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神様の恋バナ!  作者: 原初
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第4話「神のみぞ知らず」

 「神は死んだ」。これは、宗教ブームにフードリヒ=ニーチェが言った言葉である。直訳して「神がお亡くなりになった」のではない。実際は理解できないものを「神」として偶像崇拝し、人としての考える機能がほとんど機能しなくなった人間に、「『神』と呼ばれる『偶像』から離乳しろ。そして、しっかり目の前のことを考えろ」と考え続けることを促したのである。人は無意識にも意識的にも面倒くさくなった時、お手頃な『常識』を使って一時的にその場をしのいでいるのである。


 第4話「神のみぞ知らず」

 

 教室だろうか。どうやら小学校のようだ。

 そこには1人の少女が泣いていた。目にたくさんのクマが付いていた。絶対忘れられない、あの少年のような不健康を極めたような目つきだった。

 

 「=============!!」

 

 茶髪の如何にもチャラそうな男子が数人その少女を取り囲んでいる。騒ぎ立てる者。あざ笑う者。憤怒にまみれている者。

 

 「”””””””””””””””」

 「=============================」

 「”””””””””””””””””””””」

 「===========」

 「””」

 「””””””””””””””””””””””””””””」


 黒髪の男子が茶髪男子に声を掛ける。凄く困ったような顔をしていた。だが、すぐに茶髪男子に言いくるめられたようだった。

 囲んでいるのは子供だけじゃないようだ。地球でいう「大人」という生物だ。校長先生と教頭だろうか。止めるという意思がなく、その少女を罵倒しているようだった。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・!」


 一言だけ。少女は言って、後は黙ったままだった。


 そのあと、救急車やパトカーが何台かその学校に来た。校長と教頭、そして全生徒がグルとなり、何かしらの作り話を警察に話していた。

 

=================================


 今日は新高1の全生徒が星章教本部に参拝する日。恋華を含めた鏡花や樹、来屠、その他の生徒が本部に来ていた。どうやら星章教は多くの信徒を抱えているようで、参拝の時には多くの信徒が来ていた。星章教本部の内装は豪華で、昔の城の中身みたいな状態だった。

 「じゃぁ、クラス別に参拝をするからうちの組はあっちの部屋に移動するぞ。」

 担任の柳が言った。

 「ねえねえ恋ちゃんは何を神様にお願いするの?」

 リアが駆けよって恋華に話しかける。恋華はものすごく顔が赤くなった。なぜなら、

 (だってだって私神だよ。神が自分が祀られているところに他人を入れるんだよ。恥ずかしいったらありゃしないよ。)

 それを見たリアはこっそりと恋華に囁いた。

 「・・・・もしかしてぇ~、好きな人ができたとか?」

 周りにいた男子モブが一斉に目を開き、恋華を見る。恋華は周りのモブ共の脳内を覗く。凄く嫌な予感がした。

 「す、すすす好きな人が恋華さんにィっ!?」「お、俺かな?俺なのか?頼む俺であってくれ!」「クラスのマドンナに好きな人が、・・・・いや、まだ月之宮さんがある。」「コポコポォ。クパアアアアァァァァァッ!!」「あの完璧超美人が惚れる男子が、・・・基山か?き、基山コポオオオオオオォォォォォォオオオ!!」「基山はプライドが高いから恋華には不釣り合い、他の男子は脳内お花畑で論外。なら、消去法で僕か。くくくくく・・・・・。」「うにゅらうにゅらうにゅらうにゅらうにゅらうにゅらぁ!!!!!」「ウホ?ウホウホウホウホ。ウフォフォフォフォフォオオオオオオオッ!!」

 

 (やべぇ!!こいつらの頭の中『恋華』で溢れかえってる。こっわ。途中から、人間辞めてるやつ居るし!)

 クラスのモブ男子の刃先が恋華の好きな人(残像)に向いた。さらに、リアがとんでもないことを呟く。

 「で、その好きな人と恋人同士になれるように神にお願いすると・・・・縁結び!?」

 超意味ありげな視線を恋華に送り、人差し指を口に当て、可愛く否、あざとく「内緒ね。」とつぶやく。これには多くのモブの思考が一つになった。

 「絶対、恋華さんと恋人になれますようにィっ!!!」

 

 (ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!怖い怖いあと恐い。っていうか丸聞こえじゃないか!!)

