第6話「形だけのトモダチ」上
小学校や中学校で道徳の勉強をするが、諸君はその勉強で命の大切さがわかっただろうか。僕はそうは思わなかった。所詮、命についての小説を読まされているだけであり、結局「命は大事で1個しかなくて、大切にしなければならない」で終わらされるからだ。そもそも「命」をよく知っている人は、親でも先生でも総理大臣でもない。第一級殺人をした服役中の囚人だ。僕は彼らを学校に招き入れ、「命」について語ってもらった方が効果的だと思う。つまり、人道的にあり得ない人間は人道的な人間の知らない、人生で必要なことを知っているのだ。
第6話「形だけのトモダチ」上
外は暖かいかぜが吹いており、まだ散っていない桜の木が生い茂っている。だが、この中はガンガンに冷房が効いており、死ぬのでは?と思われるほど寒い。それも周りにいる生徒のうるささでカバーしている。ここは新幹線の中だ。
そう、恋華たちは京都に修学旅行しに行っているのだ。
「鏡花さん的には生八つ橋は本店派?」
この自衛隊に所属していそうな太い声の持ち主は、久保田優慶という、元有名テログループの洗脳された一員で、数々の修羅場を銃器兵器で乗り越えたある意味超人な男子だ。
「私は、支店でもどっちでもいいと思う。」
こちらの女子は3重人格を持ったワケアリ女子の加藤鏡花だ。昔、冤罪を着せられた時尋問した刑事を殺滅したという、なんとも言えない過去を持っている。
「っていうかさ、ホテルが星章教の教会と連結してるってどういうこと?あのクズ教のホテルって・・・。」
こちらは村田樹。帰国子女で元星章教信者だが、人間の内臓に異常な執着心を持っており、この変な趣味で星章教を追い出されたことを根に持っている。
「恋華さんはどこに行きたい?」
この女子は白羽紗耶香。とある脳の障害で親に捨てられたところを、鏡花に拾ってもらった女子である。この後、児童保護施設に連れて行っても引き取ってくれる親はいないだろうと考えた樹の提案で、今はアパート住みの鏡花のおばあちゃんと暮らしている。
「どこでもいいかな。とりあえず、八つ橋買って、ん~。」
そして、この少女が物語の主人公、上野恋華だ。全知全能の世界創造の神にして、とある男子を毛嫌いする神だ。
(そういえば、来屠君は何処の班と組んだのだろうか。)
ふと、家に来た時の来屠の話を思い浮かべる。彼は恋華を入れるため、自分が抜けて他の班と組んだのだ。恋華は彼の居場所を探す。ここは新幹線の中だ。探す範囲は狭いし、何より千里眼を使えばリアルタイムで彼の姿と声を聴けるのだ。恋華は千里眼を起動し、彼を探す。
(いた。)
案外、近くにいたのだ。そこは恋華の斜め右だ。わざわざ千里眼を使うことはなかったのだと、恋華は自覚し、彼らを見る。
「つゥかッよォ、・・・・・そいつクズだろッが!天菜ァッ、その男子は男子の風上にもッ置けねェじゃねェか。俺ッ様以外の誰ッにも『ド底辺の不幸なクズ欠陥人間のゴミ』の座を渡さッねェ!!」
この男子は近藤桜星という、自身を『世界で最も薄汚くて醜く、尚かつ人間味のない人の期待と信頼を裏切る、この世の失敗作、欠陥人間のゴミ・・・』と自称する本当に最低な人間である。嘘はつく。妄言も吐く。自己中。人の嫌がることしかしない。法に触れない限りのギリギリのラインでやばいことをする。他にもいろいろ・・・とまぁ、こんな感じのクズである。だが、こういう行動するのには一つの理由がある。
