』なんて許さないよ。心の寛大なこの僕が、少しでもの足りるこの僕から、『命令された』じゃぁ終わらない。やられたんだ。奪われたんだ。せっかくの希望も粉砂糖のような夢も全部、全部全部全部全部奪われたんだ。許さないよ。君たちも君らを操っていた外道も、そういう風にした世界も、『そういう運命だった』で終わらせる神も。僕はやるさ。僕の世界が少しでも平和であるように見せるためなら、泥だって罪だって被ってやるさ。それくらいの義務は僕にだってある。説明しろ。一から全部。奇襲でも暗殺でもやる。だから話せ。君らとバックの人間との関係を。」
3人の果てしない憎悪に委縮した不良Cが話し始めた。
「さ、最初は軽い気持ちで、先輩に誘われたから。お、襲うってなると恐い気持ちもあったんだけど、先輩のバックにいる人がもみ消してくれるっていうからやってみたんだ。やってみた後、すごい快感だった。何かね、出ちゃいけないものが出た気がしたんだ。しかも写真撮って『拡散する』って言ったら、相手の方から誘ってくれるし、お金でも身体でもくれるからやりたい放題で、後戻りが出来なくなったんだ・・・。で、でもよく考えたら僕らは悪くない。悪いのは誘ってきた先輩と襲われた方だと思
「今さッきからァ、グチャグチャうッせェンだよ!!あァ、聞いてるだけッでもイラッイラする。オイ来屠、命令しろ『潰せ』ッて。本部吐かせて中にいる人間全員内臓と目ン玉すり下ろしてやる。皮ァ剥ぎとッて新しい衣類にしてやらァッ!!」
「ひィ!!」
桜星が激昂し、懐からスプレー缶(ガソリン入り)とガスバーナーを出した。目が常人のそれではなく、不良たちは生命の危機を感じたのか息を詰まらせている。
「落ち着けそれをしまえ。」
来屠が桜星に言うと、桜星は不満げに来屠を見るが来屠の目を見てぎょっとする。
「やるなら、数だ。完膚なきまでに潰すにはバックについてるスポンサーも共に。」
怒っていた。否、怒るという表現にしては深すぎる怨嗟がにじみ出ていた。
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「ねぇ~~~。コレマジヤバマジかわじゃね~~。」
「それな。分かる~~~。」
その人々は一般的には害悪パリピと呼ばれる人々。そいつらは頼んで出てきたデザートを写真に収めた後、食べることはなく店の横にあるゴミバケツに捨てる。そのグループは全員女子で構成されており、中心人物はアリナである。こいつは男子をたぶらかすことにたけているうえに、クラスのトップカーストにいるパリピである。
陽キャとパリピは一見同じように見えるが、中身はかなり違うのである。陽キャは基本的に自分の体験談や人の良いところで場を盛り上げるのだが、パリピのコミュニケーションは基本的に他人の陰口でできているときが多い。陽キャは実は性格が良いというのはある意味においては事実なのである。さらに言えば、パリピのグループには大体が無理して居ることだ。彼らはしたくもないことを、してはいけないことを平気でやる。その理由として集団心理が関わっている。この心理は『集団に居ればその集団の望むことをやらなければいけない』というものだ。ここで言う望むことはアリナの意思だろう。
だが所詮は『強制』で成り立った『雰囲気』でモノを言う集団だ。こんなものは簡単に瓦解してしまうのだ。例えば、今のこの瞬間とか、そうなのだろう。
「おい、嬢ちゃん。ちょっと俺らと遊ばね?」
アリナのグループにとある柄の悪い男子高校生らが絡んできたのだ。彼らはこの京都でも問題行動ばかり起こしている集団だ。
「はぁ?何言ってんの。キモいんだけど。」
「ほぉ、そんな口叩いていいのかマセガキ。」
アリナは敵対心むき出しで絡んでくる男子を突き放す。だが、やはりはチンピラ、持っているものは持っているようで懐からかナイフを取り出して、グループの1人を人質にとる。