 願いやら希望やらと人はよく言うが、これはもう一種の怨念である。この願い?を聴く神様も大変だろうに。だが、リアの隣にいた鏡花や樹、優慶などの男女人の願いは全く違っていた。

 鏡花(っていうかよぉ、本当にここに神がいるのかよ。)

 樹(時代劇でよく見る悪代官の装飾って感じだよね。悪神とか祀ってそう。)

 優慶(なんつーか、表だけ『神』って感じだな。女DQNのメイクみたいにすぐ落ちるんじゃねぇか?)

 紗耶香(周りの信徒は心がこもっている風に見えるけど、建物は欠片も神聖さを感じないのは何でだろう。神?を祀っているならもうちょっと神聖さを出さないのかな?)

 恋華の恋愛事情なんざどうでもいいと言わんばかりの、建物への愚痴だが、確かにそうかもしれないと恋華は思う。

 (新築の教会って言うには間違いはないか。神聖さというより豪華さが上回っているからな。)

 というよりも『神聖さ』とはどのような感じ方なのだろうか。どういうものが『神聖』であるというのか。結局、考えて行きつく先はそこであり、考えつく疑問もそこで途切れる。勉強も同じで、考え方が途切れてしまえば他人の意見を聞くことが良いという結論に至る。

 恋華は、他人であり、なおかつそういうことに関して異常なまでの知識を持つ『彼』に聞くことにした。

 「ねぇ、来屠君。『神聖さ』って何だと思う。」

 今日はいつにも増して刃物のような目つきをした来屠に恋華は聞く。来屠はいつものように理論を展開する。

 「神聖の基本的な意味は『けがれなく、尊く、清らかなこと』を意味する訳だけど、ここは『神聖』ではないかな。そもそも『神聖』なのはまだ発見されていない大自然の森とかのことを言う。教会は人工的に造られているし、『けがれている』人が何度も出入りしている。でもみんな自分のことはけがれていないというけど、欲がある時点でけがれているし、欲のない人間はこの世界には存在しない。だから、教会や遺跡が『神聖』かどうかと聞かれると、『神聖ではない』というのが一番正しい。」

 「つまり?」

 「『神聖さ』はまだ人間が足を踏み入れていない土地の状態表現ってことさ。」

 今度は長い溜息を吐き、本部の通りを歩いている信徒を睨む。きっちりと黒服で飾る信徒だ。

 来屠はボソボソと独り言を呟く。

 「日本は昔から黒い猫やカラスは縁起が悪いとされている。この星章教も同じ考えを経典に記している。なら、なんでそんな縁起の悪い服を着た信徒がこの教会にいるのか。そして、教会がなぜそれを許すのか。」

 参拝場所の大広間の襖が開かれ、生徒がそこに入る。横には多くの僧が書物を見ている。一番前には羽織を背負ったお坊さんがいた。恋華らがそこに足を踏み入れ、「正座」しろと号令が下った。

 「ここには神がいないからだ。」

 

===================================


 目の前はただひたすら金色の偶像が並んでいた。

 初めて見るが、見ただけで中身のない皮だけの偽物なのがよくわかる。ひと昔前のエビフライみたいだった。皮が異常に厚くて、中身がちっちゃい。あれは油濃くてまずいと婆に聞いたことがある。

 目の前にあるのは地球儀を見る神(笑)だ。全部黄金を塗ってあって『神聖さ』の『s』もないくらいの粗末なものだ。

 あんなボロクソが本当に『神』なら俺の人生はアイツの玩具だったワケだ。ほんの一瞬の暇つぶしに過ぎなかったワケだ。そんなの俺は許さないし、これからも『神』を嫌う。

 あの頃の瞬間瞬間が、俺の脳内でスライドされる。

 

 「では、目の前にいらっしゃっている星章神を形どった偶像にお辞儀を。8秒間の間、顔を上げてはいけませんよ。」

 と、お坊さんが指令を出す。

 『この指令に従いますか?』。答えはもちろんNOだ。お互い初対面の時は印象が大事だと言われる。なら、俺がすることは威嚇。

 そう決まったら話は早い。俺は皆がお辞儀をしても絶対に頭を下げず、目を鋭くする。いや、目はもともと鋭いからいいや。覇気を出・・・・・いや、元からないんだった。なので、全身全霊をもって、目の前で、お気楽に地球儀を回す貴族のような偉そうな服をきた『偽神』を睨む。

