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目立つとロクなことない……本当に。  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
episode1 月下の女王と日陰の支配者
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第五話 面接

 純平は牽制の一発を入れ、すぐに地から足をはなし離陸。森の上、アジトを右手側に添えて、青いLS2〈aqua(アクア・)O‐(オー・)light(ライト)〉と対峙する。


「――青くて、綺麗で、輝いて……なんともまぁ、目立つことで」


「射撃良し。指揮は及第点、近接はどうだ?」



――勝機なし。



(あの三人が落ちたならもう存続は無理だ。後はどう被害を少なくするかだな……)


 純平の判断は早かった。


(適当に相手してから()()()()。目に見える武装はでっけぇ斧一つとちっちぇ斧が四つ。他にも端末系統が多く見えるな……申し訳程度にサブマシンガンを背中に掛けてるが、あんな勝手の悪い場所に付けてるんだから見せかけ確定。完全な近接特化、しかもLS2。張り付かれたら俺のLSじゃ剥がせない)


 純平はメインウェポンである狙撃銃をLSの臀部にくっ付け、LSの背中収納BOXに付いている棒状の端末ブレードを手に取る。LSの手のひらサイズの端末から短い光刀が噴出される。


「逆手持ちか。珍しいな」


 純平のLSは右手に逆手で刀を持った。

 飛来するLS2は両手で斧を振り下ろす。純平は真っ向から刃を合わせようとせず、斧の軌道を誘導するように刃を薙ぐ。受け流しの構えだ。


 ブルーは試すように軽く斧を振り続ける。それを純平は全て流し切った。


(コイツ……明らかに手を抜いてるな。それでも凌ぐのがやっとだが)


「近接はそこまででもないか。筋は悪くないがな……やはり、君の得意分野はアウトレンジか」


 LS2は唐突に距離を取った。

 純平はLS2の動きを見て、仄かにイラついた。


「距離を取らせてやる。中距離の動きを見せてくれ」


「舐められてるな……さすがの俺も、ムカッと来るぜ。――後悔させてやる」


 純平はまっすぐ、アジトへと向かった。

 その明らかな逃げ腰からブルーは純平に戦う気がない事を察する。


「そう来るか。ならば仕方ない」


 LS2に背中を向けながら、ガチッ……と列車の連結が外れるような音を純平は拾った。


(なんだ? この音は……)


「こういうのは圧迫面接と言うのだったか?」


 音は青のLS2から聞こえたものだ。

 ブルーのLS2〈aqua〉は、手に持った斧の刃の部分と柄の部分を分離させていた。斧刃と柄を光の鎖が繋いでいる。


 連結斧〈リールアックス〉。


 LS2は柄を持ち、大きく振るう。鎖は伸び、その先に付く斧刃は70m先に居る純平のLSの左手を切り裂いた。飛び跳ねたLSの左手を見て、純平は奥歯を見せた。


「釣り竿斧!!? ……間合いが読めねぇな!」


 刃が当たるギリギリまで背面を向けていたのに、すぐさま攻撃に反応し、向き直り、致命傷を避けた純平のLSを見て、思わずブルーは息を呑む。



「反応しただと?」



 死角からの突飛な武器攻撃。まず、不意を突かれるはず。なのに純平は反応した。

 現に傭兵団の三本柱はこの攻撃に反応できず、僅か三太刀で撃墜された。


 ブルーは冷静に、目の前のパイロットを分析する。


(遠方からの射撃、優れた回避能力。よほど眼がいいパイロットだと思っていたが、今の私の攻撃は完全に視界外から放ったものだ。それを躱された。まさかこれは――)


 ピカッ。と金色の光が思考中のブルーの視界を支配した。



「照明弾ッ!」



 暗闇での戦闘では大抵のLSが照明銃を持ち込んでいる。もちろん、純平のLSも装備しており、ブルーもそれは確認の上だった……だが照明弾を敵機にぶつけるなんて攻撃方法はブルーの経験の外のモノ、ブルーは完全に虚をつかれた。


 ブルーが見失っている内に、右手の照明銃を捨て狙撃銃を手に取って引き金を引く。光に紛れた影からの光弾、しかしそれも青いLS2は避けて見せた。


「なんでこれを躱せるんだ? 一体どんな化物が乗ってやがる……!」


 足を止めたLS2を置いて純平のLSは煙を上げながらアジトに不時着する。

 ブルーは思いもよらぬ狙撃手の攻撃の組み立てに心を躍らせていた。


「……面白い。照明弾をこんな使い方をする奴は初めて見た。柔軟な思考、実行する度胸。一瞬たりとも動きを止めない行動力。戦闘技術もさながら、視野も広い。――だが私に傷一つ付けられないのなら、合格は与えられんぞ……」


 純平はLS胸部のコックピットを開け、飛び降りる。

 目指すは格納庫、そこに残っているある一品――


「俺が使う予定じゃ無かったが、仕方ないよな……」


 それは、どこぞの依頼人が正規軍から盗んだいわくつきのL()S()()

 漆黒の装甲。左右対称に三枚ずつ合計六枚の長方形の翼が背中に付いている。一番上の羽には左右どちらにも髑髏のマークが付いていた。


 純平は側の装置から暗号を入力、コックピットを開く。付けっぱなしの起動キーを右に回し、エネルギーを這わせ、左右のキーボードから環境データを入力。緑色の光が一眼に灯るのを確認して、跪くLS2を起こす。


「お頭は確か〈黒蠅(コクヨウ)〉って呼んでたか? 元の名前は違うだろうけど」


 全身に月光が満ちると同時に、正面のシャッターが崩れ落ちる。

 斧を持ったLS2は静かに、自分と同次元の機兵を見ていた。



「そうか、それが盗まれた空の王と呼ばれるLS2……」



 純平はLS2の拡声器で声を蒼き機兵のパイロットに届ける。


「アンタらとしては傷つけたくないモンだろ? 人質代わりだ、俺を逃がしてくれたら無傷で返してやる」


 正面の機体は斧で空を薙ぎ、“言語道断”の意思を表した。



「ま、信用されるわけもないか。――なら力づくで通してもらうぜ」



 黒いLS2は天井を突き破り、月を背景に空へと飛びあがった。

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