「おい、コイツが心配ならお前らちょっとこいや。」
ナイフが出たのはさすがにビビったのかアリナはすぐに逃げようとする。
「おいおい、仲間は見捨てんのか!?」
「はぁ!?知らねぇしっキモ!ほらお前どけよ!!」
「えぇ・・・・・。」
素早すぎる手の平返しにチンピラの方が驚く。少しの呵責を切り捨てて非行をしている三下にとってアリナのそれはまさに天性のものと言っても間違いないだろう。良心の一片もないほどの理不尽、自分さえよければの性格。思考回路だけならそこにいるチンピラよりずいぶん救いようがないだろう。
だが、状況が状況だ。今の状態でアリナを逃がすクソッタレはいないのだ。ずっと、半信半疑でついてきたアリナグループの仲間はそれが確信に変わったのだ。だからこそ、行動は早かった。
「ちょ、おま!何してんの!?キモッ!手ぇ放せよ茉莉、由子、どけよ!!」
グループの茉莉と由子が逃げようとしたアリナの手を、服をつかみ引っ張る。アリナは激昂したが、それよりもっと激しい憎悪が2人の顔に宿っていた。
「アリナが他よりわざと目立とうとするからこうなったんだよ!!」
「本当、いっつもいっつももううんざり。したくもないのに障害者転ばせたりインスタ重視で食べ物捨てたり、美味しいのに『まずいまずい』って言って店員呼び出して謝罪させたり、ずぅーーーーっと我慢してきたんだから!もう限界!」
この言葉には他のメンバーも加勢が加わった。
「なんで自分だけ逃げようとするの!?理解できない理解したくない本当、責任取ってよ!」
「本当あり得ないしんどい無理調子に乗るな!!」
「このクズ!尻軽女!!私の彼氏返せよ!!」
「パシられた時の金返せよ!!あの時の3千円返せ今すぐ!!」
「私のマフラーも返して!!妹に編んでもらった奴なのに!!」
「私もシャーペン返してもらってない!!」
「勝手にSNSに私の写った写真を上げるな!!消せよアカウントごと!!」
「私の住所と電話番号使って勝手に商品買ったでしょ!!請求書がたくさん届いたんだけど!!」
「あっ!!それ私も!!『年賀状書く時に必要だって』って言って何故か銀行の口座番号まで!!」
「嫌だって言ったのに『逆らったら彼氏に言って病院送りにする』とか言ってた!!」
「私も!!勝手に私のアカウント使って変な書き込みしたでしょ!!アカウントごと消さなきゃならなかった!!最悪!!」
「そうそう!!私の家貧乏なの分かってて金を盗ませたり!!!!」
「マジで!?私も妹の写真をどっかの店に売ったせいで変な人がたくさん家に来たんだから!!」
結局、雰囲気と脅しで出来たグループは何かを決起に崩壊する。グループの文句にはアリナは当然といった表情だが若干冷や汗が出ていた。自分が世界の中心とでも思いあがっていたのだろうか。チンピラは引いていた。有り得ん物を見る眼だった。
「はぁ!?調子に乗んなよカスが!!アンタらをグループに入れてやったのは私よ!!アンタらの物は全部私の物じゃない!!!」
もうここまで反省の色がないのは病気の域だろう。アリナは逆切れするが飛んできたのは言葉ではなく、掌だった。
平手打ち。
由子、と呼ばれる女子からの一撃。乾いた、というよりはどろどろとした負の感情が放出されたような音がした。勢いで倒れるアリナに由子がとびかかり胸倉をつかみ何度も何度もアリナの顔を殴る。由子は、我を忘れたようだ。皆も怒り心頭でアリナが殴られるのをただじっと見ている。仕方がない、されてしょうがない、みんなして由子を止めるものは誰もいない。みんな、それほどの恐怖と怒りを感じ、耐えてきたのだから。
「ふざけブッ!!」
「あぁぁぁぁああああああああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」