 だが、目の前には樹があぐらをかいて腕をついていて正面から睨めない。左を見れば鏡花に紗耶香。さらに真横(右)には優慶が溜息をもらしていた。こいつらも『神(?)』が嫌いなのか・・・・。

 リアは俺を見て、苦い顔をしている。恋華に関しては、周りの男子からの熱戦のような目線を当てられて、顔をそらしている。

 ・・・・上野恋華か。なんていうかいつもの顔とか動作とか全部フェイクに見える。美人・・・かどうかはまだしも、なんていうか、『理想の世界の住人』って感じで現実感がない。

 

 「はい、ではかの偶像の前で5回手を叩きもう1回お辞儀を。」

 お坊さんが言うが、紗耶香に鏡花、樹に優慶、俺と珍しくリアは2回だけ手を叩き、お辞儀をしなかった。

 

 「では、顔を上げて私に続いて復唱してください。『今この時、あなた様に作られた生物の継承者たちが、馳せ参じました。』。」

 紗耶香「今この時、君に作られた覚えのない私たちがわざわざここに来てあげました。」

 鏡花「あんた頭でも打ちやがったのかぁ?オレの親はあんたじゃねぇんだよ。」

 樹「はぁ。君に冤罪を着せられて追放された樹様が来てあげたよ。」

 優慶「いくら『神』だからと言って、『ようこそ』くらい言うべきじゃないか。うちのボスだって俺達と同じ立場になって話してくれていたんだぜ。」

 俺「あのさぁ、クソくだらないゴミが気高き僕に対してとる態度どうなってんのさぁ。『神』ごときが僕の人生を語られる筋合いは無いんだよねぇ。」

 皆が全部言い終わっても、俺と優慶は最後まで堂々と大きな声で言った。辺りはもぬけの殻の如く静かになり、お坊さんや先生、横で書物を読んでいた僧までもが開いた口がふさがらないようだ。

 「やばいぞ、アイツら星章教に喧嘩売りやがった。」「天罰下るんじゃないのか。」「ウホォォォォォォォ。ウフォオオオオオオ!!」「うにゅらうにゅらうにゅらうにゅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」「コポオオオオォォォォォ!」「クパァァァァァァァアアア!」

 周りの奴もどよめき始めた。・・・やっぱり人間じゃない生物が何体かいるようだな。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 恋華が俺を凝視してくる。まただ。恋華が俺を見るたびに何かがオレの頭に触れようとしてくる。本当、アイツ何者だよ。

 先生が騒ぎを制そうとすると、中から1人の男子が立ち上がった。七三わけの髪型で眼鏡をかけている。そいつは憤怒の形相をしていた。なぜかって?さぁな。

 「今さっきから見ていればそこの男子3人と女子2人!その『星章神』様に対する怠慢な態度は何だ!ご愁傷様を『星章神』様にするとはどういうことだ。さらには『星章神』様を侮辱するような怠惰で傲慢な言葉の数々。でもってそこの目の腐った男子!『星章神』様を睨むとはどういうことだ。」

 確か、こいつは星章教の現在司教の長の息子、・・・・星章せいしょう天嘉数あまかずだった気がする。

 だが、反撃の言葉と理論はもう用意してある。可哀そうだが、『神』を誇示しすぎたようだ。神の世界のヒエラルキーの頂点。その真骨頂を見せてやろう。

 

===============================

 

 「あのさぁ、目の腐ったってさぁ、僕を馬鹿にする発言だよねぇ。それって僕の名誉の侵害だよねぇ。」

 来屠がそういうと、天嘉数はその言葉にイラっと来たのか、言い返す。

 「この座敷では『星章神』様が絶対なんだ。だから、僕がどれだけ君に暴言を吐こうが、それが本当である限り、僕が攻められることはないんだよ。」

 来屠は1回長い溜息を吐くと目を最高によどませながら、哲学の刃を鞘から抜く。

 「そもそもさぁ、此処に『星章神』っていうボロ雑巾は本当に『絶対的』なのか?そもそもそういう『神』はいるのか?」

 「いるさ。歴史書には会った人が何人もいるんだ。」

 「『歴史』か・・・・。結局情報だけで決めているのか。」

 その言葉に、基山の肩がビクッとはねた。先日、『情報』によって友達だと思っていた存在を失ったばかりだ。

 『情報』・・・・それが正しいか正しくないかわからない触れられない世界だ。歴史書となれば信用できる要素のほうが多い。歴史的なものだと、ウソもすぐにばれるが、宗教的な書物は数が少ないうえに、ウソを書いていても証拠がそれだけしかない為信じるほかないのである。