「相変わらず、座右の銘が長いなぁ。別にいいけど。僕は、男女の交際よりぃ、自己中で押しの強い金髪のイケメン男子とぉ、一見近寄りがたい印象があるけど実は結構ツンデレでコミュ障な小柄な黒髪後輩系の草食男子がぁ、教室やカフェテリアでくんずほぐれつして、周りに『俺の彼氏に手ェ出すなよ』って訴えるぅ、そういういたいけな乙女男子の熱くて、甘くて、ちょっと苦みと酸味のあるぅ、ヴィーナスの誕生どころか世界創造の域にいく恋愛禁止の学園で送るラブコメな展開がぁ、ふべしっ!!」
この腐女子ならぬ腐男子とのこと、在原業平を叩いたのは斑戎神威という、一見普通の男子だが、
「くくく・・・・・、違うぞカルマ・ジャスティック。今この瞬間に求められるのは、ロットヘヴン・I・オブストの更なるマイトへのサイキックリンクだっ!!か弱い子羊に力を与えるため、天上の熾天使ベルモールの率いる天使軍に血濡れの魔剣『ヴァングレイシア・グリフ』を片手に突貫する・・・そして、もう一度この世を闇に染め隠れた血を持つ者が再び力を解放し、ロットヘヴンという運命の反逆者を排斥するため全国に君臨する。・・・・だがっ!!そうはさせない。それは、我が『勇気』の極天者、『ゴッズノゥヴァ=A=ガルガンチュアート』だからだっ!!!!!」
『生きる伝説』ならぬ『生きる生き恥』の中二病患者である。ここ最近は英語の先生にドイツ語で質問したり、教師の権威を駆使してイキるジジイを中二病単語と必殺技で返り討ちにするという偉業を成し遂げた猛者としてクラスから恐れられている。そして、そんな人類の黒歴史みたいな男子の世話をしている人物がいる。それが、
「なんか私の好きな人の話が、地球が終わりかねない壮絶な話になってるんだけどぉっ!!っていうか、その男子がお兄様なんですけどぉっ!!」
この世で最も中二病兄を愛し、ヤンデレとメンヘラどころか、家事スキル、社交スキルを兼ね備えた地上最強の重度のブラコン(精神科医曰く、もう治らないそうです)とのこと、斑戎天菜である。
「我だったか。・・・・っていうか、ロットヘヴンよ。それじゃ我がボロクソダメな奴ではないか。」
「大丈夫。それ含めてお兄様を愛しているから。ダメで駄目でどうしようもなくて、パジャマはどんな時でも長袖の暑苦しい戦隊ものを使って、寝る前に必ず雄たけびを上げて両手にセ―マン描いて抱き枕無いと寝られないし抱き枕によだれ垂らすし、5回起こしても起きなくて何故か上半身裸体の救いようのないお兄様の為なら、私は死ぬ覚悟です。」
「・・・・・すいませんそれ以上はしゃべらないでください直しますんでお願いします。っていうか、我のフォローが誰もいない・・・とはっ・・・・・・!?」
圧倒的な暴露で神威のメンタルが崩壊していく。そんなダメ兄を見て笑い出す者がいた。笑いをこらえているのがよくわかる。その男子は髪はボサボサ、前髪が長い、この前道端ですれ違った不良がビビって後ずさりするほどの凶悪な目つき、人生と世界に絶望した双眸を持っている。
「あぁっっ!!まさかぁ、今の神威と天菜のやり取りは一見兄弟愛のように見えていたが、実際のところは神威が来屠に『君には興味がない。我は妹一筋なんだ』という暗示の演技だったのかっ!!だが来屠にはその暗示が通じないから愛おしい目を向けることによって神威の心が揺らぎまくる、現象。その名も『勘違い一方通行攻め』!!これはあのBL映画でしかお目にかかれないという伝説の一撃。魔王級の攻め!!これは、盛り上がって参りましたーー!!実況解説審判の僕が今から起こるサスペンス三角関係ロマン派ドラマチックラブコメディーを説明いたしましょう。選手は一見近づきがたいイメージの湧くこの世の生き恥、人類の失敗作、人生の全てを黒歴史に捧げた、押しの強い自己中の男子。『近藤桜星』だ!!ネクタイを引っ張られながら口説かれたい!!そして、宇宙最恐のブラコン妹を持った生物兵器至上最高にイタイ中二病患者『斑戎神威』だ。中二病用語で創られた未知の口説き文句で、異次元の夢の世界に導いてほしい!!そしてそして!!この方が生徒会長に基山を論破した『自分の権利史上最高主義』の目のクマが異世界級の美男子『影内来屠』様だ!!『女子しか交際対象じゃない!!』という凡人に男性愛を永久に語り、横にいる僕を抱き寄せて愛を語りつくしてほしい!!」