由子の表情から人間のそれは微塵も残っていない。一心不乱に拳をふるう。アリナも反撃するが馬乗り状態では反撃らしい反撃ができない。そして由子は顔にいくつもの血管が浮かび上がり殴る拳は威力を増す。だが、ふとした瞬間に人は意識を取り戻すらしく、由子は殴る手を止めた。皆も、急に止まった由子を見てどうしたのかと思ったが確信に変わる。
濡れていたいたのだ。
真っ赤に、由子の手が。血の発生源はアリナの顔から。殴られ過ぎて頬のいたるどころが出血しており、鼻は折れていた。
「-------ー!!!!!!!!」
アリナは意識が飛んだのかピクリとも動かない。先にパニックになったのは由子だ。
「ぁぁぁああああっ!!!・・・・私のせいじゃない私のせいじゃない悪いのはアリナだしアリナだから、だからがからっから私私私は悪くない悪くないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「「「由子!!!」」」
完全に自分の世界に迷ってしまったのか、由子は叫びながら路地を飛び出した。皆が由子を追いかけようとするが、アリナを放っておくほど落ちぶれていないのか駆けだすことに悩んでいる。そこに車が1台止まり、中から1人の男性が出てきた。その男は、倒れているアリナを、そして一様に皆を見て、フッと唇を歪めるとこう言った。
「一部始終見てしまってすまないね。その子を病院に運んであげるよ。皆も乗っていくと良い。」
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「おいおい、何があったかと思って来てみればこれはどういうことだ?」
「電話で言ッただろォが。今からこのクソ野郎ォ共の本拠地制圧しに行くンだよ。」
焦った顔で桜星に尋ねるのは優慶だ。他にも恋華、樹、鏡花、紗耶香が疲れたような顔をしている。電話で呼び出され、この路地まで走ってきたようだ。
「そこにいる女と金しか視界にない不良から聞いた話だと、ここから歩いて15分ちょいの廃工場で叩き売りするみたいでね。・・・・嫌いだろ?優慶、そういうの。」
業平が加虐的な笑みを見せると優慶の目がすわった。彼が元々所属していたテログループは基本的に奴隷や公共の場での差別をする国や地域を襲っていた。が、故に彼はそういった『叩き売り』が嫌いなのだ。
「あぁ。そういうことなら手伝わない理由にはならないからね。いいとも、桜星、ナイフを貸してくれ。サバイバルナイフがあっただろう。・・・・・20人位なら同時に相手しても15分もかからないよ。」
「阿呆、優慶の役割は工場を見回ってるチンピラの始末と中にいる人民の救助だ。敵は聞いた限りだと40人近く、ここは50人くらいいると仮定した方が良い。」
来屠の提案に優慶は「それな。それしかやってなかったから今ここにオレはいるんだよな」と賛成の言葉を言う。
「正直、紗耶香と上野さんは戦力外だ。外で待機してくれ。鏡花は、・・・どうする?」
「ふん。私は戦闘ではこっちで行くわけだが、問題がある。あぁ別に戦闘には不参加というわけではない。」
「どんなだ?そっちの鏡花ならチンピラ2、3人大丈夫だろ?あ、もしかして武器の問題か?」
「いや、そうではなくて、こっちの私は感覚が鋭く格闘術全般は大丈夫なんだが、・・・そのな、体は鏡花のものでな。奇襲かけられた時感覚で気づいていても体が反応しない。」
「あっ。」
さすがにそこは不注意であったのか来屠は悩む。そこに樹が入り込む。
「だったら僕と行動するかい?多分来屠のことだから僕は1人寂しく手短にチンピラ捕まえてボコってトラウマ植え付ける作業することになるだろうし。」
「そうだな、戦える奴は俺と神威と天菜と業平、桜星かな。あ、そうだ。優慶。」
「なんだ?」
「外にいるチンピラ片したら中の援助も頼むわ。・・・・ホンモノの自衛隊に勝った力、貸してくれよ。」
その申し出に優慶は「うむ」と頷いて受け取る。