 「その昔の人は本当に見たのか?」

 「見た人がいるんだ。当たり前だろう。」

 「違う。論点がずれている。僕が言っているのは、『神』を本当に見たかどうかじゃなくて、『神』の存在の有無なんだよねぇ。『見た人がいる』からじゃぁ、『僕は見たことないから、神はいない』ともいえるんだよ。過去の人の見聞き以外で、『神』の存在の証明をしろって言ってるんだよね。」

 「歴史書にちゃんと書いて・・・・・。」

 「歴史書にウソが書いてないと言い切れるのか?その証拠は?」

 「・・・・・・。」

 天嘉数は即座に黙り込んだ。歴史書の時代は戦国時代、つまり今のようなカメラ、録音機がない時代なのだ。神を写した絵があるが、想像で描いたかもしれないし、背景に関してはいかにも極楽浄土のようで、来屠を説得できない。何年も信じていた『星章神』がこんなにもあっさり否定されるとは思っていなかったのだ。

 そんな時、一人の野太い声が響いた。

 「星章神様は我らの心にあり、同時に全世界を見ています。私は感じますよ。心の中に『星章神』様がこちらを見ているのを。」

 今さっきまで偶像に向かっていたお坊さんだ。胸に手を当てて優しい声音で言った。

 「いや、僕は感じないね。そもそも僕の中に『神』がいるなんてさぁ、面白い考えだけどなんか気持ち悪いなぁ。」 

 来屠は即座に否定から入った。だがお坊さんの回答はふざけ切った答えだった。

 「『星章神』様の存在を認めなさい。そうすれば、『星章神』様を我々のような未熟な生き物でも感じ取ることができます。」

 結局、宗教関係の信者は『神を信じれば、神を感じることができる』という理論に至る。これだったら、そこらでイキる中二病患者の方がマシだ。本気で信じれば神が自分の中にいると錯覚する心理的現象である。

 恋華ご本人が神なので、心に『神』がいるわけがないのだ。

 知らぬうちに、他の来訪者もその討論を面白がって見に来ている。

 『信じれば神はいる』、そんな理論は当たり前だしそんなくだらない理由で『神』の存在が証明されるのなら、『信じなければ神はいない』ともいえる。だが、宗教的概念はそれを許さないし捻じ曲げてくる。それが今となっては、『信じないから天罰が下るし、不幸になる。全霊をもって信仰すれば、報われる(気がする)。』だ。だからこそ、来屠は宗教を嫌う。神も嫌う。それだけが理由ではないが。

 だが、そんな答えでひるむ来屠ではない。これは延長戦になると想起し、かの有名な『無知の知』の基盤となった『問答法』を使うことにした。

 「・・・星章神ってどんな神なの?」

 これには天嘉数が答えた。

 「星を創造したり、天気を操り、災害や恵みを与える。そのほか、生物の心に寄生し目の前の全ての感情や状況を共有できるのが『星章神』様さ。」

 「何で『星章神』何だろうねぇ。星を作って天気を操るのなら『星天神』でもいいじゃん。」

 これまた天嘉数が答える。

 「歴史書には、会った人に『星章神』と名乗ったからと書いてある。」

 言った後、天嘉数は言葉に詰まった。「歴史書」という真偽の定かではないことを口走ったからだ。だが、来屠はそれを気に留めない。とりあえず全肯定する。その中での不可解なことを問うのが『問答法』だからだ。

 「じゃぁ何で、『星章神』は星を創造したり、天気を操れるんだろうねぇ。星に関しては実際に作ったところを見たのかなぁ?」

 その質問は効果があったのか、天嘉数は言葉に迷った。

 「いいえ、実際のところ流星をつくったと記されているので、地球規模の星を作ることができるかは知りません。この星を作ったのは私だと『星章神』様が言ったので作れたかもしれません。天気も同じく、操れると言っているので操れるのではないでしょうか。」