全部言ったわけだが、彼こそが恋華が嫌う神の敵『影内来屠』である。
「まぁ、俺ッ様以外の奴ッが笑うたァ良いことじゃッねェか。来屠は特によ。短ッけェモン抱えてりゃァ大変だろォしな。ッちッ、俺ッ様が代わッてやりてェよ。俺ッ様なンざ必要ッとしてくれッ奴がいねェからなァオイ。」
その圧倒的なBL愛を一同はさらっと受け流し、桜星は来屠の顔を見て本気で安心したような声を漏らす。一同も同じような感慨深い顔で来屠を見る。彼らもまた来屠の過去を知る者であり、特に彼を慕っているのが桜星だ。彼は本気で『世界の不幸は俺が存在しているせいだ。俺さえいなければ、・・・・・俺は人間の、全人類の、全生物の、全世界の、全次元の、全世代のゴミだ。』と思っており、
「本ッ当にすまねェ。・・・・俺ッ様がクズで、救いようのねェ害悪ッで、周りの奴にァ迷惑はかけたくねェッてのによォ・・・存在すッだけで来屠みてェな良いッ奴を不幸にしちまうンだ。・・・。」
桜星は本気で言っているのか目尻に涙を浮かべている。
だが、1人の涙で終わらせる真似はさせないらしい。神威は、
「落ち着け局長。なにもお前のせいではない。今までの時間で何もできなかった我にも責がある。・・・クっ!・・・・我が心臓・・・〈撃滅の天使と救済の悪魔と星譚の摩天楼〉が解放されていばこんなことには・・・・ッ!!」
心臓を抑えながらその場(座っている)にうずくまる。
天菜は、
「お兄様の親しくされている方ですから、お兄様が悲しいところを見たくはありません。お兄様を手に入れるのはお兄様の世界をもらうことですから、その世界が万全でないと貰っても嬉しくありません。だから、生きてください。何としても、・・・・でないとこれですよ。」
と、手持ちのバッグから包帯に巻かれた物体が出てきた。持ってる人がヤンデレなので何を持っているかは皆想像がついたようだ。
「なんでそんなもの持ってるのぉ?護身用?」
若干引き気味の業平がそんなことを聞くと、答えは質問の斜め上を行った。
「もしも旅行の途中でお兄様が他の男子に言い寄られたら、さぁ。・・・やらなきゃいけないときはやらなきゃいけないんだよね・・・・・・。まぁでもぉ、来屠君があっち行ったらさ、泣くのはお兄様なんだよね。だから・・・・・ね。」
天菜が不気味そうに笑う。
「くくくっ・・・・それは、僕も殺されないように頑張ろうかな。」
来屠も苦笑交じりで応じる。
「よかった。来屠君もなじめてるみたいで・・・。」
恋華はふとそう思った。だがそんな時もつかの間、グループの雰囲気が少しだけ和らいだ時だった。
「きゃーーーー!!天菜さん刃物持ってる~~~~~。危な~~~~い。怖~~~い。」
ちょうど恋華から背中が見える形となっているその女子は瀬戸川アリナ。恋華のクラスで上位カーストに属する人間。授業うるさい聞かない。ネイルも髪の染色も化粧もする。5股している。要するにクズ。パリピのなかのパリピ、キングオブパーリーピーポーである。
「ほんとだ~~~~。怖くね?」
「それな!!先生に報告だね!ウケるんだけど~~~。」
「そんなんもってるからボッチなんじゃんwwwww」
その他5人の連れが騒ぐ。
ふと、1人が言った。
