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完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
序章
7/88

七星 その1




翌日、正午ごろの学校敷地のプレハブ小屋にて。

「ジョーンズ先生」

リアスが扉を開きピョコッと顔を出す。

「おっ、また来たか」

また試験管片手に何かやっている。服装も何もかも昨日と同じで衛生面を疑う。

「ジョーンズ先生っ」

ユノはリアスを小馬鹿にするようにマネて言った。それに対しリアスは不満そうな顔つきをする。

「昨日会ったばかりなのにやけに仲良くなったな」

ハハハと軽く笑うと、何も言ってないのにボールペンを取り出した。

そしてボールペンを縦に立てると、指を離し倒れさせる。

「今日の方向は…左前、ほぼ北だな。案外学校の中にいたりして」




「なんで休日に学校来ないといけないんだ…」

不審な動きをしながら、昼過ぎの学校に1人でいる少女。

韓紅の肩辺りまで伸びた髪にサイドテール。紺碧色の鋭く射抜くような瞳。髪には7つ、三角形の髪飾りがついている。

光沢のあるライダースジャケットを身に纏い、季節感もクソもないホットパンツと黒いハイソックスを履いた胸の貧相な少女。

彼女の名はコリオ・バトラー。

いかにも不良っぽい姿でも一応高校一年生の彼女は、何故か教師に呼び出されて、嫌々学校にやってきた。

大量のロッカーが立ち並ぶ廊下を、昼なのにまるで肝試しをしているかのごとく歩く。見た目に反して怖がりのようだ。


「ひゃっ!」

視線の先にある廊下の曲がり角から子供が顔を出した。

オーバーオールを着た7歳ほどであろう茶髪で小柄な少年は、コリオを物珍しいといった目で見つめる。

「……」

何も言葉を発さず、子供は顔を引っ込める。

怖がりなのに好奇心で進んで後悔してしまうタイプのコリオは、子供の消えた曲がり角に小走りで進む。

曲がった先は再びロッカーが無数に立ち並ぶ廊下。その先には倉庫の扉が見える。

「いない…?」

あの子供がどこにもいない。

コリオの背筋に寒気が走る。このご時世、幽霊やUMAなんてものはいてもいないと同じ扱いなわけだが、やはり特異能力の存在しない世界を少しだが生きていた世代にとっては恐怖というイメージが植えつけられてしまっている。


子供はコリオの視界には映らない。ロッカーの中にいる。

バンッ!――と、ロッカーの扉がいきなり吹っ飛んだ。

「いてっ!」

ロッカーの扉はコリオの体に当たったが、特に怪我もせずその場によろけただけ。

「ガヂッ……ゲバゴッ…」

子供は奇声を発しながらロッカーの中に体育座りの姿勢で憂鬱な目をコリオに向けていた。

まさにその様は幽霊そのものであり、呪われた人形といっても過言ではない出で立ちをしている。

どうやって扉を吹っ飛ばしたとか何をしているのとか気になるところだが、それよりもコリオは不思議と命の危機を感じていた。

「な、何…?」

コリオは冷や汗を流して後ずさりする。

子供は座りながら右手に何かを持っていた。

「オンナッ…オンナッ……」

カンッ――と金属同士がぶつかる音がする。

子供の右手に光る小さめの刃物。玩具のようにも見えるが、確かにそれは本物のノコギリだった。

「コリオッ……コロスッッ!!」

子供がロッカーの中から器用に飛び出すと、ノコギリをコリオに向かって振りかざした。

「ちょっ…『セヴンズ・スター』ッ!!」

怯えるコリオが叫ぶと、髪についていた7つの三角形の髪飾りが浮かび上がった。その髪飾りは一つ10センチほどに肥大化し、葉脈のような模様が浮き上がる。

平根の(やじり)になった7つの髪飾りは光沢を帯び金属になると、宙にとどまる。

「イギバッ…ドッ!!」

奇声と共にノコギリが目の前に来たところで、2つの鏃が盾のようになってノコギリを弾いた。

するとどういう原理でか、ノコギリが回転しながら子供の後方に頭上を通過し飛び上がった。

子供が投げたわけではなく、鏃に触れたノコギリが弾き飛ばされたのだ。

「カガヅッ!」

多分驚いたであろう子供は地面に着地する前に、コリオに蹴り上げられ、衝撃によってサッカーボールみたいに容易く打ち上げられる。

そして子供の背後にあったのはノコギリだった。何故か子供に向かって飛んできていた。

子供の後方に飛んだはずのノコギリがいつの間にか方向を変え、子供に向かって飛んで来る。

「ホズッ!」

子供の後頭部にノコギリが刺さった。

本当に人形だったのか、子供は全く音を立てずに床に落ちる。

「一体なんなんだよ…」

男勝りなことを言うと、コリオは足早に先程来た廊下を逆走した。


しかし曲がり角を曲がった先に待っていたのは地獄絵図。

「ナガドッ…ケケッ」「ドトロッ…ウゲケッ」「ガチッ…ガチッ」「ガバゴッ…ゾッ」「デデヴッ…チョボッ」

数え切れない程の同じ背格好の子供が、全てのロッカーから顔を覗かせていた。

綺麗に陳列されて律儀に顔を出す子供達は、やがて床にそれぞれの降り方で降りた。眠ったように落ちる者もいればバク転しながら降りる者もいる。

不可思議でホラーな光景を見ただけでコリオは気を失いかけた。


「コリオッ…コロスッッ!!」



平根の鏃は矢の先っぽのAみたいな形のやつのことです。

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