 お坊さんが言った。

 「・・・その星章神にあったとされている人ってどんな人なの?信者?」

 「星章教の信者ではありませんが、神を信じていた人だと書いてあります。」

 「あなたたちだって星章神を愛する信者でしょう。なんで、あなたたちは1度も会っていないのですか?それは不公平では。『神』はそういう差別をするのですか。」

 その言葉につられてやってきた信者は憤怒の形相を浮かべて、吠えた。

 「あぁっ!?『星章神』様が差別をするわけないだろ!!あれは俺らよりも熱心に『神』を信じていた人だから会えたんだ。」

 「じゃぁ、そこの信者さんたちに質問。それはつまり、あなたたちは熱心に星章神を信仰していないから、神に会えないと言っているのですか。それは余りにも怠惰では?その堂々とした態度も傲慢では?」

 案外考えていないでモノを言った信者は全員押し黙る。

 「星章神が星を作る神なら、宇宙にみちる闇黒物質を作ったのは?」

 「それは、生まれた星の効果で・・・。」

 「じゃぁ、星章神って存在があるなら、それを作ったのは?」

 お坊さんが答える。

 「それは我々にも分からない。星章神様のみが知っている。」

 恋華はこれによく似た言葉を知っている。

 (神のみぞ知る・・・・。人間には知らなくてよいコト。)

 「何で星章神しか知らないの?」

 「・・・・・・・・・・・・・。」

 「こっちに樹っていう『元』・星章教信者がいるけどさぁ、樹ぃ星章教ってどんな感じだった?」

 それを黙って聞いていた樹は、めんどくさそうに立ち上がり、告げた。

 「そうだね。外国の星章教だから少しの誤差はあるかもね。えっと、1つ。『星章神』様を罵ってはいけない。2つ。『星章神』様には尊敬語を使う。3つ。参拝するときは黒服で。4つ。日曜日は10時間祈る。5つ。星章教に入ったら、他の宗教や神を信じることを禁止し、1日2食までとする。・・・・・・以下省略。」

 「じゃぁさぁ、何で『神』を祈るだけでそんなことをする必要があるのかなぁ?」

 食ってかかったのは天嘉数だ。

 「それは『星章神』様に祈ることに必要だかr・・・。」

 「でもさぁ、僕らはそういう格好をしてないよね。日曜には10時間も祈ってないよ。」

 「えと、それは・・・・・・。」

 「っていうか、そんなことしないと神を祈れないなんてさぁ、この宗教は暇な人しか入れないんじゃない。」

 「そんなことは・・・。」

 「この宗教の教典のコピーした(外国版)のを樹が持ってるけどさぁ、中には『神の前ではすべての人が平等であり、他人を罵ることをしてはいけない。』、『神の生んだ星の生き物にはすべてに生きる意味があり、その人その人の思想や人格を理由に社会的にも宗教的にも家庭的にも追い出されてはいけない。そういう人がいれば、敵味方関係なく助けること。』ってある。だったらさぁ、何で僕のことを『目が腐っている』なんて言ったのかなぁ。君の悪口は認められるのは何で?神の生まれ変わり?」

 「え、あ・・・・いや。」

 「ここにいる樹は、外国で『悪魔』扱いされて、追い出された人間だ。なんで教典に反しているのかなぁ。」

 「外国の問題だし、それは、・・・。」

 「こんなに多くの縛りがあって、『星章神』様は本当にいるの?樹の心に神がいるなら、星章教は妥協するべきだったんじゃないの?」

 「・・・・・。」

 「いわば、星章教の規則は、『星章神』という神の存在がいないのを隠すためにできたんじゃぁないの?」

 「・・・・・・・・。」

 「結局、心なんて目に見えない証拠より、きっちりとした証明はできないの?」

 「・・・・・・・・・・・・。」

 「神なんでしょ。そのくらいできないの?できないのに神なの?こんな規則作らないといけないくらいの神なの?信者を簡単に追い出しといて、今まで知らないふりをする神ってどうなの?教典と違う行動をする神ってどうなの?何で神しか知らないの?何で心にいるの?脳に寄生したっていいじゃん。信者が一般人に暴言吐いて許される神って何?神なのに何で人間の姿な訳?」