「天菜さんって~~ブラコンらしいよ。キモくね?吐きそうなんだけどwwwwwww」
その瞬間、恋華の横から風が吹き抜けた。
「ぐッ・・・・うぅ・・・・・。」
鏡花がその1人の首を絞めていた。目が尋常ではなく鋭い。おそらくもう一つの人格であるのだろう。
「えっ!!待って待ってっ!!事件じゃん写真撮ろ~~。これはもう炎上っしょ~~ウケるんですけど~~~。」
アリナがスマホを取り出し、動画を撮ろうとしていると、さらに神威が猛然と駆け寄りスマホを奪い取る。アリナが「あ」と言う前に、スマホの電源を落とす。
「我がロットヘヴンを馬鹿にするなよ。愚民共がッ・・・・〈無慈悲なる激流と独裁帝の鉄槌〉ッッッ!!!!」
スマホを床に叩きつけ、ペットボトルの中身をぶちまける。おそらくコーラだと思われる液体にスマホが溺れる。
「待って・・・マジ・・・・で・・・苦・・し・・・い。」
「鏡花、やめてあげて。ここで死体作ってもいいけど僕は生きてる状態の身体の内臓の方が良いかな。」
樹が鏡花をなだめ、なんとか放し未遂で終わらせる。絞められた方はのどを抑えて咽ている。
「はぁっ!!意味わかんないんですけど!!ってか私のスマホに何してんのキモいんですけど!!」
アリナが怒り、スマホを取る。すると下げた頭に桜星がスプレーを吹きかける。
「な、なにコレ!?くっさっ!!」
自分の頭を掻き、臭いをかいで絶叫するアリナに桜星が上から目線で言う。
「ゴキブリスプレー『ゴキバースト』ッだ。ゴキブリに吹きかけッと、溶けてる二酸化炭素が出てきて窒息死するとかァ、そこにゴキブリが嫌う異臭が放たれるッつゥ代物だなァ。『人やペットにかけないでください』ッたァ書いてやがるッがァゴキブリ同然だから問題ねェわな。」
他のパリピに吹きかけるしぐさをすると、パリピは後ずさる。
「はぁっっ!!!??何で私がこんな目に合わないといけないのよっ!!」
アリナがキレだすが、来屠の目が尋常でなく殺意に溢れていることに気づき、息が詰まる。来屠はゆっくりと息を吐き、死にまくった虚構を見据える眼でアリナを含むパリピを睨む。
「あのさぁ、確かに天菜さんはボッチだけどさ、はぁ、それを公共の場で言うのはさ、天菜さんの権利の侵害だよねぇ。別に陰口程度なら目をつぶることができるけどさ、はぁ、僕らもさぁ君らが頭が牧場なのは知ってるからさぁ、少しの我慢はできるけどさ、はぁ、程度ってもんがあるでしょ。人は集団で生きる上ではお互いを思いやって妥協と配慮を繰り返す必要があるんだよね。現に僕らは最初の悪口を見逃してるわけじゃん。それに君たちに比べると僕らなんて持ってるものなんてたかが知れてるんだよねぇ。そこからさらに僕らに悪口を見逃す妥協とぉ、人権を侵害させる配慮をしろっての!?持つ者が少ない僕らからさらに何を取ろうって話かなぁ!?だからさぁ、はぁ、僕らは君らに同等の仕返しをすることが認められなきゃいけないよねぇ。さらに言えば、どうやり返しするかにいちいち口出しする権利なんて君らは持ってないんだよ。」
しっかりと自分の権利をまくしたてても一切聞かないのがパリピという生き物だ。
「知らねぇしっ!!」
「ていうかうざいんですけど。」
「イミフーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
「私なんか首絞められたしっ!!やりすぎーーー!!」
「土下座してよッ!!土下座土下座土下座!!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ連中に来屠は桜星に話合いのバトンを渡す。すると、桜星はもう一つのスプレーを騒ぐパリピに吹きかける。それはパリピの服に付着する。それはとてもかいだことのないような、ガソリンのような臭いだった。
