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完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
共感の子供
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七つの星に誓いのキスを その3




「アハハハハッ!ここまで追いつめられるとなんだか愉快だ。人間であって人間で無い私に、もっと興味を抱かせてくれ」



 ネヴァーマインド ルールその九

⑨イトスが意思によって複製の消滅が可能。外部からの攻撃によって複製が消滅する場合があるが、イトス自身もその理由は分からない。



「やってやるわよ……!かかって来いッ!」


自棄気味のコリオは涙を残して首無しのセオドアを睨む。

アレクの右前腕が先が無い今、コリオが前線に立たなければならない。アレクのためにも、皆のためにも、そして、両親のためにも。


「ムッ……!…君……そこの女の君。もしかしてだけど、姓がバトラーだったりしないかな?」


「は?……だからなんだっていうの」


「確か男の方はコールマンだったな。……そうかそうか………フフッ………ハハハハハハハハッ!!アハハハハハハーーッ!!!」


突拍子なくセオドアが籠もった声で笑い出す。

冷酷になったり笑い上戸になったりと奇妙な男だ。多重人格や愉快犯とでも言うのだろうか。


「……ジョーイ・バトラーとローズ・バトラー。そして……キャサリン・コールマン。ンッンッンーーッ!こりゃあ鳥肌もんだ。感動ストーリーだなァーッ!!」


「「!」」


急にコリオとアレクは血相を変えて、胸を突かれたような感情に陥る。

イトスならば名前を調べることぐらいは容易いだろう。しかしこのタイミングで、この言葉が出てくることは異常としか言いようがなかった。


「な……なんであんたがその名前を……?」


「まさか……な」


鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして、汗を滲ませる。


二人共、自らの親についてはよく知らなかった。14年前、特異能力で世界中が大混乱している時期に亡くなったと聞いている。その時期はまだ犯罪が多発しており、親の死因に違和感はなかった。その時コリオは2歳、アレクは4歳。

アレクは父がいたので特に苦は覚えなかった。母の事は写真を見せられたくらいでよく知らなかったし、知ろうとも思わなかった。

コリオに関しては顔さえも写真以外で見た覚えがなく、長い間祖父母に育てられため、実の親という感覚があまり無かった。しかし何故だか、その手の温もりや優しい声だけは覚えている。


「すごい……運命っていうのはこういうことを言うんだろうね」


「……あんたとチンタラ話してる時間は無い。粉微塵になる覚悟はいい?」


「やってみろッ!そのちっぽけな胸をもっとすり減らしてやるッ!」


その不安定な態度にしびれを切らし、コリオは躊躇せず引き金を引き、闇からニ発の弾丸が放った。

銃声が耳を痛めつけ、鉛弾は直線を描き、ニ叉に分かれて進んでいく。


だがしかし一発の弾丸はセオドアの肩をかすめただけで後ろへ飛んでいき、もう一発はかすりもせずに水面に向かって飛んでいった。


「この下手クソがッ!命運尽きたなァッ!!コリオ・バトラァァアッ!!!」


セオドアは余裕からコリオを弄び、二本指を鳩尾に打ち込み微笑んだ。

ただ二本指だが、それは弾丸のように速く槍のように鋭い一撃。風穴こそ開いてはいないが、鳩尾のため痛みは半端ではない。


「…ヴッ……!!」


「コリオォーーーッッ!!!」


コリオは嘔吐きながらも、前を向く。

だが身体は正直であり、体中が冷え、息が苦しくなる。それでもコリオは立ったままセオドアを睨みつけた。

諦めるという言葉はない、自分がやらなければ誰がやれる。アレクは十分に力を発揮できないからこそ、ここで命を捨てて勝たねばならない。


「テメェェェエーーーッ!!!!」


「結局のところカスだったようだな!さあ、痛みが嫌いなら大人しくしていろォッ!!」


アレクのひ弱な蹴りを肘で落とすと、それだけでアレクの脚の肉は抉れた。


「……ッ!!」


アレクは力が入らず蹌踉けてしまい、足を滑らせて落水した。


疲労と痛みからか声も上手く出せなくなってきた。

痛覚が麻痺していて欲しかったが、非情にも激痛と寒気が走った。体の芯は熱いのに、何故か全身の寒気が止まらない。水中にいるからではない、不思議な寒さ。脚と腕の傷口に水が入っても寒さが勝った。


「神に!大地に!仲間に!与えられた全てに感謝しなくっちゃあなァッ!!!アハハハハハーーッ!!」


セオドアは体を反らして空を拝み、不敵な笑い声を上げた。遥か彼方に飛び去った弾丸など見向きもせずに、勝ち誇った。


「………あんたの目が……とことん節穴なだけだったみたいね……!何故見えて何故話せるか、それはとても簡単な事ッ…!!跳ね返せ!『セヴンズ・スター』ァッ!!!」


「………?…………ハッ!まさかッ!」


首無しのセオドアは何も無いのにその場で体を左右に激しく揺らした。


「ッ!」


まず始めに、的を外れて水面に向かったはずの弾丸は『セヴンズ・スター』の(やじり)によって反射され、セオドア背後から迫って尻から股間にかけてを貫いた。


すると、セオドアのズボンの中から何かが飛び出し、水面を揺らして黒く小さな機械が落ちる。


「まずは一つ目に口と耳ッ!トランシーバー!わざわざ遠くからご苦労さまね!」


これでセオドアは喋ることが不可能になった。

セオドアは先程の警察が持っていた無線機を使い話していたのだ。籠もった声だったのも無線機であるという事と、衣服に入っていたためだった。


「そしてお次に目は、あんたの憎たらしい首だァアアアアア!!!」


セオドアの肩をかすめただけだった弾丸は、セオドアに元々当てるつもりなどなく、本来の的に当てるために通過させただけ。

弾は遠くにある崩落しかけている橋の上に置かれていた、セオドアの生首の頬に命中し、生首を倒した。


やがて首は斜めっている橋を転がり、落水する。

感覚で分かるなんてことをほざいていたが、それはただのハッタリ。おそらく三人目のイトスの複製が運んだのか、橋に置かれた生首でアレク達を見ていただけだった。


「はぁ…はぁっ……これでお終いよ……勝者は………正の覚悟だったのは……私達ッ!」


高らかなる宣言を上げると、セオドアは水中へと沈んでいった。

スカッとした、爽やかな気分だった。パズルのピースが全て揃ったときのような、一つがズレれば完成しない策を成功させたのだから。今まで特に目立った戦果を上げていないせいか、少し優越感さえあった。




倒したと思っていた。しかし突如、大地震かと思うぐらいの震動が辺り一帯に響いた。

 

「……なッ、何!?」


コリオはバランスを崩す。

まさか、奴がまだ、水中で藻掻いている!

視力も聴力も嗅覚も無いというのに、触覚だけでセオドアが暴れている。イトスにとって、セオドアの複製はそれだけ大切な物なのだろう。


震動は止まることを知らず、延々と響き続ける。周囲の瓦礫が動き始め、コリオの立っているボードも遂に沈み始めた。


「…まだ悪足掻きを……!アレクッ!?……ここを離れ………ア、アレク?………どこ…?」



けっこう長引きます。

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