 「・・・・・・・・。」

 「・・・・・・・・。」

 お坊さんも天嘉数も黙ってしまった。

 「ねぇ、そうなるでしょ。どれだけ信者やっているからって言っても、『星章神』の何もわかっていないんじゃぁ、答えられるものも答えられない。君ら信者はさぁ、『星章神』の深淵を覗いていないんだ。『恐れ多い』、『神のみぞ知る』、そんな言葉で考えることを放棄しているんだよ。宗教は『こういう神がいたらいい』ってだけであって、『実際にこういう絶対的な『神』がいる』っていうべきではない。それは本当は僕みたいな最低辺の人間じゃなくて、君らみたいな大人が分からないといけないんだ。」

 お坊さんも、天嘉数も、周りの信者も誰も何も口にしない。恋華もリアも優慶や鏡花、そのほかの生徒もだ。

 そこにまた新たな人影が見えた。黒い着物に眼鏡をかけた人物だ。年は80くらいだろうか、こころなしか天嘉数に似ている気がする。

 「あっ!星章教統括理事会の長様ではありませんか。」

 「じっさま!」

 お坊さんや横で書物を読んでいた僧に、天嘉数までもが頭を下げた。信者たちは上層部があることすら知らないようだ。クラスの生徒は全員呆けた面をしている。

 鏡花などの(神に対しての)アンチはしっかりと針のむしろに座っているような顔だ。

 再び樹が口を開いた。

 「・・・確か、こちらのお年寄りは星章教統括理事会の現在理事長をしている、星章せいしょう鯉鷲りしゅうだったはず。ですよねぇ?」

 沖野鯉鷲。ボランティア活動や、数々の会社を経営する星章教の方針を決める、統括理事長である。名前が『リス』に似ているから若いころに『シマリス』と先生に言われたのは現在もトラウマである。

 「確かに、ワシはゴボウのような老いぼれだが性格はド根性大根よ。挨拶はいい。今さっきの少年の問いにワシは強く胸を打たれた。確かに『星章神』様を祀っているなら、『星章神』様をよく知るべきだと思う。その『星章神』様の世界と、現実を入り混ぜて事を考えるのを止めるほど愚かなことは『星章神』様も望んではいないだろう。」

 鯉鷲はつかつかと歩き出て、星章神の像の前まで来た。そして、来屠をに向き直る。一瞬、尋常ではない不健康の極みと言える目のクマと、鋭さを見て息詰まるが、しっかりと物おじしない態度で言い張った。

 「例え『星章神』様が虚像であろうが、ワシらの心に『星章神』様は生きておられる。ワシはそう信じたい。」

 鯉鷲は胸をどんと叩く。

 恋華は今更になって気づいた。

 (っていうか先生、完全に空気じゃん。)

 

================================


 うちのクラスは、騒動の一軒もあって一番遅くHRを終えた。

 (しかし、今日も今日とて、来屠君は何を考えているのやら。私にはまったく分からないかった。でも、『それ』が理解できないから、考えるのをやめるのは愚かなこと。)

 私は帰り道の途中にある桜丘公園に行く。私はそこで思いがけない人物と出会った。来屠だった。桜丘公園には無料の望遠鏡が付いた高台がある。来屠はそこにいた。望遠鏡で何かを見ている。恋華は視力を操作し、大気圏から消しかすを見つけるほどの視力にし、来屠の見ている方向に向く。そこには黒い高級車から出るフードを被った女子がいた。

 (えっ・・・・・!!変態っっ!?)

 だが、出てくるのは絶世の美女ではなく、左目以外包帯で巻かれた残酷な姿だった。

 来屠は言葉を失ったようだ。だがすぐに走って、階段を駆け下り、その公園を出ようとする。だがすぐに足を止める。私に気づくより先に彼の思考そのものが何かを考えたのだろう。

 そのあと、来屠は私を見る。相変わらず腐りきった社会の闇を表現したような目だ。そして一言。

 「考えるときに必要なのは3つ。考えるべきポイントを間違えないこと。考えつくすこと。そして。」

 ただ私の横を歩いているだけなのに、やけに遅く感じられた。

 「他人の意見も聞くことだ。」

 私は急いで家に帰り、電話帳の中身を確認した。そこにはある人の名前が載っていた。思念から読み取ったこの顔で間違いないだろう。

 私はすぐにその人宛にメールを送った。

 

 上野恋華。謎多きおばあちゃんの唯一の知り合いであるあの人に。

 

 影内来屠が良く分からないことを言うのと、このおばあちゃんが残した『問い』はかなり似ている気がした。

 

 返信は案外早く来た。

 

 「土曜日」。明日である。

 

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