「それッはガソリンだァ。あんまァうるッせェと燃やすぞオイ。」
すかさず、ライターを取り出し火をつけパリピに近づく。ドスの効いた声で脅すとさすがに効いたのかアリナは「あっち行くよ!!」と言って他の仲間を連れて行く。
その光景を見終わった桜星は火を消し、言い捨てる。
「最ッ低なのは俺ッ様ァだけでイインだ。・・・・クソッが・・・・。」
「いやぁ、別にさ、彼らがああなのは元からだと思うから君は関係ないよ。」
業平がすかさずフォローに入る。
「っていうかさ、桜星君はなんでそんなもの持ってんの?護身用?」
今度は樹がたずねる。どうやら恋華以外はお互い顔見知りらしい。
「自害用。」
即答だった。正直悪い意味で期待を裏切らなかった返答にほぼ全員が納得する。
樹「あ、うん。」
鏡花「そ、そうか・・・。」
紗耶香「寂しいけどじゃぁね・・・。」
優慶「お、おう・・・。」
天菜「させるつもりはないよ?(闇黒微笑)」
神威「クっ・・・これも運命なのか『虐殺世界に反逆せし者』よ・・・。」
来屠「・・・・・・。・・・・・・・。」
恋華「ちょちょちょ、なになに!?話を勝手に進めないでぇっ!!」
1人の女子によって全員が我に目覚めていく。そのあとは簡単だった。鏡花がそれぞれの個性が歪みまくってる人々を紹介していった。
「・・・・なんか、アレだね。類は友を呼。」
「ばねぇからなっ!!!」
恋華が呆れ交じりに言うと業平に即否定された。
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「この地で生きるBLが僕を呼んでいるーーーっ!!」
と、新幹線から出てきて背伸びをする業平。
「俺ッ様ァ、朽ち果てンならァ人目につかねェところがいいなァオイ。」
目がどんよりと曇っており、物騒なことを口ずさむ桜星。
「此処が我が力の一端を覚醒させる為の、試練の地か・・・・。よかろうならば真名を解ほ。」
「新しい地で新鮮なお兄様を見れるだけで私は満たされる。どれほどお兄様がイタくて醜かろうと、私はお兄様を愛して愛して愛して愛して愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛ぃぃぃぃぃぃ!!!!」
神威が黒いローブをはためかせカッコよく駅に飛び降りるて決め台詞を言うも、その次にその光景を見て、うっとりと完全に目をハートにする天菜によってかき消された。
「・・・・・。」
駅にいるガラの悪い男性をビビらせるほどの眼力で出てくる来屠。
「本当にさ、何で星章教の幹部が経営してるホテルに泊まらなきゃいけないかな?」
イラついたような声で出てくる樹。
「まぁまぁ落ち着いて、ね。もっと楽しいこと考えようよ~。」
彼をなだめて、腕を組んでくる鏡花。
「紗耶香さんはどうする?」
女性をエスコートするガタイのいい優慶。
「何をどうするの?とりあえず、ホテルに荷物置いていかなきゃいけないかな。」
キョトンと首をかしげる紗耶香。
「ほらー。みんな、先生から集合かかってるよーーー。」
最後に出てきた恋華が、皆を連れて集合場所に急ぐ。
ふと恋華が周りを見てみると先ほどのイキリパリピのアリナ達や、「ウゼェ」と心の中でつぶやく神俱斗と腕を組むリアがいる。リアは恋華を見た瞬間、新しいおもちゃを貰った子猫のように目をキラキラさせる。だが、神俱斗に声を掛けられた瞬間一瞬でゴミを見る目に変わった。
そこから先はあまり記憶がない。くだらない先生の話を聴いてからホテルに荷物を置き、いつの間にか、気づいた時には自由時間になっていた。そして恋華たちは清水寺にいる。
