表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目立つとロクなことない……本当に。  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
episode1 月下の女王と日陰の支配者
1/21

prologue “パイロット不足”

「パイロット不足だ」


 朝一番、まだ太陽も寝起きの刻、ブルー=ロータスは上官にそう言われた。


 パイロット不足。その言葉をブルーは脳内で“優秀な”パイロット不足だと変換させた。現在、ブルーが所属するウルス共和国直属軍〈COLORS〉には多くのパイロット志望者が居る。が、実力が伴わない者ばかり。ブルー自身、積極的にスカウト活動をしているものの、目ぼしい人物は見つけられずにいた。


「ブルー。近々、ゴートン大佐を中心に遊撃隊を編成する話は知っているな?」


 フォックス司令官の問いに「はい」とブルーは返す。


「あの方ならば曲者たちをまとめ上げられるでしょう。しかし、帝国に攻め入るにはリストのメンバーだけでは難しいです」


 ブルーは青い眼光を煌めかせながら淡々と言い放つ。可憐な女性ながら豪胆で一切の隙を見せぬ立ち振る舞いに、フォックスは少し気圧された。


「私が前に出れば守備は脆くなり、私が下がれば攻撃力は激減する。せめて、私が前に出ている間に艦の防衛を任せられる人材が居なければ、遊撃隊としての機能は損なわれるでしょう」


「アルフレッド中尉はどうだ? 君に負けず劣らずの心構えを持っていると思うが……」


「心構えで技術が伸びるのなら、全ての訓練は滝行にでもすればいい」


「…………。」


 不遜なブルーの態度。

 フォックスは手に持った書類を机に置き、顔の表情筋を緩めた。


「――ねぇ、ブルーちゃん。お父さん相手だからってなんか言葉きつくない? 明らかに上官に対する態度じゃないよね?」


「お言葉ですが、私に父など居ません。母は生涯独身ですので」


「それ、人の仕組み自体否定してるけど……たった一度の浮気で母子共に手厳しいったら――」


 実の娘のはずの人物から汚物を見るような視線を浴びせられ、フォックスは咳ばらいを挟み上官としての態度へ戻った。


「……君と同等のパイロットとなると、本隊のグレン少佐か、後は暴れん坊のホアン大尉……どちらも動かせる駒ではないな」


「ならば、クリード中将はどうですか? いつも暇そうに中庭で眠っています」


「将官クラスをパイロットとして前に出せるわけが無かろう。――仕方ない。また編成案を練り直そうか。話は変わるがブルー大尉、君に任せたい仕事がある」


 最高司令官直接の特命。だとするならば、ブルーが表情を引き締めるのも無理もない。

 フォックスは「大したことではない」と前振りし、指令を伝える。


「東の湿地帯にとある傭兵団が居てな、これを殲滅して欲しいのだ」


「傭兵団? 盗賊ではなく、傭兵ならばわざわざ出向くほどの――」


「いや、これが厄介な傭兵たちでな。〈crow〉と名乗るだけあって雑食、善悪問わず依頼を受け、軍にも少なからず被害を与えている。君の手で、手早く討伐してくれ」


「…………。」


――傭兵団、か。


「了解しました。隊を一つ借ります」

タイトルは手堅く『月影の狙撃手』にするか迷いましたが、こっちにしました。どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