「言われなくても、俺にはそれだけの恩がある。」
「頼むぜ。」
「応!」
力強く優慶が返事をする。
その時だった。
「あぁっ・・・・・はぁっ・・・はぁっ。」
路地裏のすぐそばから由子が息を切らして走っているのだ。顔は焦っていてパニックを起こしており、見た目から確実に何かがあったというのが分かる。動いたのは鏡花だった。鏡花は由子の腕を摑むと、「こっちに来て」と顎で路地裏を示した。由子は混乱からビクビクしていたが自分の学校の生徒だと分かると半信半疑の様子で近づいてきた。
「はぁ、とりあえずだけど何があったのか教えてくれないか?慌てるほどの何かがあるんだろう?」
業平がゆっくりと諭すように由子に話しかける。その言葉に由子はゆっくりと事の事態を話した。
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「はぁ、あのさぁ。確かに君の行動は突発的なことだしさぁ、はぁ、でもさ、そういう理由で皆おいて逃げてきたって訳?そんなの傲慢で怠惰な行いだと思うんだよねぇ。はぁ、まぁさ、確かに僕の知らない話だし特にと言って興味のない話だけどさぁ、殴ってきた相手を仲間ともども置いて逃げてきたって訳?しかもナンパしにきたチンピラもいるってさぁ、はぁ、あのさ、感情に行動を任せちゃいけないことくらい君も分かってると思うんだけどさぁ、どうなの?自分の感情を表に出して結果が良かったなら別に僕は何も言わないけどさ、はぁ、実際のところ悪い方向に一直線じゃん。まぁ、僕もこれと言って責める気持ちは微塵もないけどさぁ、逃げて逃げて逃げて・・・・・どうする予定だったの?」
僕は思ったことをつらつらと述べた。目の前の女は由子というそうだ。知らんけど。で、まぁその由子が僕の長ったらしいことを聞いてたら額に血管が浮かんで僕に飛びかかってきた。
「あんたに何が分かるっていうの!?偉そうに文句ばっかり言ってぇ!!」
だが、優慶が抑える。
「分かるわけないに決まってるじゃないか。関係のあるなしに関わらず、他人の人生、気持ちが分かるなんてストーカーでも無理だろうね。そもそも、分かるようなモノじゃないだろうからね。・・・分かったところで、気持ち悪い。」
僕が吐き捨てるように言うと上野さんが慌てて何か言ってきた。
「まぁまぁ、とりあえず謝りに行くことが大切だと思います。喧嘩両成敗って言いますもんね?」
そうだな。意味は多分違うと思うが、ここでうじうじしている訳にはいかない。僕らは由子の案内で由子を殴ったとされている場所に移動した。
だが、想定外の事実が判明した。
いないのだ。アリナの血と思われるものはあるがそれ以外の物はない。全員が移動した後だった。
「やられたっ!!」
業平が怒りをあらわにし壁を蹴る。由子や鏡花、上野さんはそこらの人に女子高生を見かけなかったか聞いて回っているが良い情報はなさそうだ。やはりここはその手に詳しい人に聞くとしよう。
「優慶、桜星、聞きたいことがある。」
「何だ?来屠。」
「優慶、ちょっとそこらにいるチャラチャラした奴を締めてくれないか?手段は問わない。」
指さした方向には鏡花や上野の質問に「知らない」と答えた奴らだ。
「確かに、あそこからほとんど微動だにしないうえに、鏡花さんや上野さんを写メしておる。怪しいな。」
「だろ?お前ガタイとか顔とか極道の類のだから軍人とかマフィアって言ってちょっと情報集めてくれよ。ほれ、形だけだが金属で出来た銃だ。引き金弾くと音の出る代物だ。行ってこい。」
「制服姿なのはやばいんじゃないか?あとなんか俺の顔が極道の類って・・・・。」
「服は桜星から借りろよ。持ってんだろ何着か?」
「2着あるが、そのためのオレかよ。」
「いや別にやることあるんだが、まあ後だ。行ってこい優慶。」
「応!」
着替え終わった優慶が駆けていく。さぁて、俺も根回ししとくか。