「ねぇねぇ恋華、これ飲むと学力が上がるらしいよ。」
鏡花が酌で注いだ水を飲ませようとしている。だが、樹が割って入ってきた。
「誰が口付けたか分からない酌に口付けるなんて正気の沙汰じゃない。口付けるなら一回拭いてからだ。」
と、鏡花から酌を取り縁を布巾で拭いた。そして恋華に預ける。
「あ、ありがとう。」
「いやさ、星章教のミサでこういうことしたんだよ。はぁ、やな癖だな。こういう時で役立つんだよ。」
ちょっと樹が照れる。そこへ優慶が入ってきた。
「樹よ。恋華さんが好きなのか?我にはやってくれなかったではないか。」
「は?何言ってんだ優慶、僕の意中の女子はもういる。それはこの前言ったじゃないか。」
「・・・・・あ、ああぁぁぁっ!!思い出した。確か
「言うんじゃねぇ!!」
優慶の口を樹が手でふさぐ。だがちょっと遅い。その情報は一瞬にして拡散される。
「え、樹君好きな女子がいるの!?青春だねー!!」
「へー誰かな(心読んだらすぐわかるけど、言わないでおこ)。」
「誰だろ。」
どんどん樹の頬が朱色に染まっていく。
「いいか!優慶!言うなよ!?僕はこれでも男だしびしっと決めたいんだ。こんな方法で知られたくない!?」
優慶に指を突き立てて言う。
「・・・。そうだな、男は女子に告白するときは正々堂々、真正面からだ。」
優慶はニッと笑った。
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「はい、おまちどおさま。湯豆腐だよ。味付けが足りなかったら言ってください。」
そう言って、僕らの机に鍋が置かれた。蓋を取ると、そこには純白の絹豆腐が横たわっていた。
「はい、お兄様。お口を開けてくださいな。」
「いやいや大丈夫。これくらいなら我一人でも食すことができるから。」
横を見ると、天菜が神威に詰め寄り、豆腐を食わそうとしている。このままでは横がうるさくて豆腐に集中できない!!
なので、神威を呼ぶ。
「神威。」
「何用だ世界樹の師範にして終わりの創設者。今はこの有様だ。手短に頼む。」
「天菜が神威を好きなら、好きになられた方にだってきちんと応える責任があるんだよねぇ。生半可な返事じゃぁさ、せっかく好きになってくれた相手の心の権利を侵害してしまう。」
そういうと、神威は「ふむ」と考えた後に、自身の茶碗に入れてあった豆腐に味噌を乗っけて天菜と向き合い、スプーンを差し出す。
「我は一方的に食わされるのは好みではない。なぜなら、我が食っているとき汝が食えないからだ。だからこそ等価交換だ。汝が食わせるのなら、我も食わそう。至高の一撃だ。喰らうがよい。」
そう言い、天菜と神威が両方同時に食す。やはり兄弟、仲がいいな。というか、豆腐に至高の一撃とかない。せめて至高の一口だろうに・・・・。まぁいいや、そこで男子との熱いやり取り見て鼻血出してるやつを除けば、案外平穏だ。桜星も目を棒にして食っているし、我もいただくとするか。
僕は箸で豆腐を切り分け、片方に醤油、片方に味噌をつけて一口ほおばる。んんっうまい。江戸時代では肉はあまり食べられなかったからこそ、豆腐は貴重なたんぱく源だった。それが喉を通り抜ける感覚が良い。そういえば、あの時から全然食べてなかったな・・・・。なんか目尻が熱い。何かが頬を伝って落ちてくる。桜星が僕を見て急いでティッシュを目に当てる。分かった。僕は今泣いている。あの時以来の豆腐だから、悲しみがあふれ出したんだろう。胸が痛い、胃が痛い、今日は朝から何も食っていないのに、出てくるものなんて何もないのに。
結局、僕は豆腐1個しか食べれなかった。




